絵を描き始めた頃の遊亀、モダンに生きた遊亀、花を描いている時の遊亀、女を描いている時の遊亀、子供が大好きだった遊亀、師(安田靱彦)を生涯敬い続けた遊亀、コマ(愛犬)を愛した遊亀、105歳の遊亀。
どんなに素敵な女性だったのだろう。作品の一点一点がその時々の人生の「生きている」を感じさせてくれる展覧会です。そして「小倉遊亀に会いたい」と思う展覧会です。
館長 高北幸矢のブログ
絵を描き始めた頃の遊亀、モダンに生きた遊亀、花を描いている時の遊亀、女を描いている時の遊亀、子供が大好きだった遊亀、師(安田靱彦)を生涯敬い続けた遊亀、コマ(愛犬)を愛した遊亀、105歳の遊亀。
どんなに素敵な女性だったのだろう。作品の一点一点がその時々の人生の「生きている」を感じさせてくれる展覧会です。そして「小倉遊亀に会いたい」と思う展覧会です。
「蜘蛛の糸/蜘蛛がつむぐ美の系譜—江戸から現代へ」が豊田市美術館で 12月25日まで開催中。
圧巻は塩田千春「夢のあと」。絡め取られた白いドレスを蝶になった自分のように想いを巡らしながら、一匹の蠅になったように真っ黒な蜘蛛の巣の中を彷徨う、どこかで息を潜めている大蜘蛛の眼を感じながら。大空間を埋め尽くす無数の糸は、私をそんな気分にさせる。インスタレーション作品は、どれだけの言葉と映像を尽くしても伝えることはできない。そこに遭遇して体感しなければ。現代美術は苦手と言う人も、ぜひこの塩田作品を体験してほしい。
ほかに手塚愛子、戸谷成雄、鴨居玲、月岡芳年、熊谷守一、ムットーニ・・壮絶な作品が並ぶ。
江戸美術、江戸工芸、近代美術、そして現代美術、妖しい蜘蛛というモチーフが創作意欲を刺激する。あらゆる領域を、蜘蛛の糸が繋いで行く。
「創造の原点から色斑空間へ」とサブタイトルにあるように碧南市藤井達吉現代美術館で開催中の「山本富章展」は空間作品でもある。空間作品とは、絵画や彫刻がモノ的に完成しているのではなく、空間に広がって、空間をも含めて作品として成立しているものをいう。いわゆるインスタレーションともいう。
普段、美術館ロビーに飾られている藤井達吉像をまるで祠のように囲い込み一体化させた作品は、ユーモアをもって鑑賞することのできる楽しい空間作品。
会場に展示されている近年の作品は、額縁は無く、作品と作品が呼応しあい、互いに関連させて観る者を捉える。荘厳でポップな祝祭空間に迷い込んだ鑑賞者は、呪術をかけられたように意志を失ってしまうかも知れない。
美術館から徒歩5分の大きな飼料倉庫蔵が第二会場として展示されている。個人の所有物をお借りしているという。美術館が主催、管理する展覧会において、美術館から離れることは多くの理解と手続き必要とされる。その可能性を大きく拡げた「山本富章展」に多くの観覧者が訪れることを期待する。
ベン・シャーンは、社会派アーティストとして知られ、正義の怒りをもって多くの社会問題に意義を唱える絵を描いてきた。それはセンセーショナルにジャーナリズムを刺激し、多くの人に知られることとなった。またタブローのみならず、雑誌やポスターなど印刷物による作品発表も知られ、イラストレーターとしての評価も高い。
しかし、ベン・シャーン作品を通じて見えてくるものは、ヒューマニズムであって、怒りはそのひとつの形である。恋人たち、子どもたち、老人、労働者に向ける目は、悲しみへの共感であり、愛である。
機会があれば、ぜひベン・シャーン作品に出合って欲しい、また作品集でも充分楽しむことができるのがベン・シャーンである。
8月20日より古川美術館で「加藤金一郎と丹羽和子—絵は人生—」同分館為三郎記念館で「磯田皓と12人の作家たち」が始まった。2展とも見応えのある素晴らしい展覧会となっている。
