『左右学への招待』西山賢一(風濤社、1995年)
「左右学への招待」という著名でいきなり引き込まれてしまった。「左右学」という学問は一般にはない、なくても始めれば良いのであって、学問とはそういうものだ。ある程度の人数が集まれば学会も作ることができる。学会の殆どは任意団体である。学問の目的は、社会的貢献、学問の発展等いろいろあるが、それは結果としてあれば良いという考え方もある。つまり興味深いことだから学問をはじめた、「左右学」とはそういうものだそうだ。そして私もその興味に惹かれて読んだ。このブログはArt Bookがテーマなので、その範疇に入れて紹介する。
左右学には、「右脳と左脳」について述べられている。「言語脳が左脳、感性が右脳と言われており、左利きの人は左側を司る右脳が発達している」という説から、左利きの人は芸術家に向いていると言われる。そういえば私の勤めていた芸術大学では左利きの教授が3割と多かった(一般には1割)。
絵画には、左利きの構図と右利きの構図があり、またタッチや描線から左利きと右利きが判る。著名なイラストレーターである宇野亜喜良さんは、左利きだが、左下を起点に緩やかな円弧を描くように線がある。右利きは右下が起点となるので、一目瞭然だ。左利きの人は芸術家向きという説は、かなりいいかげんなものだと考えている。芸術において個性は大きな魅力だ、左利きは少ないので、そのこと自体が個性になる。それだけのことと思う。スポーツにおいて左利きが優位と言われる。これは対戦相手が右利きの場合で、左利きは右利きと多く練習するのでその対応になれることができるが右利きは左利きと練習を多くすることができない。優位であっても才能とは異なるものである。野球において左バッターは、一塁ベースに近いので有利であるがこれはルールの問題。書では右利きが優位であるが、これは文字を制作するにあたり、右利きの人が多く、多い方に楽なように作られたという単純な理由である。
いずれにしても、左右学はおもしろい。