『現代アート事典』美術手帖編(美術出版社、2009年)
この本は読んでも良いし、調べて事典として使うもよし、とある。だが読むにはしんどい本である。やはり現代美術独特の難しい言い回しが多く、21人の執筆者の充分な相互コミュニケーションがなされているとは思えない。それぞれが得意なところを執筆し第三者が編集したのだろう。一般に事典というのはそういうものである。
私は、2021年度に愛知県立瀬戸工科高校専攻科で「現代美術」の講義を担当することになり、自分と学生のためにテキストを作成した。テキストは29回をテーマ別に分け、図版と文章で構成した。その資料として5冊の著書とインターネットを使用した。5冊の著書の中で最も多く利用したのが本著である。さすが美術出版社である。第一に網羅されている領域が広く、大項目とその概要、さらに小項目とその説明、小項目には関係する出来事や作家を取り上げている。
現代美術においては概要そのものが難しい。先ず現代美術はいつから始まったのか、現代美術とはそもそもどう定義するのか、互いに関係しあい、重なっている項目をどう整理するのか。その点において本著は比較的よく整理されていると言える。
現代美術という言い方でさえ、モダンアート、コンテンポラリーアートという呼び方があり、前衛芸術という捉え方も重なってくる。
私は一つのテーマについてテキストを作る場合、例えば抽象美術では、抽象表現主義、アクションペインティング、ミニマル・アート、オプティカルアート等を調べ、その始まりはいつどのようなものであったのか、またどのように終息し変容していったのかという整理を行う。内容がボリュームオーバーになる場合には2回に分けてテキストを作った。また全てのテキスト別にパワーポイントを作成、サンプル作品を多く紹介した。その場合でも本著は、作家名、作品名を具体的に多く紹介しており、他著やインターネットを併用しやすかった。デスクの側にぜひ置きたい一冊である。