『造形集団 海洋堂の発想』宮脇修一(光文社新書、2002年)
海洋堂をご存知ですか。
株式会社海洋堂は、鉄道、ミリタリー、フィギュア、食玩等の各種模型を制作する会社である。
そしてフィギュアの造形企画制作では圧倒的に優れた技術力で評判を得ている。
フィギュアとは何か、図形や図案、製図すること、転じて図面から型起こしした立体物のこと、そこから派生した意味である人形や造形物。アート領域においては、サブカルチャーの一表現として位置づけられる。
2008年に競売会社サザビーズがニューヨークで行ったオークションにて、現代美術家の村上隆の制作したフィギュア《マイ・ロンサム・カウボーイ(My Lonesome Cow Boy)》が、1516万ドル(約16億円)で落札された。16億はゴッホやピカソと並ぶ価格である。芸術評価と売買価格は異なるものであるが、大きな指標ではある。
《マイ・ロンサム・カウボーイ》は高さ254cmの人形である。
では「人形と人物彫刻とはどう違うのか」、それは「マンガの一コマと絵画とはどう違うのか」に答えるように簡単なようで難しい。
平面、立体であるとか、石でできているのかプラスチックでできているのか、一点ものか量産品であるかといった造形手段でアートの価値を決めることがあるが、それは私たちの鑑賞を惑わせる。
アートの基本的対象は、人間によって制作されたあらゆる造形物である。どんなに美しい風景、美しい花も芸術では決してない。
言い換えれば、人間によって制作されたあらゆる造形物はすべてアートとしての魅力を有する可能性を持っている。
それが現代美術の基本的な考え方である。
さてここまではフィギュアのアートにおける位置づけについて述べたが、本書はそういうフィギュアの魅力を生み出した海洋堂の凄い技術、ビジョンについて紹介されている。模型、食玩の会社が子どもたちを夢中にし、やがて大人になってもその魅力に飽きさせることはない。
その要因はどこにあるのか、本書は40人の造形集団の正体を見せてくれる。