『横尾流現代美術』横尾忠則(平凡社新書、2002年)
1月15日から4月11日まで愛知県美術館において「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」が開催されている。東海地方で開催される横尾忠則展としては初めての、そして最大級の展覧会である。インスタレーション作品もあるので、その点数を数えることはできないが、常設展示会場も使用して壮大な作品群である。これまで関西関東で開催されてきた横尾忠則展はすべてこうした破壊的物量を観ることになり、そうした物量というものも横尾芸術の一環であるということが言える。
横尾作品にはいくつものシリーズがあって、基本的に美術史のように年代を追うことができるのだが、過去というまとめ方をすることはできない。例えばほとんど描かれることのなくなっている「滝」「暗夜光路」にしても、現在描かれる作品に生きており、いつも時空間を超えたイメージとして登場するからである。
横尾にとって「POPアートとは」「江戸美術とは」「三島由紀夫とは」「エロスとは」「ポスターとは」「版画とは」「前衛芸術とは」「夢とは」「コラージュとは」「UFOとは」「タブーとは」・・・無数のキーワードが交錯して創作が生まれる。そしてその答えを横尾から聞き出すための著述が無数にあり、著書も何百に及ぶ。著書もまた横尾にとっての膨大な創作の一環なのだろう。
本著『横尾流現代美術』はその一冊に過ぎない214ページの新書であるが、「横尾忠則とは」に最も手軽にわかりやすく答えてくれる一冊である。
今から40年ほど前、横尾さんが画家ではなくまだトップイラストレーターとして大活躍していた頃、著書は数冊しかなかった。その頃デザイン雑誌の編集長から伺った話、「横尾くんは、最初原稿を依頼したとき文章が下手でね、編集担当は大変だった。それでもどんどん書きなさいとアドバイスしたんだ、書くことは創造を鍛えることだからと。随分上手くなったね。」そして今は無限なる著述だ。ツイッターでも日々自分の言葉で発信し続けている84歳である。