01. 8月 2020 · August 1, 2020* Art Book for Stay Home / no.26 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 日記

『岡本太郎に乾杯』岡本敏子(新潮文庫、2002年)

画家や彫刻家、あるいはデザイナーにおいても、生前の活躍が死後持続されるということはまずない。
よく言われる「作家が亡くなると作品の価格が上がる」という伝説のようなもの。
こういうことは殆どない、おそらく画商が作り上げたセールストークではないだろうか。

作家が亡くなると、新作がなくなり作品の絶対数に対して購入希望者増で、需要と供給の関係から価格が上がるという説である。
ところが作家が亡くなると個展が開催されなくなり、その作家のファンも同世代が多くやはり亡くなっていく。
作品を遺産として相続した遺族たちはファンではないことが多く、市場に売りに出される。
というように需要が減り、供給が増えるというのが現実である。価格は下がり続けるというのが一般的である。
美術の価値は簡単には変動しないが、美術品は流通価値であるので、変動することはやむを得ない。

さて岡本太郎は1996年に亡くなって、以降人気は爆発的に上がっているという他の作家とは異なる流れである。
亡くなってすぐ、人気美術評論家の山下裕二が『岡本太郎宣言』を平凡社より出版。岡本太郎の作品の魅力、評価を格上げした。ここで一気に次世代で岡本太郎ファンが増えた。

さらに本著の岡本敏子の存在。東京女子大文理学部卒業後、出版社を経て、岡本太郎の秘書となる。事実上の妻といわれているが、岡本太郎の養女となる。
1996年に岡本太郎が急逝した際、未完の作品が数点のこっていたが、これらの全作品のその後の製作・仕上げにすべて監修として携わった。また青山のアトリエ兼自宅を美術館として改装・公開を行った。

岡本太郎没後翌年の1997年に本著の単行本『岡本太郎に乾杯』を新潮社より出版、一気に岡本太郎ブームを巻き起こす。
その後亡くなるまでの10年間、岡本太郎に関する著書、監修を27冊出版、多くの講演に奔走した。
その様子は岡本太郎を尊敬、愛する人ではなく、岡本太郎が甦ったように顔さえ似てくるという状況であった。敏子さんは岡本太郎がやり残したことを全て終えて最後の10年を生きた。見事と言うほかない。
かくして岡本太郎の評価は不動のものになり、現在に至っている。
敏子さんの最初の一冊『岡本太郎に乾杯』は岡本太郎の魅力の缶詰のような本である。

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