11. 5月 2024 · May 11, 2024* 今尾拓真 work with #10(清須市はるひ美術館 空調設備)、圧倒的独創。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

http://www.museum-kiyosu.jp/exhibition/imaotakuma/

展覧会が始まって10日が過ぎた、チラシを見ても何が行われているのか、どれが作品なのかよく解らない。清須市はるひ美術館の部分写真と図面が散りばめられている。第一、展覧会のタイトルが「清須市はるひ美術館 空調設備」である。「清須市はるひ美術館」は会場であり、「空調設備」はそれに付随するものである。

今回の展覧会の領域は現代美術、インスタレーションである。インスタレーションとは、一般に「空間芸術」と訳される。「平面の絵画」、「立体の彫刻」、「空間のインスタレーション」という分類。しかし、私は「インスタレーションは場の展示」と考えている。空間作品であればインスタレーションという位置づけは、ただ絵画でも彫刻でもない新しい分野という意味でしかない。現代美術はそのような曖昧なものではない。「場」の持つ意味、個性、物語、さらにその場を含む地域の歴史、風土、政治、経済とも関わりを持つものでなければならないと考える。

一方で美術館という空間は、主に絵画や彫刻を引き立てるために、空間のイメージを消している。一般にホワイトキューブと言われる空間である。そこでは極めて場のメッセージが抑えられている。

今尾拓真は主にこの「場のメッセージ」が抑えられた文化施設、学校、クラブなどでインスタレーションを展開してきた。私もインスタレーションによる作品発表を続けているが、私が最も発表を拒否する空間が美術館である。今尾はこの「場のメッセージ」が抑えられた空間から、こういう空間こその「場のメッセージ」を捉えた。それが「空調設備」である。どのようなホワイトキューブの美術館においても「空調設備」はある。来館者の快適性、作品の保全に欠くことができない。その美術館としてはマイナーな存在に目を付け一気にメジャー化するという逆転劇を演じている。今尾のインスタレーションは、空調設備を延長させる突起が空間彫刻として興味深いが、けっしてその突起部分だけが作品ではない。突起に取り付けられたリコーダーやハーモニカが奏でる音は、美術館施設が奏でるものであり、外部大気をも取り込むものである。

展覧会を見終えて、その感動感覚は絵画や彫刻から得られる視覚的なものではなく、空気の振動、流動、身体で聴く音、さらに脳への刺激等全身で捉えたものと思った。この展覧会は、できるだけ一人で観てほしい。複数で来場された場合でもそれぞれが個になって楽しんで欲しい。

動画1

動画2

動画3

 

22. 9月 2020 · September 21, 2020* 物語としての建築ー若山滋と弟子たち展ー始まる。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

優れた文章表現ができる人は、優れた話ができる人でもある。先週の土曜日から始まった本展での初日のトークのことである。若山滋と妹島和世のトークセッションを予定していたが、都合により残念ながら延期となった。変更して若山滋ギャラリートークとなった。

若山「建築の展覧会といえば、設計図、建築モデルと完成後の写真である。まずはそれをやめよう、やめるところから始めよう。本展では設計図と完成写真をやめて、モノクロームのモデルと設計への想いを言葉にした。どれだけ詳細なものを持ち込んでもそこに実物はない。建築を観るということは、建築のあるところに出かけなくてはならない。」

今の「物語としての建築」の物語が強く語られる展覧会である。当館では初めての建築分野である。もっとも美術館での建築展は大変珍しく、国際的視野で捉えても極めて稀である。これまで開催された建築展は、実物のない中でどう見せるか、その挑戦であったと思う。ちょうど3年前の9月、国立新美術館で開催された「安藤忠雄展ー挑戦ー」は、実物のない中でどう見せるかの挑戦でもあった。広大な展示室に可能な限りのシミュレーションを展開し、臨場感を見せていた。また展示会場に隣接した屋外には代表作の一つ「光の教会」を原寸再現した。実物のない建築展に実物を持ち込むという度肝を抜くものであった。しかし、「光の教会」は大阪府茨木市にあって、会場にあるものはレプリカであって実物ではない。建築は実寸、実素材、実工法で造られても、建築が建つ風土、歴史を再現することはできない。

「物語としての建築」は、実物に迫る展示とは全く異なる、想い(物語)を見せる展覧会である。

また「安藤忠雄展ー挑戦ー」でも叶わなかった実物がある。夢広場はるひである。この公園、公園に建つ美術館、図書館、野外ステージは若山滋の設計した実物である。美術館展示室には物語が語られて、美術館を出るとその物語を体現する、そういう建築展である。

 

03. 7月 2020 · July 3, 2020* 原田治 展「かわいい」の発見、オープン前の舞台裏。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

