04. 4月 2013 · April 4, 2013* スケッチすることは、スケッチ画を作ることではない。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

 私が生物をテーマに創作をするようになって25年、やがて植物に絞られ、花になり、この3年は、椿に執着している。特に薮椿が好きだが、椿と聞けば心が落ち着かなくなるほど虜になっている。

 4月にもなると椿の季節もあと僅か、惜しむように毎日スケッチに追われている。この命を、この切ない美しさを描き留めたいと心がはやる。椿を作品のモチーフとしてからは、「我が庭の椿を差し上げます、どうぞ自由にお持ち下さい」という嬉しい声もいただく。

 スケッチは、人物や風景などを大まかに描写すること。写生、素描とも言う。スケッチした画をスケッチ画という。しかしスケッチは、本来スケッチ画のために描くのではない。造形表現のための基本的な作業で、造形訓練としても行われる。本来スケッチそのものが目的ではない。

 大画家の展覧会に行くと、スケッチが展示されていることがある。絵画を制作するために必要な作業であることが、一目瞭然である。描きたいものがあるからスケッチが行われるのである。スケッチにその執念のようなものが見て取れる。

 描きたい風景がある、スケッチするには時間がかかる。多くは写真を撮って済ませる。私にもその経験がある。しかし、写真はスケッチの代わりにはならない。スケッチで最も大切なことは、興味の惹かれた対象物をしっかりと眺めることにある。写真のシャッタースピードは、1秒にも満たない。

 私が椿を描く時は30分から1時間、つまりその時間中、椿を眺めつづけるのである。色、形、匂い、命の姿を記憶に刻み込んで行く時間なのだ。だから作品制作のときに、そのことが鮮やかに甦ってくるのである。それが創作の源となる力である。

27. 1月 2013 · January 27, 2013* ブライアン・ウィリアムズの曲面絵画。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

 ブライアン氏が「なぜこのような絵を描くことになったのか」は、このホームページ上やチラシ裏面に説明されている。そのことは、多くの美術ファンにとって大変興味深いことである。

 一方で、改めて近代における四角い絵画(歴史的には宮廷絵画として円、楕円というものもある)について考えてみたい。ブライアン氏の言葉を借りれば、四角い絵画というものは不自然である。眼の動きに適っていないということである。それは説得のある説明である。

 しかし、その不自由な四角い画面であるが故に、多くの画家たちはイメージする絵(特に風景画)をどのように四角の画面に収めるかを工夫してきた。いわゆるどのような構図にするかということ。主テーマをどのように見せるか、何を省くか、その中で構図が生まれてきた。

 絵画を観る一つの楽しみ方として、この構図がある。ブライアン・ウィリアムズの曲面絵画を楽しんだ後、改めて四角い絵画を楽しみたい。

 曲面は、理に適っていると言う意味でも、屏風絵や扇子絵などやはり平面ではない絵画を曲面絵画と比べてみることもおもしろいと思う。

16. 9月 2012 · September 16, 2012* 美術館での作品を撮影したいという来館者の欲求。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

 近年ブログ、ツイッター、フェイスブックなどのソーシャルメディア(SM)の人気にともなって、美術館での作品を撮影したいという来館者の欲求が高まっている。異常とも思えるほどであるが、私もブログ、ツイッター、フェイスブックを楽しむ身としてそのことはとてもよく解る。

 基本、日本の美術館での作品撮影は禁止である。「日本の」と書いたのは、欧米の美術館では殆どが撮影が許可されている。ルーブル美術館、オルセー美術館、大英博物館、メトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館など、大美術館もみな撮影を認めている。ただし、フラッシュは絶対禁止である。理由は、強い光が作品を痛める可能性が高いこと、他の鑑賞者の大きな妨げになることが理由である。もっともである。

 美術館の先進国である欧米で認められていることが、何故日本では一般に認められないのか。「著作権を侵害する」というのが大きな理由であるが、著作権に関しては欧米の場合も同様である。撮影をしてソーシャルメディアも含めて個人的に楽しむのは著作権の侵害にはあたらない。撮影した作品を、ビジネス目的で利用したり、年賀状等の印刷物に使用したり、あるいは作品を写真上で変更を加えたりした場合に著作権の侵害にあたる。日本では、それに関するルールがきちんと認識されていないというのが大きな問題で、撮影した写真を自分のものと考えてしまうことによる。

 また撮影を許可すると、すべての気に入った作品を撮影し、作品集やポストカードが売れないといった理由もある。展覧会で観た作品を写真で再度楽しむというのであれば、プロの写真家が撮影した作品集を求めるのが本来であるが、多くの日本人の場合、単に記念写真感覚であるので、こういう撮影不可が一般的になってしまう。

