『引き裂かれた絵の真相 夭折の天才村山槐多の謎』村松和明(講談社、2013年)
著名が語るように本著は村山槐多の謎を徹底解き明かそうとするものである。著者村松和明は、武蔵野美術大学を卒業後岡崎市美術館に学芸員として勤務(現在は岡崎市美術博物館学芸員)した。
約1年後に山本鼎の作品として『裸婦と男たち(日曜の遊び)』が持ち込まれた。本作はその後、村山槐多の作品とされ、画集『村山槐多全画集』(1983年朝日新聞社刊)にも掲載されている。また大回顧展「村山槐多の全て展」(1982年神奈川県立近代美術館)にも出展されている。しかしさらにその後、山本鼎の下絵が見つかり、山本鼎の作品とされた。著者は学芸員として「本作はやはり槐多の作ではないか」とその究明に乗り出す。そのあたりは推理小説を読むようなおもしろさである。
本著は『裸婦と男たち(日曜の遊び)』が主で、あくまで美術評論として書かれているものであるが、槐多の人生哲学に触れる著でもある。詩人であり、プラトン全集、トルストイ全集、ニーチェやソクラテス、更には『往生要集』を始め古事記、日本書紀を読破、英語にも堪能であったという秀才でもある。たった22歳で世を去ったとは思えぬ質、量とも重厚な学びと創作である。名付け親である森鴎外、従兄の山本鼎、その親友の小杉未醒(放庵)、横山大観、江戸川乱歩、戸張孤雁、芥川龍之介、有島武郎、与謝野寛、与謝野晶子、高村光太郎、室生犀星、デスマスクを取った石井鶴三等、誕生から死まで、華やかな美術、文学人に愛されてきた。それは槐多というよりもその才能、詩、絵画に注がれたものであろうと思われる。
この上なく恵まれた才であろうとも、貧乏と病にはどうしようもない虚しさを覚える。