「加藤金一郎と丹羽和子—絵は人生—」加藤と丹羽は夫婦である。私は金一郎先生にも和子先生にもそれぞれ大変親しくさせていただいた。油絵を描かないので弟子としてではなく、友人の様にお付き合いしていただいた。そこで知ったことは、こういう画家夫婦というのがあるのかということである。同じ画業の道を夫婦で歩むことは、イバラの道ともなる。ライバルと暮らす訳である。優れた作品には嫉妬が、駄作には罵倒がある。それが真実のライバルである。夫婦としての愛がそれを包み込むほど作家という生きものは生易しいものではない。愛と憎が泥沼の様なエネルギーとなって魅力的な作品が生まれている。
「磯田皓と12人の作家たち」は、愛知県立芸術大学デザイン科の教授であった磯田皓とその教え、言葉に感化された卒業生たちである。しかし彼らは決して優等生ではない。いわゆる優秀なデザイナーとしての道を歩んでいる者は一人もいない。絵画、イラストレーション、陶、染織、針金アート、漆、舞台衣裳などとんでもない多領域である。これは何を示唆しているのだろうか。
為三郎記念館での展覧会を拝見すると、圧倒的な強い造形ビジョンに打ちのめされる。造形教育とは形や表現方法の指導ではない。師の言葉を受け止め、発酵させ、醸成し、輝きをもたらすものである。言葉の力と受け止める力の双方が創作の源となる。美しい為三郎記念館と響き合い、13人の創作が一つの世界を形成していることに感動する。
トリエンナーレとは、3年に1度開かれる国際美術展覧会のことで、2年に1度開催されるビエンナーレを合わせると世界で150を超える。
あいちトリエンナーレは美術、映像、音楽、パフォーマンス、オペラなど、現代行われている芸術活動をできる限り「複合的」に扱おうとする希有な国際芸術祭で、2010年から始まり、今年で3回目である。
この度のテーマは「虹のキャラバンサライ 創造する人間の旅」。愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋市内のまちなか、豊橋市内のまちなか、岡崎市内のまちなかを会場として開催される。会期は8月11日から10月23日まで。
8月10日の内覧会に参加、午後1時30分スタートで、名古屋市美術館、長者町界隈、中央広小路ビル、旧明治屋ビル、愛知県美術館を含む愛知芸術文化センターを観てきた。徒歩で2万歩コースのハードスケジュールである。
じっくり鑑賞するというよりも先ずは概要を把握するという形である。美術展といっても、トリエンナーレは現代美術を見せるものであり、いわゆる美術展とは異なる。現代美術は、絵画・彫刻の枠をはみ出して、空間演出であるインスタレーション、映像、音、パフォーマンスなど多岐にわたる。また「美しい」という捉え方も大きくはみ出しており、「どこが美しいのだろう」という混乱を起こすものも多い。
トリエンナーレを観る場合、自分の価値観でとらわれるのではなく、むしろその価値観が壊されることにおもしろさを感じることが望ましい。「よくわからないなぁ」と思うものが多いだろうが、「わからないものと出合った」という好奇心を掻き立てることができたら素敵だ。これからの美術と出合うのだ、「つまらないなぁ」当然あるだろう。
撮影可能なものから数点紹介しておこう。
愛知芸術文化センターB2F/森北伸
愛知県美術館10階/三田村光土里
愛知県美術館10階/マーク・サンダース
愛知芸術文化センター屋上/ヴァルサン・クールマ・コッレリ
愛知県美術館10階/高橋士郎
愛知芸術文化センター11階展望回廊/田島秀彦
名古屋市美術館2階/佐藤克久
名古屋市美術館地下2階/ライ・ヅ−シャン
旧明治屋ビル2階/端聡
旧明治屋ビル3階/寺田就子
長者町八木兵錦6号館2階/佐藤翠
長者町八木兵錦6号館3階/今村文
岡崎市世界子ども美術博物館で現在開催中の「渡辺おさむ展」に寄せて。http://www.city.okazaki.aichi.jp/300/305/p019779.html
4年前、私が清洲市はるひ美術館館長に赴任して最初の企画展が「渡辺おさむ/お菓子の美術館」であった。そのご縁で、この度の岡崎市世界子ども美術博物館での展覧会を監修している。