 とは言うものの、ソーシャルメディア大流行の現代において、撮影不可は広報効果の点で大きなマイナスである。美術館においては、そのあたりの加減を考えなければならない時代である。

 現在開催中の「渡辺おさむ お菓子の美術館」では、ロビー作品のみ撮影を許可している。互いの鑑賞者へ配慮し、ソーシャルメディアへは、どんどんアピールして行きたいと願っている。おかげで、「渡辺おさむ お菓子の美術館」の来館者は増加の一途をたどっている。

02. 8月 2012 · August 2, 2012* 観るアートから買って観るアートへ、アートフェア。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

 アートを楽しむために、最も手軽で充実しているのが美術館に出かけること、それは多くの人の知るところである。少し積極的な人は、街の画廊に出かけて行って、もう少し身近に楽しむという方法もある。

 今、東京、大阪、京都、そして名古屋で、多くの画廊が一堂に会し、お薦め作家を紹介するアートフェアが人気である。名古屋でもART NAGOYA 2012が昨年に続いて開催される。会場はウエスティンナゴヤキャッスル9Fエグゼクティブフロア、8月4日、5日の2日間に渡って開催される。入場料は1000円。今年は地元のほか東京、大阪、金沢、パリから27画廊が参加している。ホテルの一室が各画廊となり、来客者が訪れるというシステムである。

 美術館と大きく異なるのは、作品が購入できるという点にある。従って殆どの作品に価格が付いている。美術作品を経済価値で観ることは、目を曇らせることもあるし、美術を観る眼を養うこともできる。大切なことは美術館展示作品のように価値が定まったものではなく、自らの眼で観るということである。

 美術館においても、美術館で展示されている作品だから芸術性が高いという先入観ではなく、主観を大切にしなければ美術はおもしろくない。アートフェアは、美術作品を購入し、大好きな作品とともに暮らし、人生を豊かにするという魅力がある。そこには真剣な視点が求められる。

 美術作品と言うと、何十万円、何百万円するという概念があって、身近なものという認識が不足している。そういうものもあるが、何千円単位からあるので、こういう機会に出かけてみるのも楽しい。買いたい作品がなくても、買うかも知れないというドキドキ感は、美術への新しい感性を養ってくれるだろう。

若いアーティストを支援するという素晴らしい機会でもある。

16. 7月 2012 · July 16, 2012* 芝居見物の幕間には、緞帳名画を楽しもう。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

 先日、取り壊しが決定している御園座で、六月大歌舞伎「市川海老蔵 石川五右衛門」を観劇。さすがに気合いの入った海老蔵の演技、そして壮大なスペクタルの演出、満足度の高い歌舞伎であった。

 一幕と二幕の間に45分の幕間がある。お手洗い、お茶、お食事、おみやげを買いに売店に行ったりと、なかなか忙しい時間でもある。舞台は緞帳が降ろされ、二幕のために息をひそめている。

 緞帳の絵は、日本画家片岡球子の大富士である。ドーンと居座った富士に紅白梅、牡丹、紫陽花が咲き誇り、雲のように山帽子が咲いている。片岡球子の大スペクタルを客席に座って楽しむことができる。

 それぞれの劇場に緞帳名画がある、幕間にはゆったりと客席から楽しみたいものである。

12. 7月 2012 · July 12, 2012* ミュージアッムショップで、アートを共有する。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

 美術館を訪れたときの楽しみの一つにミュジアムショップがある。殆どの美術館に併設されているが、近年このショップが充実、人気である。

 置かれているものは、美術館の収蔵作家や現在展示中の作家に関わるグッズが主である。作品集、展覧会図録は当然であるが、ポストカードは高い人気を誇っている。気に入った作品のポストカードは、そのままピンナップや簡単な額装にして楽しむ。また旅の便りとして、友人へ送るのも嬉しい。

 美術館に置かれているグッズは、その美術館しか簡単に手に入らないものも多く、人気の秘密はそんなところにもあるようだ。

 現在、清須市はるひ美術館では「渡辺おさむ お菓子の美術館」が開催されているが、ショップコーナーでは、特設して「渡辺おさむグッズ」を販売している。展覧会に感動した余韻でグッズを購入することは、美術の感動を記憶に留める方法でもある。

 コンテンポラリーアーティストには、グッズによって自らの思想を展開して行くという手段を取っており、グッズもまたアート作品として位置づけている。渡辺おさむさんもまたその考えである。

02. 7月 2012 · July 2, 2012* 愛知県博物館協会総会が開催され出席する。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

