『Terence Conran on design テレンス・コンラン デザインを語る』テレンス・コンラン(株式会社リビング・デザインセンター、1997年)
著者テレンス・コンランをご存知だろうか。イギリスの家具デザイナー、インテリアデザイナー、ライフスタイルショップ「ハビタ」「コンラン・ショップ」経営者、レストラン経営者、著述家、イギリス「サー」の称号を持つ。
第二次世界大戦後の日本は、経済復興を産業と貿易に課し、その成果を上げてきたことは誰もが認識するところである。敗戦国でありながら、他国に比べて圧倒的な成長を遂げることができたのは、産業に力を入れたことはもちろんであるが、合わせてデザインを重視してきたことを認識する人は少ない。公立高等学校から大学までデザイン科を設置、追従して私学にも多く設置された。またデザイン教育の根幹は、バウハウス(ドイツのデザイン運動、学校)からであった。いわゆるモダンデザイン思想である。私もその一人で「シンプルで機能的なものは、また美しいデザインである」を思想とした。
しかし1980年代に入って、モダンデザインのマンネリズムが問題視されると、ポストモダン(デザイン)が登場する。理想としたものがフッと消えた。ポストモダンに追従するものと自信をなくしたポストモダンが混在する状況であった。
その時、登場してきたのがテレンス・コンランであった。コンランはモダンデザインに欠けていたものを指摘し、新しいデザイン思想を提示、実現した。そのことを詳細に伝えるものが本著である。私を覆っていたデザインの黒雲が去っていったのである。
著書のくたびれ方は、私が1997年に発売と同時に購入して以来28年、何度も手に取り、読み、調べ、書き込みを繰り返し、テキストとしてきた証である。