http://www.museum-kiyosu.jp/exhibition/imaotakuma/
展覧会が始まって10日が過ぎた、チラシを見ても何が行われているのか、どれが作品なのかよく解らない。清須市はるひ美術館の部分写真と図面が散りばめられている。第一、展覧会のタイトルが「清須市はるひ美術館 空調設備」である。「清須市はるひ美術館」は会場であり、「空調設備」はそれに付随するものである。
今回の展覧会の領域は現代美術、インスタレーションである。インスタレーションとは、一般に「空間芸術」と訳される。「平面の絵画」、「立体の彫刻」、「空間のインスタレーション」という分類。しかし、私は「インスタレーションは場の展示」と考えている。空間作品であればインスタレーションという位置づけは、ただ絵画でも彫刻でもない新しい分野という意味でしかない。現代美術はそのような曖昧なものではない。「場」の持つ意味、個性、物語、さらにその場を含む地域の歴史、風土、政治、経済とも関わりを持つものでなければならないと考える。
一方で美術館という空間は、主に絵画や彫刻を引き立てるために、空間のイメージを消している。一般にホワイトキューブと言われる空間である。そこでは極めて場のメッセージが抑えられている。
今尾拓真は主にこの「場のメッセージ」が抑えられた文化施設、学校、クラブなどでインスタレーションを展開してきた。私もインスタレーションによる作品発表を続けているが、私が最も発表を拒否する空間が美術館である。今尾はこの「場のメッセージ」が抑えられた空間から、こういう空間こその「場のメッセージ」を捉えた。それが「空調設備」である。どのようなホワイトキューブの美術館においても「空調設備」はある。来館者の快適性、作品の保全に欠くことができない。その美術館としてはマイナーな存在に目を付け一気にメジャー化するという逆転劇を演じている。今尾のインスタレーションは、空調設備を延長させる突起が空間彫刻として興味深いが、けっしてその突起部分だけが作品ではない。突起に取り付けられたリコーダーやハーモニカが奏でる音は、美術館施設が奏でるものであり、外部大気をも取り込むものである。
展覧会を見終えて、その感動感覚は絵画や彫刻から得られる視覚的なものではなく、空気の振動、流動、身体で聴く音、さらに脳への刺激等全身で捉えたものと思った。この展覧会は、できるだけ一人で観てほしい。複数で来場された場合でもそれぞれが個になって楽しんで欲しい。