 先週の火曜日、名古屋市科学館で平成24年度愛知県博物館協会総会が開催され、出席した。

 愛知県博物館協会とは、1964年愛知地区博物館連絡協議会として、加盟館11館で発足。以来、各種講演会・研修会の開催や協会報の発行などをおこなってきている。現在、加盟館は119館を数え、展覧会情報誌「おでかけガイド」の発行などを通じて、情報発信を行っている。また、加盟館員による各種研究会の発足など、より各個の問題意識を深める場としての役割も生まれ、愛知県内の博物館施設に所属する学芸員の研究・交流活動を支える場として活動を続けている。

http://www.aichi-museum.jp/history/index.html

 午後3時、総会(会長挨拶、協会表彰、議事として平成23年度事業報告及び決算、平成24年度事業計画及び予算案、規約改正、その他)規約改正は18項目に及ぶものであったが、事業においての「災害発生時等における相互協力の支援」が印象に残る。

 午後4時30分、各館発表で私は清須市はるひ美術館と渡辺おさむ展をアピールする。

 午後6時、同館の理工館イベントホールで情報交換会。各館の事情がフリーに行き来する。みんな予算削減、スタッフ削減などの問題点を抱えながら一生懸命やっている。その熱い気持ちが心地良かった。

19. 6月 2012 · June 19, 2012* 映画「ミッドナイト・イン・パリ」で画家と出会う。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

 話題の映画「ミッドナイト・イン・パリ」を観る。ウッディ・アレン監督・脚本によるラブコメディ。ハリウッドで売れっ子の脚本家ギルは、婚約者イネズと彼女の両親とともにパリに遊びに来ていた。パリの魔力に魅了され、小説を書くためにパリへの引越しを決意するギルだったが、イネズは無関心。2人の心は離ればなれになる。

 そんな夜、ギルは1920年代のエコール・ド・パリの夜にタイムスリップする。そこでジャン・コクトー、アーネスト・ヘミングウェイ、パブロ・ピカソ、サルバドール・ダリ、ルイス・ブニュエル、マン・レイ等に出会う。更に19世紀末のパリにタイムスリップしてロートレックとも。という奇想天外な楽しいストーリー。

 興味深いのは、その作り込みのマニュアックな点である。ピカソ、ダリ、ロートレックが私たちのイメージの世界そのままで登場する。またオランジュリー美術館のモネの「睡蓮」におけるシーンとか、ポスターにあるように、ゴッホの描いたパリをギルが歩くというように。

 美術好きには、たまらない映画だ。こういう映画が美術のファンを増やしていくのだと思う。

15. 6月 2012 · June 15, 2012* 大人のためのアートスクール”清須アートラボ”。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

 清須アートラボは、清須市生涯学習講座のひとつとして実施されている。「美術館巡りは好きなんだけど、実はよくわからない。」という方に美術の見方や楽しみ方を、学芸員と楽しみながら学ぶ講座である。主に清須市はるひ美術館で開催されるが、時々ミュージアム鑑賞ツアーとして愛知県美術館、一宮市三岸節子記念美術館、ヤマザキマザック美術館など他美術館に出かけることも人気で、毎回20名ほどの参加がある。

 先日、豊田市美術館で開催され喜田早菜江学芸員とともに参加。豊田市美術館学芸員の鈴木俊晴さんの解説を聴きながら「ジェームズ・アンソールー写実と幻想の系譜ー」を観る。ベルギーを代表する画家アンソールは、グロテスクな仮面や骸骨を鮮やかな色彩で描くことで知られている。その系譜をアンソールに影響を与えたブリューゲルやフランドルの画家、また同時代の作品とともに紹介している。異常なほど顔に執着するアンソールの視点が、ラボメンバーに絵のおもしろさを発見させていたようだ。

 11時30分、鈴木学芸員の話しを終えて、レストランでランチ。アートラボメンバーと楽しい会話で過ごす。

10. 6月 2012 · June 10, 2012* 美術館のそばのクローバーの花。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

 清須市はるひ美術館は、はるひ夢の森公園と隣接しており、建物の周辺は緑に囲まれている。今、クローバーの花が咲いていて美術館を訪れた人を楽しませている。

 クローバーは、和名を白詰草(しろつめくさ)という。語源は江戸時代、オランダから献上されたガラス工芸品の箱に緩衝材として詰められたことによる。家畜の飼料用として干し草にされていたので、今のような緩衝材の無い頃、最適のものであったに違いない。

 花の赤い赤詰草というものもあって、それに対して白詰草の名がある。

 江戸時代、クローバーは多くの美しいガラス工芸品を見つめてきたのだろう。美術館のそばに咲いているにふさわしい花である。