29. 4月 2020 · April 28, 2020* イラストレーター和田誠、没後半年。多才な偉業に、”illustration”誌が80ページの大特集。 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

2019年10月、イラストレーターの和田誠さんが亡くなられた。

私も何度かお目にかかっており、周りの全ての人が「和田さん」と呼ぶように、ここでは和田さんと呼ばせていただく。

奥様のシャンソン歌手・料理愛好家の平野レミさんも和田さんと呼ぶ。

“illustration”誌特集よりその活躍を拾いながら、和田さんを紹介する。

 

和田さんより先輩のイラストレーターは、挿絵画家と呼ばれることが多く、仕事も週刊誌や新聞の挿絵が多かった。

イラストレーターとして和田さんは最初の人で、挿絵以外にデザインや広告の仕事をこなす最初の人であった。

ほぼ同時に横尾忠則、宇野亞喜良、粟津潔、伊坂芳太良、山口はるみらイラストレーターが登場している。

タイトルに「多才な偉業」と述べたが、その主なものを羅列する。

多摩美術大学図案(現デザイン)科の時代から、当時デザイナーの最高峰である難関、日宣伝美術会に入選、頭角を現す。

1959年、当時トップのデザイン事務所、ライトパブリシティに入社。たばこ「ハイライト」のパッケージデザイン採用、他にキャノン、東レの広告デザインを担当する。

1968年フリーランスとなり、「週刊文春」の表紙(亡くなるまで続けて2000号を超える。今も過去の表紙から和田さんのデザインが続いている。)、星新一、村上春樹、丸谷才一、三谷幸喜らの装丁を担当する。

ジャズやシャンソンのレコード・CDジャケットも多い。

映画監督としても「麻雀放浪記」「怪盗ルビィ」などのヒット作を生み出している。

エッセイ、絵本も多く、著書は200冊を超えている。

テレビでは、「ゴールデン洋画劇場」「今夜は最高!」「サワコの朝」のタイトル画は、強く記憶に残る。なお「サワコの朝」は現在も放映中。

多分野における活躍は、多くの受賞にも現れている。

デザインでは毎日デザイン賞、日本絵本賞、日本宣伝賞山名賞、講談社出版文化賞(ブックデザイン部門)、ほか多数。著作では講談社エッセイ賞、日本ノンフィクション賞、菊池寛賞。漫画では文藝春秋漫画賞、日本漫画家協会賞。映画では毎日映画コンクール大藤信郎賞受賞、報知映画賞新人賞、ブルーリボン賞、淀川長治賞。

こうした多才多分野で活躍した作家に、先人では魯山人が上げられるが、多分野ゆえの評価が散漫になることが多い。

文化芸術においては、それぞれの活躍が足し算されて評価されるものではない。

さりとて一分野のみを取り上げて評価することは、決して頷けるものではない。

和田さんも魯山人も、それぞれの分野が決して独立しているわけではなく、互いに関係づけられた魅力を持っている。

どの分野の賞も、その専門において高く評価されたものであり、決してイラストレーターを前提に置かれているわけではない。

私がもどかしく思うのは、こういう多分野で秀でた作品を残した人は「器用な人」と称されることがあり、それが評価の引き算になってはいないだろうかということである。

和田さんは決してそのようなレベルの方ではなく、圧倒的な能力を有した作家である。

和田さんの声が聞こえる。「やれるなら、やってごらん」。

19. 4月 2020 · April 17, 2020* 「あいちトリエンナーレ2019 情の時代 開催報告書」発行される。 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

2020年3月、あいちトリエンナーレ実行委員会より、「あいちトリエンナーレ2019 情の時代 開催報告書」が「あいちトリエンナーレ2019ダイジェスト」とともに発行された。

編集は、あいちトリエンナーレ実行委員会事務局。

内容を目次より紹介する。

Ⅰ主催者挨拶

Ⅱ芸術監督報告

Ⅲ開催概要

Ⅳ企画体制

Ⅴ開催概要 1現代美術 2舞台美術 3ラーニング 4連携事業 5その他 6「あいちトリエンナーレ2019」「表現の不自由展・その後」の展示中止・再開に係る主な経緯