展覧会は舞台ではない。しかし「原田治展」は舞台がイメージされる。

たくさんのかわいいキャラクターたちが舞台で笑顔を見せてくれる。

その準備は舞台装置を造ること。舞台裏を覗いてみよう。

原田治はイラストレーター、画家ではない。

広告、印刷物、グッズのために絵を描く。描かれた絵は、広告、印刷物、グッズになって完成される。

本展の美術館入口に設置された巨大ディスプレイ(写っているのは奥村学芸員)も原田の作品であるが、元の絵(原画)はとても小さい。

すべての原画は実際にどのような大きさで使用されるかイラストレーターは充分に想像、配慮して描くが、原寸で描くということはほとんどなく、大きな絵も小さな原画であることが多い。

また小さな絵も小さな原画ではない。つまり描きやすい大きさで描かれるのである。

展覧会場でそこのところもぜひ確認してほしい。

 

原田治作品を楽しむのは、暮らし、リビング、マイルーム、友だちと会うカフェや公園、ストリートだ。

小さな空間、手が届くような作品との距離感。ワクワクしてくる原田作品の舞台。

 

もうひとつの大きな楽しみは、グッズ。原田治といえばオサムグッズだ。

展覧会場に連続するようにオサムグッズショップが開店する。もちろんショッピングOK。「かわいい」は「楽しい」だよ。いよいよオープン。

  

 

09. 5月 2020 · May 8, 2020* 富永敏博展、オープン前レポート。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

2020年4月25日からオープンの予定であった「清須ゆかりの作家 富永敏博展 自分の世界、あなたの世界」は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため6月1日まで休館とさせていただいている。

誠に残念な限りで、学芸員、スタッフ共々、毎日もやもやした気分で過ごしている。勿論、展覧会の準備は完璧である。

本日富永さんに来館いただき、オープン前取材を行い、展覧会の一部をレポートすることとした。

会場に足を踏み入れると、すぐにハッピーな気分に包まれる。

一般に絵画や彫刻の展覧会では、心の準備をして作品と向き合うという間合いがある。

しかしインスタレーション(空間演出アート)による富永展では、会場全体が作品であり、向き合うというよりも包まれるという感覚に陥る。

そして美術展でよく体験する緊張感が、むしろここでは解きほぐされていく。

童話の世界に迷い込んだような物語性、絵本のページを開いたような友達気分、遊びなれた公園がとても良い天気で迎えてくれたような安心感。

そして、一点一点の作品が話しかけてくる。

近くにある作品が連作、あるいは対作品で、その先にある作品もまたつながっていて、会場全部がたった一点という群作、そんなふうにも見える。

近作はコラージュ(彼の場合、自ら描いたモチーフを再構成する技法)によるものが多くなってきており、「そのことにより自由になった」と富永さんは言う。

その感覚の延長線で絵を描くように、あるいは工作をするように会場構成を行っている。

富永さん自身がハッピーな気分で過ごした遊びの後に、来場者もまたハッピーな気分で包まれるだろう。

富永さんの活動は、個展、グループ展、プロジェクト、ワークショップと多岐に及んでいるが、個展が主でほかのこともやっているというものではなく、それぞれが重要な活動であり、一貫しているものである。

現代美術の表現は極めて多様であるが、全ての富永さんの活動がたった一点の作品として仕上がっていくのかも知れない。

来場者が、富永さんとつながってプロジェクトを拡げていく「新種の苗木」を、一本持ち帰り私のオフィスに植えた。ふふふ。

01. 11月 2018 · November 1, 2018* 深堀隆介展のインスタばえ。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

刈谷市美術館において、「深堀隆介展」が開催されている。

大変盛況で入場者4万人に達しそうだとのことである。

金魚をモチーフとした立体作品で有名である。

金魚のモチーフは日本画、工芸では珍しくないが、現代美術の中では異彩を放つ。

水を使うことのできない美術館で、いかにも泳いでいるかのような金魚は、多くの観る者の気を強く惹く。

達者な表現技術と樹脂を巧に使って、極めてオリジナル性の高いものになっている。

しんちう屋と題した金魚屋さんは、圧巻である。

 

しかし、深堀隆介作品がこれほどまでに注目を浴びているのは、いわゆるインスタばえによることが大きい。

実作品以上にSNS上での作品がリアリティを持って魅力的である。

そうした作品視点が作家の計画的なものであるとするなら、最も現代美術的であると言えるだろう。

 

26. 7月 2018 · July 26, 2018*  美術館前の花壇も作品のように。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会
「元永定正展」が始まって、2週間になろうとしている。
猛暑の夏、さすがに昼間のお客様は少ない。
そんな中、シルバー人材センター様のご協力で美術館の花壇に新しい花が植えられた。猛暑で弱っていた花壇がよみがえるように美しくなった。
花は、マリーゴールド、ペンタス、日々草。まるで元永定正作品のように楽しい。
「元永定正展」は、午前10時から午後7時まで。涼しくなってからお出かけください。
会期は9月30日まで、展覧会の看板とかわいい花を合わせての記念写真も楽しいです。