22. 2月 2021 · February 22, 2021* Art Book for Stay Home / no.56 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『ムーミンのふたつの顔』冨原眞弓(筑摩書房、2005

著者冨原眞弓はムーミンの作者トーベ・ヤンソンの多くの本を翻訳してきた。本著はタイトルにあるようにムーミンの全てに及んで書かれているが、焦点が当てられているのはトーベ・ヤンソンの人生である。

トーベ・ヤンソンは、もちろんムーミンが全てではない。またムーミンも児童文学、絵本、コミック、アニメーション、パペット・アニメーションと多面体であり、作者もトーベ・ヤンソン単独であったり、共作であったり、監修のみであったりと様々である。

著名『ムーミンのふたつの顔』はそのような多様性を象徴しているとともに、彫刻家の父ファッファンと画家で商業デザイナーの母ハム、2つの公用語スエーデン語とフィンランド語(トーベ・ヤンソンは母の母国語スエーデン語で創作する)、またイギリスでのコミック『ムーミン』を引継いだ末の弟ラルス・ヤンセンとトーベ・ヤンソンのムーミンなど、ムーミンの二面性に注目している。

興味深いのは、ムーミントロールの家族とヤンソンの家族との重なりである。とりわけムーミンママのモデルであるハムは、トーベ・ヤンソンにとって精神的に大きな存在であり、理想である。第7章で母ハムの人生を紹介する著者は、トーベ・ヤンソンその人になりきったかのように強い思いを感じさせる。

キャラクター大好き、キャラクターグッズ大好き日本では、ムーミン人気は圧倒的である。単にムーミンの容姿がかわいいといった単純なもので語れるものではない。キャラクターの意味はその容姿を含む性格や性質を指すものである以上、その個性を明確に描き出すことが求められる。「清く、明るい良い子」ではなく、子どもたち、大人も含めて人間的魅力に溢れていなければならない。なおかつ人間ではありえない特別な存在、興味深い存在であることも求められる。人間のような、架空の動物のような、妖精のようなムーミンが大人も含めて多くの子どもたちの心を惹きつけてやまない秘密が本著で解き明かされる。

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