【会期中のイベント・プログラム】

Ⅵ来場者の状況等 1来場者数 2チケットの販売状況 3アンケート調査結果 4有識者意見 5経済波及効果 6パブリシティ効果

Ⅶ実行委員会の状況等 1実行委員会の収支状況 2実行委員会委員等 3実行委員会委員事務局組織

資料 ・あいちトリエンナーレの開催敬意 ・あいちトリエンナーレ実行委員会規約等 ・あいちトリエンナーレの推移

主催者の発行するものであり、事務的な記録をきちんと残すという姿勢で編集されている。

「『表現の不自由展・その後』の展示中止・再開に係る主な経緯」が敢えて取り上げられていることが意義深い。

 

「Ⅵ来場者の状況等 4有識者意見」のヒアリング対象者に清須市はるひ美術館館長として私も関わっている。

私の主な意見は、特に「表現の不自由展・その後」に関係して、表現の自由とは何か、そもそもアートとは何か、トリエンナーレとは何か、から遡り、今回のスキャンダルも含めてこそアートであり、トリエンナーレである、ということ。

それは世界で開催されている多くのトリエンナーレ、ビエンナーレで証されて来たことである。

「あいちトリエンナーレ2019はアートにおける起爆剤となることができたか」

しかし、起爆剤は目的とされるものではなく、成果として含まれるものである。

 

14. 4月 2020 · April 10, 2020* 映画「プラド美術館〜驚異のコレクション〜」始まる。 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

4月10日より、映画「プラド美術館〜驚異のコレクション〜」が始まった。

スペインのプラド美術館は、世界三大美術館のひとつ。

世界三大美術館には、ルーヴル美術館(フランス・パリ)、メトロポリタン美術館(アメリカ・ニューヨーク)、エルミタージュ美術館(ロシア・サンクトペテルブルク)、プラド美術館(スペイン・マドリード)の4館が挙げられ、ルーヴルとメトロポリタンが確定で、あとはエルミタージュかプラドのどちらかが加えられる。

なぜ世界四大美術館にしないのか、そんなことはどうでもよく、とにかくプラド美術館は凄いということだけ認識しておこう。

 

プラド美術館は、歴代のスペイン王家のコレクションを展示する美術館で、スペイン王家の繁栄を見るものでもある。

コレクションの基礎はフェリペ2世とフェリペ4世が築き、1819年に「王立美術館」として開館した。

1868年、革命後には「プラド美術館」と改称され、現在は文化省所管の国立美術館となっている。

ベラスケス、ゴヤなどのスペイン絵画に加え、フランドルやイタリアなどの外国絵画も多く所蔵している。

プラド美術館には約7,600枚の油彩画、約1,000の彫刻、約4,800枚の版画、約8,200枚の素描、多くの美術史に関する書類が収められている。

 

映画は、徹底して「プラド美術館とは何か」を紹介する。

それは鑑賞者の立場は勿論のこと、美術館の内側、研究施設であることにも強く迫っている。

また鑑賞者を超えて広く社会に大きな役割を担っていることも丁寧に見せている。

代表的なベラスケス、ゴヤ、ボス、グレコらの作品も多く紹介されるが、映画を通じて絵画鑑賞をするという形にはなっていない。

1点あたり、かなりの短時間であるばかりでなく、部分であったり、斜めからであったりしている。

これは映画側の獲得した著作権のギリギリのところであろうことが予想される。

「諸君、この先はぜひ美術館に足を運んでいただこうではないか」といったところか。美術好きには納得せざるを得ない。

05. 4月 2020 · April 5, 2020* “illustration FILE 2020”誌発刊、イラストとは、イラストレーションとは、イラストレーターとは何か。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

