09. 9月 2020 · September 9, 2020* Art Book for Stay Home / no.34 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『エコハビタ 環境創造都市』吉村元男(学芸出版社、1993年)

アートブックは、美術、芸術に関する本。美術史、美術評論、美術解説が主分野になるだろうという予測を立てて、その上で極力そこに縛られず広がりをもとうと考えてきた。美術史、美術評論、美術解説を研究執筆している方は、主に文学部出身である。もちろん芸術学部出身も多く、デザイン分野では工学部、農学部出身も多い。興味深いアートブックの紹介のためには、あらゆる分野にリンクしていきたい。本著者吉村元男も京都大学農学部出身である。

エコハビタ(ECOHABITAT)とはecology+habitat、人類居住のために一時的または永久的に建設された建造物を含む集落、ハビタットとは集落の意。本著では、環境問題が深刻化する中で、新たな環境創造に取り組む試みを紹介。エコロジー、テクノロジー、コスモロジーの3つの視点からの環境創造力、自然本来のダイナミズム・科学技術・感性の力をバランス良く駆使して未来の環境創造に向ける論理と実例を提示している。

自然・人間系の歴史を大きく3つに大別、第一は「自然従属型社会(狩猟社会)」、第二は「自然順応型社会(農業社会)」、第三は「自然征服型社会(工業社会)」としている。私たちは第三の「自然征服型社会」に生きているわけであるが、果たして征服ということが成立しているのであろうか。度重なる自然災害、気候変動、地球温暖化等、自然征服とは程遠い自然の猛威に屈服していると言える。そうした状況にあって、著者は第四の「自然創造型社会」を提案する。それは自然の征服によって失われた自然の再建である。

アートにおいては、膨大な作品のなかに、「自然征服型社会、地球環境悪化への警鐘」を観ることができる。しかし、デザインは現実である。提案が素晴らしい未来を引き寄せるか、虚しい未来を見せるか、近未来においてその結果が問われることになる。いや問われつつある。

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