20. 8月 2020 · August 20, 2020* Art Book for Stay Home / no.31 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『蔵書票の魅力 本を愛する人のために』樋田直人(丸善ライブラリー、1992年)

蔵書票とは、蔵書印を使う習慣のない西欧で、自分の名前を入れた小版画を作り、本の見返しに貼って蔵書であることを証したもの。
日本では明治期に入ってきて、広がった。とりわけ浮世絵から発展した多色刷りの日本の蔵書票は、世界的に愛好されている。本が貴重なものであり、本を愛する意識が非常に高い中で生まれてきた文化であり、芸術である。

美術館が美術鑑賞の基本となってしまった現代において、巨大な美術作品が鑑賞可能な美術館スケールが、大きな美術作品を優位にしている。特に現代美術では作品が肥大化している。
巨大な美術作品が魅力的であることは否定されることではないが、魅力的な小さな作品も存在することは当然否定されることではない。

巨大美術作品は、発想の段階で、美術であることが強く認識され、存在が許された時点で美術作品であることのパスポートを得るかのようだ。果たしてそうだろうか、公園や、街角に設置された屋外彫刻、あるいはパブリックモニュメントが時間の経過とともに色褪せて、撤去困難なことが存在し続ける理由になってはいないだろうか。ホールの壁画もまたその疑問に反論できるだろうか。

一方で小さな蔵書票は、美術作品であることを全く背負ってはいない。しかし一点一点に美意識への思いは限りない。
星の数ほど作られた蔵書票の中で生き残る美、結果としての美術、それは浮世絵が歩んだ美でもある。