09. 5月 2020 · May 8, 2020* 富永敏博展、オープン前レポート。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

2020年4月25日からオープンの予定であった「清須ゆかりの作家 富永敏博展 自分の世界、あなたの世界」は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため6月1日まで休館とさせていただいている。

誠に残念な限りで、学芸員、スタッフ共々、毎日もやもやした気分で過ごしている。勿論、展覧会の準備は完璧である。

本日富永さんに来館いただき、オープン前取材を行い、展覧会の一部をレポートすることとした。

会場に足を踏み入れると、すぐにハッピーな気分に包まれる。

一般に絵画や彫刻の展覧会では、心の準備をして作品と向き合うという間合いがある。

しかしインスタレーション(空間演出アート)による富永展では、会場全体が作品であり、向き合うというよりも包まれるという感覚に陥る。

そして美術展でよく体験する緊張感が、むしろここでは解きほぐされていく。

童話の世界に迷い込んだような物語性、絵本のページを開いたような友達気分、遊びなれた公園がとても良い天気で迎えてくれたような安心感。

そして、一点一点の作品が話しかけてくる。

近くにある作品が連作、あるいは対作品で、その先にある作品もまたつながっていて、会場全部がたった一点という群作、そんなふうにも見える。

近作はコラージュ(彼の場合、自ら描いたモチーフを再構成する技法)によるものが多くなってきており、「そのことにより自由になった」と富永さんは言う。

その感覚の延長線で絵を描くように、あるいは工作をするように会場構成を行っている。

富永さん自身がハッピーな気分で過ごした遊びの後に、来場者もまたハッピーな気分で包まれるだろう。

富永さんの活動は、個展、グループ展、プロジェクト、ワークショップと多岐に及んでいるが、個展が主でほかのこともやっているというものではなく、それぞれが重要な活動であり、一貫しているものである。

現代美術の表現は極めて多様であるが、全ての富永さんの活動がたった一点の作品として仕上がっていくのかも知れない。

来場者が、富永さんとつながってプロジェクトを拡げていく「新種の苗木」を、一本持ち帰り私のオフィスに植えた。ふふふ。

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