07. 8月 2021 · August 7, 2021* Art Book for Stay Home / no.72 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『場所のこころとことば デザイン資本の精神』河北秀也(株式会社文化科学高等研究院出版局、2021年)

No.70で河北秀也の『デザインの場所』を紹介したばかりだが、当館では現在「ミスマッチ ストーリィ 河北秀也のiichiko DESIGN」を開催中なので、先月7月20日に発行された本著を紹介する。

著書名『場所のこころとことば』に惹かれる。場所に心と言葉は普通に考えていない、そこを考えてみたということだろう。サブタイトルで「デザイン資本の精神」とあるので、メッセージの根拠はデザインにある。デザインにあるが直接的なデザイン論ではない、そこがデザイン資本たるところである。つまり現在、明日のデザインではなく、未来に向けてのデザインと考えてよいだろう。

そして本文に入ると「趣味の場所」「文明の場所」「職業の場所」などちょっと「の」で繋ぎにくいのが多くある。「場所」は単純に「について」「の思い出」あるいは「の本質」とか「の真実」とかに置き換えられる。つまり「場所」は読者にちょっとした疑問を投げかける機能として作用している。そのように考えて読みすすめると「バハ・カリフォルニアの場所」「煙草が吸える場所」というかなりストレートなものが入っていたりする。そこは軽く受け止めていると「場所のネーミング」というのが出てくる、なぜ「ネーミングの場所」じゃないのか。読んでみると、商品がネーミングされる(重要なデザインワーク)ように場所(地名)もネーミングされる、地価はイメージによって変わるので、どんどんネーミングされていくという興味深い話だが、内容は「場所のネーミング」そのものだった。「場所」の深読みを外されることもある。

場所にいろいろ翻弄されて、デザインのためのデザイン論ではなく、私たちの暮らしが「幸せに」「楽しく」「豊かに」「心地よく」なるための考えが素晴らしいデザインを生み出していくことをiichikoを呑みながら読み、学んだ。