『とらわれない言葉』アンディ・ウォーホル、夏目大訳(青志社、2010年)
アートは好きだけれど、アートの本を読むのは嫌い。すごく当たり前のことだと思う。音楽は好きだけれど、音楽の本を読むのは嫌い。やはり当たり前のことだと思う。アートが楽しいことと、アートの本を読んで楽しいことは、歓びが異なる。脳の中で歓んでいるところがアート作品とアートの本では異なるからだ。このブログをときどき読んでくださって、「アートの本を読まなくては」と感じておられる方は、ここまで読んで「そうだアートの本なんて読まなくっていいのだ、私はアートが好き」と決断された方は、それも正解と思う。
だが、一冊だけ本著『とらわれない言葉』だけ読んでからにして欲しい。なぜ本著なのか、この本を読んだ歓びは、アートを観て歓んでいる脳と同じところが歓んでいるからだ。
本の編集は、右ページがウォーホルの言葉、解説はない。なぜないか、解説などいらないウォーホルの言葉だからである。左ページはウォーホルの作品、言葉と関連するものもあれば、そうでないものもある。つまり絵本のような編集になっている。本文は235ページあるが、1時間で読み終えるかもしれない。手元において、退屈な時間に濃いコーヒーでも入れて、好きなページを開くというのがお勧めの読み方、いや見方である。私はバーボンオンザロックだけれど。
私の気に入ったウォーホルの言葉を紹介する。「『あなたの一番好きなものは何?』って訊かれたことがある。その時からだよ、お金を描くようになったのは。」「僕は正方形の絵が好きなんだ。縦長や横長だといちいち決めなくちゃいけない、正方形ならそんなことは何もいらない。」「僕は完全に、うわべだけの人間だよ。」
この本をよめば、ポップアートって何か、とても良くわかる。そしてウォーホルの価値は唯一つ、ウォーホル自身がポップだということだ。
※ご案内=清須市はるひ美術館 高北幸矢館長アートトーク/9月26日(土)午後4時から5時「ポップアートの騎手、アンディ・ウォーホルの偉大なアメリカ。」美術館隣接ステージ控室、要予約(先約20名まで)
http://www.museum-kiyosu.jp/educational_program/arttalk.html