03. 9月 2026 · アーティストシリーズ+ 観察のしるし リレートーク[清水彩瑛] はコメントを受け付けていません · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ, 展覧会

開催中の企画展「アーティストシリーズ+ 観察のしるし」では、過去の「清須市はるひ絵画トリエンナーレ」で入選、佳作となった方々から、清水彩瑛さん、土屋裕央さん、平松絵美さんをグループ展形式でご紹介しています。

今回のブログでは関連イベント「アーティストリレートーク」より、清水彩瑛さんのトークをご紹介します。

清水彩瑛(撮影:山田聡)

アーティストリレートーク
日時:2026年7月19日(日) 13:30~(1時間ほど)
出演:清水彩瑛、土屋裕央、平松絵美(いずれも出品作家)
聞き手:加藤恵(清須市はるひ美術館学芸員)

展示風景・作品写真|撮影:守屋友樹


加藤:作品の展示方法が独特ですね。

清水:そうですね。まず、描いているモチーフは日常の中で見かけるものからかたちを抽出して選び絵に起こす、ということを繰り返して制作しています。その現象だったり物体と出会った時の体感みたいなものがとても大切で、描いた絵もなるべくその体感に近い置き方を心がけて展示方法を決めています。なので、これは目線よりちょっと高めに見せようとか、絵によっては厳密に決めていたりします。
今回の出品作の中だと《語る目と合う(遠景/傾げ)》、《語る目と合う(穂に跳ね火)》が一番古い作品になるのですが、木枠と木のコマを使って設置の高さを決めていて、一応別々の作品ですがワンセットで見せています。自分がこの光景と出会った時の感覚と、覚えていることをつなげて再現するように、このような設置方法をとっています。

右:《語る目と合う(遠景/傾げ)》木製パネル、綿布キャンバス、透明水彩、アクリル絵具、パステル、石粉粘土 90×60cm 2024 年
左:《語る目と合う(穂に跳ね火)》木製パネル、綿布キャンバス、透明水彩、アクリル絵具、パステル、石粉粘土 110.2×90cm 2024 年

加藤:日常的に見たものの状態から作品制作と展示をされているということですが、日々、写真を撮りためているんですよね。

清水:はい、「これを撮るぞ」っていうものは特に決めていなくて、毎日通っている道などで、ちょっと様子が違うものだったり、なんだかすごく気になるというか、なんでこうなっているんだろうというものなど。使っている人の動きがなんとなく感じられるものや、見て気持ちが動いた時にメモをとったり写真を撮っています。

展示解説にそえた写真の一例

加藤:今回、参考資料として解説の下に写真を2点掲示していますが、本当に何でもない風景の写真ですね(笑)。例えば《語る目と合う(呼ぶ、寒くないように)》では、家を解体した後に残った隣の家の壁にブルーシートを木で押さえ付けている光景がもとになっていますよね。

清水:それと、地下鉄などで雨漏りしているところに細いビニールのようなものが取り付けられている光景。そのままだと雨水が落ちてくるので、ビニールによって雨水が誘導されてる状態がすごく気になって。そういった自分の中で見たものと他の景色がちょっと繋がったら制作へ進むというかたちを続けています。

《語る目と合う(呼ぶ、寒くないように)》木製パネル、スムースニット、透明水彩、アクリル絵具、パステル、石粉粘土 220×75cm 2026 年

加藤:絵の素材も独特ですね。

清水:絵の表面は下地剤を塗っていますが、横から見ると側面が斜めになっていて、素の生地が見えるようになっています。

加藤:ぬいぐるみの生地のようです(笑)。

清水:キャプションの素材欄に「もちもちボア」とか「スムースニット」と記載していますが、冬に使うような毛足の長い布を取り入れています。

展示風景

加藤:清水さんはこれまでも手触りや質感の強い素材を作品に取り入れていますが、そういった素材を用いる理由は何ですか?

清水:もともと《語る目と合う(穂に跳ね火)》のような市販の綿布キャンバスをずっと使っていたのですが、パステルをのせた部分の絵肌を均質にしたくて、最初は身近な布でやってみようと思い制作し始めました。最近は(ボアのような)ふわふわした質感のもので、絵ところだけフラットに、それ以外のところははある程度厚みがある、という状態にとても興味があります。どちらかというと、手触りより見た目の素材感が気になっていて、今はボアやニットといった布を使っています。

《見えてなくても身体は向いてる の あみもの(群景/両眼で見る)》2026 年
右:木製パネル、スムースニット、透明水彩、アクリル絵具、パステル、石粉粘土 48.5×71cm 左:木製パネル、もちもちボア、透明水彩、アクリル絵具、パステル、石粉粘土 41.5×30cm

加藤:《見えてなくても身体は向いてる の あみもの(群景/両眼で見る)》などは、平らな部分とボアのフカフカした質感の違いが分かりやすいですね。性質の違うものが一体になっている感じが面白いです。あと、描く時に「編みもの」にするアプローチも独特だと思いました。

清水:もともとデジタル上でドローイングをしている中で、絵の上で編みものをしてみたいと思っていた時期がありました。点を置いていって、その集積で見えるかたちが変わったり、視点が変わっていくみたいなことが気になって。下地に透明水彩などで描いた上から、パステルを重ねて下の描画を消し、上から色のついていないバーニッシュ(保護ニス)で点を打ちながら(描いたものを)掘り起こすような感じで描いていく。自分の視線を辿るというか、目を配るといったことを絵の中で記録として残せたら面白いなと思い、そういった制作方法をとっています。

《やさしい結合;いつまでも窓越し の あみもの》木製パネル、スムースニット、透明水彩、アクリル絵具、パステル、石粉粘土 2026 年
右:110×162.5cm/左:107.5×80cm

加藤:例えば《やさしい結合;いつまでも窓越し の あみもの》で編みものになってる部分(左手作品のストライプの部分)は何でしょうか?

