『町の景観 消えるデザイン』高北幸矢(ゆいぽおと、2023年)
コロナ禍の2020年4月より始まったアートブックを紹介するシリーズは、4年半を過ぎ、no.150となった。少しだけ記念の意味を含めて拙書の紹介とさせていただく。本著は『季刊C&D』(名古屋CDフォーラム発行)119号(1999年)から156号(2011年)に寄稿したものを再考、追加したものである。
「町の景観」という言葉は、わたしの造語で、1980年頃より使われ始めた行政用語としての「都市景観」が一般的である。都市景観は、道路や建築物などの人工的な構造物と、山や河川、海浜などの自然的な要素から構成され、地域の歴史や文化、市民の暮らしなどが反映される魅力的な風景を指すものである。しかし、国の政策をはじめ大都市自治体(横浜、神戸、名古屋、福岡など)がリードをして推進した結果、それは「美的都市計画」あるいは「都市美」のような概念となっていった。「都市景観」が大都市、中でも中心核地区を示したものではなく、私たちの住む町、地域の景観を考えるものとして捉えたのが「町の景観」である。
私は、景観を研究、デザインするという立場で、国内外470の市町村をフィールドワークして回った。また多くの自治体から景観形成のためのプロジェクトに協力を求められ、実践した経験を元に本著執筆の運びとなった。
「消えるデザイン」のコンセプトは「デザインが目立つもの、華やかのもの」という誤った一般認識を否定すべく、あえて逆説的に定義したものである。特に日本の町におけるデザインは、「目立つもの、華やかのもの」が景観を壊している。日本人の多くが「便利なもの」「派手なもの」「かわいいもの」に振り回されて、町の景観を醜いものにしてしまった。そのような中で「消えるデザイン」は、人々が気づきにくい優れたデザインを取り上げ、解説を行ったものである。外国のものに優れたものが多いが、極力日本の例を取り上げて、「町の景観」を身近なものとして考える気づきとした。
174全ページカラーとし、自らの撮影200点の参考写真を掲載し理解を深めやすいものとしている。