31. 8月 2026 · アーティストシリーズ+ 観察のしるし リレートーク[土屋裕央] はコメントを受け付けていません · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ, 展覧会

公募展「清須市はるひ絵画トリエンナーレ」の受賞者・入選者による展覧会「アーティストシリーズ」。これまで100名以上のアーティストを紹介してきたこの展覧会は、新進作家たちの挑戦の場という役割も担ってきました。
昨年度からはじまった「アーティストシリーズ+(プラス)」では、これまでの取り組みを継承しつつ、当公募展で入選、佳作となった方々の中でその後も継続した活動が見られるアーティストを取り上げます。

今回の「観察のしるし」は、清水彩瑛さん、土屋裕央さん、平松絵美さんをグループ展形式でご紹介しています。まさに三者三様の表現でありながら、観る人それぞれが作品の中に繋がりを見出していくような展示となりました。

このブログでは、7月19日に開催した関連イベント「アーティストリレートーク」より、土屋裕央さんのトークをご紹介します。

土屋裕央(撮影:山田聡)

アーティストリレートーク
日時:2026年7月19日(日) 13:30~(1時間ほど)
出演:清水彩瑛、土屋裕央、平松絵美(いずれも出品作家)
聞き手:加藤恵(清須市はるひ美術館学芸員)

展示風景・作品写真|撮影:守屋友樹


加藤:土屋さんの作品は線や色面など抽象化されたイメージが特徴的です。でも描いているものは、自分が実際に見たものや風景がもとになっているとお聞きしました。

土屋:僕は死や死生観をテーマに作品づくりをしてるのですが、それらについて考えている時や、例えば海や身近な風景を見ている時のちょっとしたアイデアなどをドローイングして線などで描いていきます。特に《海への視点》では、まずフレームだけ決めて、海を直接見て描くのではなく見たイメージから線を描いていきました。また、点で描いているところは、空気や大気のようなものを表したくて描いています。聴いている音楽のノリというか、結構、即興的に描くことが多いです。なので、まずイメージやアイデアをノートにたくさん書いて、そこからそれを見ずに線やかたちを抽出して描くことが多いです。

《海への視点》油彩、綿布、パネル 91×140cm 2021 年

加藤:では、例えば《海への視点》は、実際に見た海を思い出して描いているのでしょうか?

土屋:そうですね。曖昧な記憶というか、この時期に海へ行くことが多くなって描きたいと思ったのですが、波って写真を撮ってもなかなか絵のするのが難しくて、自分の記憶から表現できるかなと思い描いた作品です。

加藤:《海への視点》に限らず、土屋さんの作品は線による表現が多いですね。作品制作の中で線を描くことについて何か理由はありますか?

土屋:ある時、急にはまって、線を描いている時期が長くなりました。自分では「そういえばそうだったな」という感じです。以前は色面で描くことが多かった時期もあります。最近はまたちょっと線から離れようかなとも思っています。

《星に向かっていく》油彩、アクリル、パネル 91.2×80.1cm 2026 年

加藤:今回の出品作では《星に向かっていく》が一番新しい作品ですよね。この作品では、これまでの線の表現から変化が見られるように思います。

土屋:《星に向かっていく》は、まだ実験的で、ここからどう展開していくか分からないのですが、これまで「線を見ている魚」といったモチーフを扱うことが多くて、そこから展開して「宇宙のような空間のどこかを見ている魚」というイメージで制作してみました。これまで線の表現が多すぎたので、少しこねてみたという感じです。

加藤:生と死、死生観、宇宙空間といった概念的なものを制作のテーマにするようになったきっかけはありますか?

