02. 6月 2020 · June 2, 2020* Art Book for Stay Home / no.11 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 日記

『美術館で愛を語る』岩渕潤子(PHP新書、2004年)

なんてチャーミングな書名なのだ。公園で愛を語る、遊園地で愛を語る、劇場で愛を語る、図書館で愛を語る、と並べて美術館で愛を語る。
それがすんなりと感じられないから『美術館で愛を語る』が書名としてイキイキしてくる。

私たち美術館関係者は、『美術館で愛を語る』ことはなんと素晴らしいことかと考えている。
しかし、美術館で愛を語っている人は極めて少ない。いやもちろん聞き耳を立てている訳ではない。年齢を問わずカップルでの来場が少ないからである。高校生のカップルが来場されると「あ、きっと美術部の仲間だ、愛が育まれるといいなぁ」とつまらない想像をしてしまう。

多くの来場者は「絵は絶対美しいもの」との幻想に囚われ、その感動を強要されているかのようである。そこには絵の感動の感想を語り合う場所と設定されているかのようである。
絵はもっと多様であり、美しいというのも一つの評価でしかない。

少し広い空間であればソファが用意されている、ロビーにはベンチやカフェ、レストランもある(すみません、本館は残念ながら不十分です)、レストランにはビールや軽いアルコールも用意されている。
展覧会によっては、愛がテーマの作品もあり、抱擁やキスシーンもある。愛を語るには十分な装置であるはずである。大声を出すことはタブーであるが、愛をささやくことに何ら問題はない。

欧米の多くの美術館、研究所で研究し、世界の美術館を観て来た著者が、あらゆる角度から美術館のロマンを問い、答える。
美術館をどういうものだと考えるべきか、美術館でどのように作品を鑑賞すべきか、多くの美術館を具体的に取り上げながら、その楽しみ方を伝授してくれる。
それはつまり『美術館で愛を語る』ためなのだ。

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