『女の子のための現代アート入門 MOTコレクションを中心に』長谷川祐子(淡交社、2010年)
バス待ちの30分、近くに大きな書店があると嬉しい。たいていは美術書コーナーへ、立ち読みも楽しいし、思いがけず購入書が見つかると充実の待ち時間となる。
そのような機会に、この強烈なオペラピンクの表紙は嫌が上でも目に入り、手にとってしまった。『女の子のための・・・』の書名に嫌悪が走る。大人の女性に対して「女の子」という呼び方は嫌いだ。「女の子」と呼ぶべきは小学生までだろう。本著は『・・・現代アート入門』である。作品写真は多く掲載されてはいるが、文章は美術専門用語が多く、外国語も多く使われている。決して低年齢層のために書かれたものではない。つまりここで使われている「女の子」は「若い女性」のことであるのだろう。近年は中高年の男女とも若い女性に「女の子」という呼称を使う。また若い女性たち自身も自ら「女の子」を使う。使う場所、使い方によってはセクシャルハラスメントと判断されるものである。自ら「女の子」を使うのはそこに幼い自分を認識し、幼い自分でありたいという甘えの構造があると思える。
本書『女の子のための現代アート」は、そうした女性たちに向けてつけられた書名であると思われる。しかし内容は「現代アート入門書」であって、決してそのような志向で書かれたものではない。穿った見方だが、「現代アート入門書」を書いた後で、この方向性が被せられたのではないかと思える。サブタイトル「MOTコレクションを中心に」は、著者長谷川祐子がMOT(東京都現代美術館)チーフキュレーター時代(現在は金沢21世紀美術館館長)に書かれたがゆえのものであって、MOTのミュージアムショップに並べられることを前提としたものだろう。