「創造の原点から色斑空間へ」とサブタイトルにあるように碧南市藤井達吉現代美術館で開催中の「山本富章展」は空間作品でもある。空間作品とは、絵画や彫刻がモノ的に完成しているのではなく、空間に広がって、空間をも含めて作品として成立しているものをいう。いわゆるインスタレーションともいう。
普段、美術館ロビーに飾られている藤井達吉像をまるで祠のように囲い込み一体化させた作品は、ユーモアをもって鑑賞することのできる楽しい空間作品。
会場に展示されている近年の作品は、額縁は無く、作品と作品が呼応しあい、互いに関連させて観る者を捉える。荘厳でポップな祝祭空間に迷い込んだ鑑賞者は、呪術をかけられたように意志を失ってしまうかも知れない。
美術館から徒歩5分の大きな飼料倉庫蔵が第二会場として展示されている。個人の所有物をお借りしているという。美術館が主催、管理する展覧会において、美術館から離れることは多くの理解と手続き必要とされる。その可能性を大きく拡げた「山本富章展」に多くの観覧者が訪れることを期待する。