『アイデアの作り方 改訂版』ジェームスW・ヤング、今井茂雄訳(プレスアルト会、1961)
B6判56ページ、1ページ400字足らず、全ページ活版印刷である。流し読めば1時間かからず読んでしまう。価格は180円、おそらく古書店で見つけたものであろう。私が若きデザイナーの頃、デザインのアイデアに日々苦労をしていたとき、そんな方法があるものかと思いつつ読んだことを記憶している。開いてみると、かなり書き込みを行っている。丁寧に読んだことの証がある。
この度ブログを書くにあたり、あらためて読んでみるとその内容の確かさに驚く。そしてその殆どが自分の身になっている。例えば「アイデアとは在来の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」「在来の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は事物の関連性を見つけ出す才能に依存することが大きい」つまりアイデアは突然どこからか降って湧いてくるものではなく、アイデアを生み出すための多くの要素を身に着けていくこと、その要素を知り尽くす事ができればそれぞれの組み合わせによって、的確なアイデアができあがる。
経験を積めばなるほどと言うものであるが、浅い知識の中からアイデアは生まれてくるものではないことを言い切っている。現代で言えば、どのように優れたコンピュータであっても、インプットされたものが少なければアウトプットは生まれない。またコンピュータによって膨大な情報を引き出すことができるが、それぞれの情報を読み解く力が必要であり、情報を読み解くことで、情報と情報の組み合わせから新しい情報を生み出すことができる。情報そのものはアイデアではない。パーソナルコンピュータのない60年前に書かれたものであるが、全てのクリエイターがパーソナルコンピュータを手にしている現代にあって、なお褪せない「アイデアの作り方」である。
この本は広告クリエイターのために書かれたものであるが、他分野の創造に関わる人たち、詩人、画家、エンジニア、科学者たちから多くの感謝の言葉が寄せられている。