清水:これは朝顔などを育てる植木鉢の支柱ですね。モチーフ自体をなぞるよりも空間を編みものにしてイメージを表しています。

加藤:空間を編みものにするとは面白いですね。それはどういった意識から出てきた表現なのでしょうか?

清水:例えば何かモチーフにして描きたいものがあったとしても、そのものだけじゃなくて、それがどこに置かれているか、どんな影響を受けているか、周りの環境との関わりを絵に残したい。どちらかというとモチーフよりもその周りを描く、そういったことを制作の上で心がけています。

資料コーナーのコラージュドローイング

加藤:資料コーナーでは、清水さんが日常的に取り組んでいるコラージュドローイングを展示しています。

清水:机の上でできる小さいサイズの絵を制作する中で、目にする風景にあるものと近いかたちが既製品にもあることに気付いて。リング状のシールとか。そういうものを作品に取り入れることで別の何かに見えたり、先ほど土屋裕央さんのトーク(前回ブログを参照)でも「連続」についてお話がありましたが、連続させることで一つの景色になったり、再現されていったり。コラージュドローイングでは、普段見かけるいろんな素材を組み合わせています。絵の作品とは始まり方が違っていて、また別ベクトルというか、独立した即興的なものとして制作をしています。

コラージュドローイング

加藤:描くのではなく、シールなどの既製品を組み合わてつくる制作ですね。

清水:今は描くこととコラージュすること、どちらも取り入れています。組み合わせてつくる感覚も、描く感覚と同じぐらい大事で、自分の中でそこはあまり分けてはいないです。

加藤:コラージュドローイングで使用されているリング状のシールのイメージが作品の中にも登場していますね。

清水:コラージュドローイングの方が先で、絵の中で目が合う感じが面白くてそこから視点が始まるような絵をつくってみようと取り入れ始めました。

展示風景(一番右手の作品が《ぜんぶ受け止めるためのおまじない:寒くないように の あみもの》)

平松(出品作家):《ぜんぶ受け止めるためのおまじない:寒くないように の あみもの》のモチーフが、窓に貼ってある養生テープの光景をもとにしていると聞いて、この展示空間全体が街に見えてきました。最近、自分の息子も夏休みであさがおの植木鉢を持って帰って来て、そういった体験と展示を重ねて、街を散歩している感覚になりました。

加藤:清水さんのお話をふまえて改めて展示を観ると、歩きながら風景を見て感じ取ったことを展示に置き換えている感覚がよく伝わってきました。

土屋(出品作家):変形の作品が多いですが、作品のサイズや大きさはどういった基準で決めていますか?

清水:展示会場を下見して、これくらいのスケールの窓(作品の画面)が欲しいといった空間に対する体感や、自分の身体に対する画面の大きさを、マケット(展示室を縮尺した模型)をつくって決めていきます。小さい作品はそこまで考えていないのですが、例えば《語る目と合う(呼ぶ、寒くないように)》や、《語る目と合う(島の素、うみのへり)》など大きめの作品は、そういったプロセスでサイズを決めています。なので、新しくつくる作品の比率も(展覧会によって)その時々で全然違います。既製サイズのものは展示のイメージに合うことが少なく、作品のパネルはほとんど自分でつくっています。

《語る目と合う(島の素、うみのへり)》2026 年
木製パネル、スムースニット、透明水彩、アクリル絵具、パステル、石粉粘土
右:132.5×180cm/左:132.5×60cm

加藤:(本展の打合せで)展示する場所を見てから作品のサイズを決めるとお聞きした時は少し驚きました。もうひとつ私から質問で、作品を横から観ると側面が斜めになっていますがなぜこのように?

清水:学生の時に厚みのあるキャンバスは緊張して描けないということがあり、それをなるべく解消して自分が楽に描くために始めたことがきっかけでした。薄いものに描くのではなく、薄く見えるだけで実は許せるんじゃないかと(笑)。あと、壁に掛けると絵の裏側まで影が入って、それが自分の中から引き出された記憶の薄さの感覚に近い表現なのではないかと感じています。


日常の中で自分が受け取っている感覚と忠実に向き合い、描いたり手で触れた時の感触を大切にしながら自身の表現を更新していこうとする清水さん。その独自のアプローチについてとても興味深いお話をお聴きできました。清水さん、ありがとうございました。

次回は平松絵美さんのトークをご紹介します!

清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ+ 観察のしるし

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