10. 7月 2024 · July 10, 2024* Art Book for Stay Home / no.145 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『ホックニーの世界』マルコ・リヴィングストン/関根秀一訳(IBCパブリッシング、1990年)

はじめに、本著は大変読みづらい本である。先ず長文横書きというのは多くの人が読みづらいと感じていると思う。私も極めて苦手で、思考がついていかない。日本字というのは、そもそも横組にデザインされていないという論理的な文字組み知識が私を支配している。また内容が現代美術特有の抽象的な言い回しが使われていて、翻訳という言語の壁がそれをさらに複雑にしている。評論なので、ある程度直訳にならざるを得ない、という仕方がないところもある。

さらに本著の読みづらいのは、文字が小さい(10ポイントくらい)こともある。。活字でもコンピュータフォントでもなく、この時代に一般的であった「写真植字」によるもので、その説明は長くなるので省くが、文字原稿を写真プリントで作る。したがって焼きが濃かったり薄かったりするが、本著は全般に薄く、さらに消えそうなものもある。

ちょっと手にとって、「ストレス多そうだから読むのやめようか」と思いつつ、ペラペラ開いてみたら、もうダメ。興味深い内容が随所に書かれていて、ストレスを感じつつも読み終えた。そのくらいおもしろい本である。ホックニーを知りたいと思う人にとっては必読である。

その秘密は、著者のホックニーへの膨大なインタビューによるものだと思う。そして、ホックニーが極めて素直に全てに答えていることだと思う。

こんなにもホックニーって真面目でナイーブなんだと、そして泣けてくるほど優しい人だと。