24. 1月 2021 · January 23, 2021* Art Book for Stay Home / no.53 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『戦争写真家ロバート・キャパ』加藤哲郎(ちくま新書、2004年)

写真家は、何を撮るかということによって分類される。報道写真家、広告写真家、風景写真家、動物写真家、建築写真家、芸術写真家等、その分類を横断する者もおればこだわらない者もいる。戦争写真家というのは、報道写真家の一分野であるが、その活動が極めて困難を強いられることから強いビジョンを持って活動を続けている者が多い。

戦闘や紛争の行われている地域に入り込み、戦争状況、被害者などを取材する。

戦場カメラマンという言い方もされる。近年では写真だけではなく、ビデオも含まれる。取材中に命を落としたり、拉致されて高額な身代金を要求される者もいる。過酷で劣悪な環境に加え、空腹、飢えに耐えうるサバイバル能力を要求される。

極めて過酷な状況にも関わらず戦争写真家を希望する者は現在でも少なくはない。勿論そこには報道の使命を受け止める強い正義感に溢れている。その具体的なイメージとして戦争写真家ロバート・キャパの姿があると思われる。

ロバート・キャパは1936年、スペイン戦争のコルドバで撮った「崩れる兵士」が「ライフ」に掲載され世界的に注目された。第二次世界大戦では、ノルマンディー上陸作戦のドキュメントが今日でも高い評価を得ている。インドシナ戦争中の1954年、地雷を踏んで死亡。戦争写真家のあるべき姿、戦争写真とは何かの一つの典型を示した。

キャパは、戦争写真のみを撮り続けたわけではなく、戦争写真のみで評価を得たわけではない。戦場を離れて多くの日常を撮った写真も高い評価を得ている。しかしキャパにとっては過酷な戦場の対比、あるいは表裏の関係として日常もまた戦場写真の領域にあったと思われる。

かつて戦場であった日本が、写真による追体験から目を反らしてはならない。現在も報道される他国の戦争を、近未来の日本と無縁のものと誰もが確信することはできない。キャパをはじめ多くの戦場写真家が「なぜ戦場写真を撮るのか」の答えがそこにあると確信する。