土屋:学生の時に母親を事故で亡くして、悲しさとともに「死」について考えることが多くなりました。「もしかしたら、死は終わりではなく、別の可能性があるのではないか」といったアイデアをヒントに、「死」というもののイメージを少しずらして描けないかなと。

《Continuing world 4》油彩、アクリル、綿布、パネル 204.8×91.2cm 2026 年

加藤:《Continuing world 4》で魚が並んでいるイメージは曼荼羅を想起しました。

土屋:たまたま自宅近くの海を歩いていたら魚が大量に死んでいて、その中に一匹だけ生きた魚がポツンといた光景をもとに描いています。自分の中で生と死の境界や枠をテーマにしていて、この作品で言うと外側と中は別の世界。周りの魚は死んでいて、中の魚は生きていて排泄している。

《対と終わりについて》油彩、綿布、パネル 116.7×80.3cm 2026 年

加藤:《対と終わりについて》の鳥も排泄しているところが描かれていますよね。そこにも「循環」が表れてるように感じました。また、《連続する風景》のように連続性のあるものを描いている点も特徴的です。

土屋:うまく言えないのですが、生と死の二元的なものの中にある輪廻といった概念を考えることが多くて。あと《対と終わりについて》のようにパースのついた奥に向かって行くようなイメージもテーマにあり、そこから連続してるものを描くことにつながっていると思います。

右《境界と枠について 2》油彩、綿布、パネル 60.6×50cm 2026 年
左《連続する風景》油彩、綿布、パネル 60.6×50cm 2026 年

加藤:《連続する風景》では、奥に続く空間が描かれている。一方、《境界と枠について 2》では、手前の線は平面的ですが、その奥は宇宙のようにどこまでも空間が広がっているように見える。画面の中の空間の広がりといったことも意識して描いていますか?

土屋:そうですね。難しい部分もありますが、方法を探りながらつくっています。

加藤:ありがとうございます。それでは、他の出品作家のお二人からも質問をいただきます。

平松:私も集団と孤独をテーマに描いている作品があって。《Continuing world 4》にもそのような意味があるのかなと思いました。

土屋:意図しているわけではないですが、1匹だけ中央にいることで寂しさや孤独が表れているということはあるかもしれません。

平松:《Continuing world 4》の中央下に描かれている丸は何でしょうか?

土屋:それは海に太陽の影が落ちているイメージがもとになっています。作品の中では、星だったり、他のものに置き換えて観ることもできます。

加藤:私はブラックホールのイメージかなと思っていました。

展示風景。左手の作品が《対と終わりについて》

清水:資料コーナーにあるノートブックのドローイングも拝見したのですが、作品の線は、作品の中でつくられるのか、あるいはドローイングをそのまま引用しているのでしょうか?

土屋:作品の中で即興的に線をつくる時もあるのですが、《対と終わりについて》では、ドローイングをプロジェクターでキャンバスに投影し、なぞって描く方法をとっています。ドローイングをそのまま描いているという感じです。

清水:(ドローイングとキャンバスの)画面の比率もあわせていますか?

土屋:そうです。《対と終わりについて》は、最初は街灯の線がひとつだったのですが、実は街灯を一本描いた後どうしようかずっと迷っていて、そうしたら途中で投影が少しずれてしまって。もう一つ出てきた線の影がかっこよくて「あ、できた」みたいな。そういった偶然から描いてみた作品です。

加藤:今、ドローイングのお話がありましたが、土屋さんは作品のもとになるアイデアを絵や言葉でノートブックに10年以上かき溜めていて、それをまとめた冊子を最近発行されました。土屋さんにとってそのようなドローイングとはどういったものですか?

土屋:アイデアからドローイングを描くこともあるし、ドローイングからアイデアをもらうこともある。喫茶店へ行った時とか、電車に乗っている時とか、日々、少しずつかき溜めています。

加藤:考えていることをまとめる意味合いが大きいのでしょうか?あるいは、手を動かすといった意味が強いのでしょうか?

土屋:両方あると思います。描いているうちに考えがまとまって、自分の中の整理になってるのかもしれません。

・・・

<来場者からのご質問>

___《Continuing world 4》ではメダカを300匹近く描かれていますね。途中で飽きませんか(笑)?

土屋:飽きる時もあります。一つひとつ確認しながら、集中力、忍耐がいるし時間のかかる制作です。ですので、ステンシルのように型紙を使った方法を取り入れて描いています。


現実にあるものや光景から受けた印象をシンプルな図像へと帰結させる土屋さん。作品が生まれる過程に少しふれることができたのではないでしょうか。土屋さん、ありがとうございました。

次回は清水彩瑛さんのトークをご紹介します!

清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズプラス 観察かんさつのしるし

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