“illustration FILE 2020”誌が発刊された。玄光社が発売している日本で活躍するイラストレーターを紹介したイラストレーション年鑑。1990年に第1号が発行され、日本で最も歴史のあるイラストレーター年鑑である。
2020年版の収録作家は上下巻あわせて830名に達し、現在日本で活躍中のイラストレーターをほぼもれなく網羅しており、イラストレーターを探すための必携の一冊となっている。掲載作家数が多いが、これまでにある程度の実績があり、その当該年に評価に値する仕事を残したイラストレーターのみを編集部がセレクトしているので「ファイルに載る」ことがイラストレーターとしてのステイタスとされ、若手イラストレーターの憧れとなっている。20代の若い作家から70代の大ベテランまで1人1ページという編集方針は、年鑑という視点、またファイルというデータ性を鑑みると大いに納得できるものである。

秋山孝のように個人美術館を持つイラストレーターや、安西水丸、原田治のような本館で個展を開催する美術館作家も、生前には”illustration FILE”に紹介されていたことを思うと、この年鑑の魅力がどれほどのものか理解されるであろう。

また、2011年からはweb版である“illustration FILE Web”を立ち上げ、印刷版・Web版を両輪として運用している。

 

 

ところで、一般的に使用されているイラストと言う言葉はイラストレーションの略語のように扱われているが、実は和製英語であり、英語としては通用しない。つまり日本においては、イラストとイラストレーションは異なる意味を持つようになっている。

日本におけるイラストは、日本画や洋画のような絵画に対して、カジュアルな絵を示している。Googleでイラストを画像検索かけてみるとその概要が解る。一方イラストレーションは基本的にカジュアルな絵という意味がない。イラストレーションとは図像によって物語、小説、詩などを描写もしくは装飾し、また科学・報道などの文字情報を補助する、理解を深めるための図形もしくは絵画的表現である。中でも医学、天文学、地学、化学などに重要な役割を担うイラストレーションのことをサイエンスイラストレーションと呼ぶようになっている。

イラストレーションを描くことを職業にしている人をイラストレーターと呼び、イラストを描く人のことではない。英語文法的に言えば、イラスト(illust)を描く人はイラスター(illuster)であり、イラストレーション(illustration)を描く人がイラストレーター(illustrator)である。

“illustration FILE 2020”誌はそういうプロフェッショナルな年鑑であり、イラストとも日本画や洋画とも異なるものである。

31. 3月 2020 · March 31, 2020* ドイツ政府「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ」 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

ニューズウイーク日本版によるとドイツ政府は、「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ」として大規模支援を打ち出した。

先に「アメリカは芸術を必要としている」として、米国芸術基金が約80億円の支援を決定したことに続いて、「芸術とは何か、芸術は人類にとってどういった存在なのか」の強いメッセージを受け止めた。
以下、ニューズウイーク日本版3月30日からの抜粋

25日、新型コロナウイルスによる経済への打撃を緩和するための総額7500億ユーロの財政パッケージがドイツ連邦議会で承認された。

<略>ドイツの救済パッケージでとくに注目を集めているのが、フリーランサーや芸術家、個人業者への支援だ。モニカ・グリュッタース文化相は「アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在」と断言。大幅なサポートを約束した。ドイツには約300万人の個人または自営の小規模起業家がおり、その半分近くが文化セクターで働いている。

昨今続くイベントのキャンセルは8万件以上にのぼり、引き起こされた損害は12.5億ユーロと推定されている。フリーランスやアーティストへの経済的支援を求める嘆願書への署名運動が今月から始まっていたが、このほど発表された財政パッケージには個人・自営業者向けの支援として最大500億ユーロが含まれている。<略>
予断を許さない異常な状況と先の見えない不安感のなかを生き抜くには、体の健康だけではなく、精神面での健康を保つことも大変重要だ。
「非常に多くの人が今や文化の重要性を理解している」とする。

グリュッタース文化相は「私たちの民主主義社会は、少し前までは想像も及ばなかったこの歴史的な状況の中で、独特で多様な文化的およびメディア媒体を必要としている。クリエイティブな人々のクリエイティブな勇気は危機を克服するのに役立つ。私たちは未来のために良いものを創造するあらゆる機会をつかむべきだ。そのため、次のことが言える。アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ。特に今は」と述べ、文化機関や文化施設を維持し、芸術や文化から生計を立てる人々の存在を確保することは、現在ドイツ政府の文化的政治的最優先事項であるとした。<略>https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/03/post-92928.php