さて、アートトークも46回、多くのアーティスト、デザイナーを取り上げてきたが、現代美術の作家は珍しい。多くの美術館で個展を開催していながら36歳という若さは、評価を棚上げされているところがある。
印象派やエコールドパリなど20世紀の作家たちを取り上げて「素晴らしい」ということはやさしい。今、私たちと同じ時代を生きて、同じ歓び、同じ苦しみ、同じ問題を抱えて生きている作家である渡辺おさむについてトークした。
キーワードは、ポップアート。ポップとはポピュラーソングのポップ、私たちを囲んでいる俗なもの、そして好かれ氾濫しているもの。スイーツ、フェイクはそういうものである。それをモチーフとしてメッセージを送り続ける渡辺おさむにこれからも注目し続けたい。
東京都立美術館で開催された若冲展は、1ヶ月で44万人という熱狂的な入場者数を誇って終えた。待ち時間2時間〜5時間という美術展とはとても思えない盛況ぶりであった。
その若冲、謎だらけ、魅力だらけ。トークとしてもこれほどおもしろい人物と作品は滅多になく、特につい最近まで日本美術史に若冲が取り上げられていなかったことに特別関心を持って調べた。
そもそも日本美術史は誰に依って作られたのか。なぜ若冲を外したのか。というのは、江戸時代に発刊された「平安人物志」の画家では、円山応挙についで伊藤若冲が位置しており、池大雅、与謝蕪村が続く。つまり江戸時代に美術史が作られていたとしたら、欠かすことのできない絵師であったのである。
明治初頭に編纂された日本美術史から若冲が外れたのは、とてつもない何かの意志が働いたもので、怪しげな興味が尽きない。2000年に京都国立博物館で開催されたとき、オープン時は誰も知らなくて客もパラパラであった。たった16年で日本における最も人気の作家ということになった。
50枚の作品映像と、若冲の不思議を語った時間オーバーのアートトークであった。
5月26日午後1時より、福岡市のホテルニューオータニ博多において、第43回全国美術館会議総会が開催された。
全国美術館会議(全美)とは、「美術館は、美術作品やそれに関わる資料・情報を集め、保存し、研究し、公開しながら、未来の世代に伝えていくという使命をもっています。また、コレクションの展示や特別展、教育普及活動をはじめとする様々な営みを通じて、地域社会と連携し、市民と交流しながら文化創造の拠点となる役割も担っています。全国美術館会議は、このような美術館の使命の実現を支え、その活動を社会的にしっかり根付かせるため、総会、総会記念フォーラム、講演会、学芸員研修会、研究部会等を毎年開催し、その成果を会員館や広く美術関係者、また、一般の方々と共有しようと考えています。日本の美術館がともに考え、ともに行動することをめざして、1952 (昭和27)年に設立された当会議は、現在、375館(国立9館、公立232館、私立134館)の会員館と47社の賛助会員で組織されています(2016年3月31日現在)。」
総会は6つの議案後に報告事項。
1、学芸員研修会 2、企画委員会(保存研究部会、教育普及研究部会、情報・資料研究部会、小規模館研究部会、ホームページ部会、機関誌部会、美術館運営制度研究部会、地域美術研究部会) 3、東日本大震災復興対策委員会の活動 4、印刷物の編集発行 5、各種事業の協賛・後援等 6、東日本大震災への対応 7、文化遺産防災ネットワーク推進会議への参加
午後4時15分〜6時 特別セッション「美術館の原則と美術館関係者の行動基準について」
午後6時〜8時情報交流会。
年一度の全国の美術館館長、学芸員等が集まるとあって、多くの美術館ではできる限りスケジュールを裂いて参加している。今年も充実の総会であった。
翌27日午前10時より12時まで、福岡市立美術館において、清須市はるひ美術館が参加している小規模館研究部会が開催され参加した。午後からは福岡市立美術館で開催中の「静物画にひそ謎 物・語」展と常設展を観覧する。