13. 9月 2023 · September 13 2023* Art Book for Stay Home / no.127 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『中川一政 いのち弾ける!』中川一政(二玄社、1996年)

「この一冊で、中川一政の人が解る」という中川一政が生き生きと感じられるものである。画家として多くの人に知られるが、詩、エッセイ、書、陶、篆刻など表現の多分野において素晴らしい作品を残している。もともとは文学の分野で活躍していたが、ふとしたきっかけで絵を描き始めた。文学と美術は表現技法という点では異分野であるが、「表現しようとする思い」という観点からは同じものである。

同じく文学から美術に表現世界を拡げた者として、パウル・クレー、ジャン・コクトー、長谷川利行らがいるが、中川を含めて彼らに特徴づけられるのは美術の基礎とされる初歩デッサンから解放されていることである。表現の自由さというよりも考え方の自由さの中で美術を捉えている。本著の中でも、「私に先生はいない」、独学を声高く発言している。いやむしろ先生に学ぶということのダメさを繰り返し述べている。

美術に関しては、このように自由奔放であるが、芸術に対しては常に求道的であり、「芸術とはなにか」を問い続けている。そのうえで、詩、エッセイ、書、陶、篆刻などの表現がある。

「美術」に対しての「美」には大きな疑問を呈しており、「アート」の訳としては「生術」がふさわしいとしている。因みに私も「美術」の訳には異を唱える者で、私は「真術」がふさわしいと考えている。中川にとって、美しいかどうかではなく、醜くとも生きていることが重要としている。私は真であるかどうかだ。

97歳と11ヶ月を生き、最後まで絵を書き続けた中川は、それは理想とする生き方であり、天寿を全うしたと言える。《駒ヶ岳》をはじめ80歳からの絵には、寿命を背景に生きるという事が強く際立つ作品を残している。かつ「駒ヶ岳」シリーズが何枚もある中で、90歳の《駒ヶ岳》が最高と私は思う。

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