日本における芸術の位置は、概して「豊かな暮らしのために必要欠くべからずのもの」とされている。

したがって、こういう今のような「非常時には不要のものである」といった意見も多く見受けられる。いわゆる贅沢なものとして考えられているわけである。

私は以前より「芸術とは心を豊かにするものではなく、心を豊かにすることもあるが、そうではなく、生きていく上で必要欠くべからずのものであり、生きる力である。」と述べてきた。

こういう社会状況にあって、今こそ芸術、こういうときに力を発揮できなくて何が芸術か、と考えている。
特に、「芸術は心の癒やし」であるといった脆弱な捉え方は、芸術を理解する上で大きく誤解を招くものである。

26. 3月 2020 · March 26, 2020* 重さ1.5トンの岩を魅せる。加藤真也の石彫への問い。 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

「加藤真也石彫展 ーThe Standing Stonesー」が名古屋市中区のギャラリー名芳洞で3月29日まで開催されている。

会場には44本の岩が床に立っている。

置かれているとも言ってよいが、タイトルにStandingが使われているので、やはり立っているのである。

立つためには立方体のような寸法比ではありえず、ひと目で直方体的寸法比をもつものでなくてはならない。

44本の中には、颯爽と立っているものからずんぐりと立っているものまであるが、全てが立っている。

ここに加藤真也の彫刻としての姿がギリギリ存在していると言えよう。

彫刻というものは、作者が手をかけたものという最低の約束がある(マルセルデュシャンの作品は、オブジェ、あるいはレディメイドと呼ぶ)。

加藤真也の手をかけたところは1.5トンの岩を44本に割ったこと。

ドリルで穴を空け、タガネで割った。

荒々しい割れ面は、作者の「割った」という創作的意思と「割れた」という岩の性質が同居している。

作者の思いと思わざる双方の形がある。

それをギャラリーに運び込み、配置した。

どのように配するかも創造の大きな要素であるが、今回の作品では二次的なものだろう。

「これ以上手をくださないことはできないギリギリの創作」について作者は対峙しているのであろうと思われる。

私は、認知できるが実感を持つことの出来ない1.5トンを観たくて個展会場を訪れたが、一本が約30キロの石柱44本の重量感を楽しむことができた。

創作というよりも重量感を捉えることができたのは、作者の「これ以上手をくださないことはできないギリギリの創作」による抽象性によるものであると考える。

22. 3月 2020 · March 21, 2020* 立ち止まり、鑑賞してしまう「いいちこポスター」。 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記


戦後、日本のポスターは宣伝美術(商業美術とも言われた)という言葉に括られて、美術の一分野としてスタートした。
制作者は戦前からの流れで図案家、また商業美術家とも呼ばれた。

1970年代に入ってデザインという言葉が一般的になり、デザイナーと呼ばれるようになると、商業美術家はグラフィックデザイナーと名乗るようになった。
その間、ポスターはいつも美的なものを目指し、美的であることによって宣伝(広告)効果を上げてきた。
しかし、大手企業がポスターによる効果から新聞、雑誌広告、更にはテレビCM、ラジオCMと複合媒体(メディア)によって効果を上げ始めると、美術という考えが次第に消えて行き、デザインから広告という方向へ向かっていった。
放送媒体は瞬時に受け手を通過するもので、鑑賞という時間が与えられないのである。
美しいことよりもひたすらインパクトが求められるようになった。
複合媒体の中で、テレビが大きな力を持ち、広告の主役となっていくに伴いポスターは脇役に追いやられていくことになった。

2000年代に入り、媒体はさらに複雑化し、インターネットを取り込んでいく。
ポスターは消えることはなかったが、相対的比重が低くなっていった。
かつての鑑賞に値する(美術の教科書には今も取り上げられている)ポスターは、激減していった。
そういう状況の中「いいちこポスター」は、1984年より「新しい焼酎のイメージを作り上げる美しい広告」をコンセプトに36年続けてきて、今も進行中である。
私たちは過去のものではなく、今を生きている美しいポスターを観ることができる。

