『北欧デザインを知る ムーミンとモダニズム』渡部千春(生活人新書、2006年)
日本、アメリカ、ヨーロッパという括り方がある。こんな乱暴な括り方があるものかと思う。もちろん日本的な考え方である。
日本とアメリカという一国同士の捉え方にしても、人口、人種、民族種、国土面積等違いすぎる。ましてヨーロッパと言っても47国。歴史、気候風土、民族性、文化を構成する要因が相当に異なっている。
そこで渡部千春は北欧デザインを取り上げた。
北欧デザインというのは渡部の視点ではなく、世界的な視点である。
そこに親しみとイメージを持たせるために、ムーミン(フィンランド)を書名に加えた。
北欧とはどこの国々か、広く北ヨーロッパを指す場合もあるが、北欧デザインといえば、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドである。気候風土、歴史、文化を共有するところが多く、政治的にもつながっている。それぞれ優れたデザイナーによるデザインがある。
固有のデザインが生まれる根拠は暮らしにあって、北欧の暮らしは気候風土が大きく影響している。
夜の長い秋から冬、そして春。雪で埋もれた寒気の生活、室内で過ごす圧倒的に長い時間、そして優しい光の短い夏、白夜。
そこから生まれるやさしい形態、繊細な色彩のデザイン。それは気候風土が対象的で強い太陽が作り出すイタリアデザインと比べてみたら明解だろう。
最後に北欧のデザインブランド(デザイナー名と同一の場合も含む)を挙げる。その先は本を開いていただきたい。
マリメッコ、アルネ・ヤコブセン(アントチェア)、フリッツ・ハンセン、ノキア、イケア、アラビア、イッタラ、ロイヤル・コペンハーゲン、イルムス、カイ・フランク、レゴ、ジョージ・ジェンセンなど。