22. 9月 2020 · September 21, 2020* 物語としての建築ー若山滋と弟子たち展ー始まる。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

優れた文章表現ができる人は、優れた話ができる人でもある。先週の土曜日から始まった本展での初日のトークのことである。若山滋と妹島和世のトークセッションを予定していたが、都合により残念ながら延期となった。変更して若山滋ギャラリートークとなった。

若山「建築の展覧会といえば、設計図、建築モデルと完成後の写真である。まずはそれをやめよう、やめるところから始めよう。本展では設計図と完成写真をやめて、モノクロームのモデルと設計への想いを言葉にした。どれだけ詳細なものを持ち込んでもそこに実物はない。建築を観るということは、建築のあるところに出かけなくてはならない。」

今の「物語としての建築」の物語が強く語られる展覧会である。当館では初めての建築分野である。もっとも美術館での建築展は大変珍しく、国際的視野で捉えても極めて稀である。これまで開催された建築展は、実物のない中でどう見せるか、その挑戦であったと思う。ちょうど3年前の9月、国立新美術館で開催された「安藤忠雄展ー挑戦ー」は、実物のない中でどう見せるかの挑戦でもあった。広大な展示室に可能な限りのシミュレーションを展開し、臨場感を見せていた。また展示会場に隣接した屋外には代表作の一つ「光の教会」を原寸再現した。実物のない建築展に実物を持ち込むという度肝を抜くものであった。しかし、「光の教会」は大阪府茨木市にあって、会場にあるものはレプリカであって実物ではない。建築は実寸、実素材、実工法で造られても、建築が建つ風土、歴史を再現することはできない。

「物語としての建築」は、実物に迫る展示とは全く異なる、想い(物語)を見せる展覧会である。

また「安藤忠雄展ー挑戦ー」でも叶わなかった実物がある。夢広場はるひである。この公園、公園に建つ美術館、図書館、野外ステージは若山滋の設計した実物である。美術館展示室には物語が語られて、美術館を出るとその物語を体現する、そういう建築展である。