ポスターデザインを支えている制作スタッフは、アートディレクターの河北秀也、コピーライターの野口武、デザイナーの土田康之、カメラマンの浅井慎平。
彼らの高い能力に負うところは勿論である。そして何よりもその美しいポスターをブレることなく駅に掲載し続けている「いいちこ」のメーカー、三和酒類株式会社のクライアントビジョンにある。

18. 3月 2020 · March 16 2020 * 平成の食文化って、何だろう。 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

昭和の食文化は、私にとっては給食とともに貧しさが記憶に残る。

ひもじいというよりも、美味しいものが少なかった。

食材の種類が少なく、調理方法も単純で煮たり焼いたりが殆ど。油で揚げるとか炒めると美味しくなるものも油が高級で多くは叶わなかった。

その上調味料もまた貧しかった。

一方でバブル経済による華やかさ、贅沢もまた知る身である。

毎日新聞の人気連載「いただきます」は、昭和の貧しさ、幸せ、温かさとどこかで繋がっている平成食物語。

レストラン◯◯ではなく、◯◯食堂が主役のやさしい話がいっぱいの一冊。

佐々木悟郎の絵は、挿絵ではなく画集のような編集。絵と文の本です。

(毎日新聞社会部著、佐々木悟郎絵、ブックマン刊)

 

10. 3月 2020 · March 10,2020 * 2020年度前期、清須市はるひ美術館 館長アートトークスケジュール決まる。 はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及プログラム

4 ジョルジュ・ルオー

5 柚木沙弥郎

6 猪熊弦一郎

7 原田治

8 ピエール・ボナール

9 アンディ・ウォーホル

 

「トークで取り上げるアーティストはどのように決定するのか」という質問をよく受ける。

先ず領域は出来る限り多様であること。

半年間のラインナップで洋画が多いとか、彫刻が多いとかならないように配慮。

これまで取り上げていないアーティストであること。

できれば、トークの時にそのアーティストの展覧会が開催されていること、言い換えればタイムリーであること。

これまで約100人の古今東西の画家、彫刻家、工芸家、デザイナー、絵本作家、イラストレーター、建築家、写真家、現代美術作家など取り上げて来たが、まだまだ一部。

著名なアーティストを取り上げているので、わたしなりに一定の見識を持っているが、いざトークとなるとまだまだ浅く、一ヶ月間がさらなる勉強に費やされる。

それが楽しい時間になるようなトークを目指している。

作家の経歴、作品理解は勿論だが、一番大切にしているのはそのキャラクターをつかめるかどうか。

その眼は評論家ではなくて作家の眼で追求している。

なお、3月中止になった川合玉堂を、このスケジュールに挟み込んでいく予定。

06. 3月 2020 · March6, 2020* 館長アートトーク「川合玉堂」、超遠近のうちに聴く音。 はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及プログラム
第90回館長アートトーク「四条派と狩野派を融和、日本の風景を記憶に留める川合玉堂の日本画。」を3月21日に開催予定していたが、新型コロナウィルスの影響で開催は中止となった。
必ず後日、日を改めて開催する。
川合玉堂の魅力は多様。
一つは遠景近景のスケールにあると思う。
この《月下擣衣(げっかとうい)》(1913年作)では、荒々しい岩肌の近景が特徴的。
絵を観る者はこの岩の手前に立っている。
遠くに民家と樹々、いやその向こうに何やらする二人がいる。
二人は作品名でわかるように擣衣を行っている(擣衣とは、木綿の布をしなやかにし、艶を出すために砧にのせて槌でうつこと)。
擣衣の手元を明るくしているのは月。二人の遥か上に静かにある。
この絵における超遠景として月があり、空、宇宙の存在がある。
果てしない背景の中で、槌を打つ音が聴こえてくる。
天空を取り込みながらそこにある、人々の何でもないような淡々とした暮らし。
川合玉堂の超遠近感についてのトークを必ず実施したいと考えている。