22. 3月 2020 · March 21, 2020* 立ち止まり、鑑賞してしまう「いいちこポスター」。 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記


戦後、日本のポスターは宣伝美術(商業美術とも言われた)という言葉に括られて、美術の一分野としてスタートした。
制作者は戦前からの流れで図案家、また商業美術家とも呼ばれた。

1970年代に入ってデザインという言葉が一般的になり、デザイナーと呼ばれるようになると、商業美術家はグラフィックデザイナーと名乗るようになった。
その間、ポスターはいつも美的なものを目指し、美的であることによって宣伝(広告)効果を上げてきた。
しかし、大手企業がポスターによる効果から新聞、雑誌広告、更にはテレビCM、ラジオCMと複合媒体(メディア)によって効果を上げ始めると、美術という考えが次第に消えて行き、デザインから広告という方向へ向かっていった。
放送媒体は瞬時に受け手を通過するもので、鑑賞という時間が与えられないのである。
美しいことよりもひたすらインパクトが求められるようになった。
複合媒体の中で、テレビが大きな力を持ち、広告の主役となっていくに伴いポスターは脇役に追いやられていくことになった。

2000年代に入り、媒体はさらに複雑化し、インターネットを取り込んでいく。
ポスターは消えることはなかったが、相対的比重が低くなっていった。
かつての鑑賞に値する(美術の教科書には今も取り上げられている)ポスターは、激減していった。
そういう状況の中「いいちこポスター」は、1984年より「新しい焼酎のイメージを作り上げる美しい広告」をコンセプトに36年続けてきて、今も進行中である。
私たちは過去のものではなく、今を生きている美しいポスターを観ることができる。

ポスターデザインを支えている制作スタッフは、アートディレクターの河北秀也、コピーライターの野口武、デザイナーの土田康之、カメラマンの浅井慎平。
彼らの高い能力に負うところは勿論である。そして何よりもその美しいポスターをブレることなく駅に掲載し続けている「いいちこ」のメーカー、三和酒類株式会社のクライアントビジョンにある。