『芸術をめぐる言葉』谷川渥(美術出版社、2000年)
本が出版されたとき、勢い込んで買って読んだが、20年以上立って、殆ど憶えていない。ブログを書くにあたり再読したが、なるほど50歳の自分がほとんど太刀打ちできなかったことがよく解る。70歳過ぎた今でもやはりなかなか難解だ。
芸術、特に美術を中心として書かれているが、文学や演劇、更には哲学や科学など多方面に渡っている。それでこそ芸術だろう。
「芸術をめぐる言葉」は言い換えれば「芸術とは何か」である。80人の言葉を取り上げているが、前中後編と内容がなんとなく分類されている。前編は「芸術とは何か」の芸術の概念そのものに関して見えない闇の中から探し出そうとしている言葉である。したがって極めて抽象的である。中編はそうした概念がほぼ共有できるものになって、表現の問題やモチーフの問題へと具体的になってくる。解りやすいとも言える。後編はその概念が崩され、発展していく。いわゆる現代美術の盛んな状況を受けて紹介されている。
なぜこのような展開となっているかといえば、その言葉が書かれた時代順に紹介されているからである。芸術とはかくも曖昧で、主観的なものであることが認識される。それだけ魅力的なものであり、人類の未来を導くものとして位置づけられている。
現在においても芸術の概念、定義は極めて難しい。変容し続けている中で、「芸術大学」や「芸術センター」と芸術を冠して名乗っていることすら、私にはどうなんだろうという疑問がついて回る。芸術大学は、もっともっと「芸術とは何か」を追求し、発信しなければならないだろう。