09. 6月 2022 · 清須アートサポーター アートスポットめぐり「北名古屋市アートエリアロード」 はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及, 未分類

いつも館の活動を支えてくださるアートサポーターのみなさんとの恒例お出かけ企画。

名古屋市営地下鉄壁画めぐり、尾張旭市城山公園、朝日遺跡ミュージアムに続き、今年度は「北名古屋市アートエリアロード」を探訪しました

感染対策を取りつつ、屋外での見学です。

 

清須市のお隣、北名古屋市には、道路沿いにたくさんの野外彫刻が展示されているのをご存じでしょうか?

県道名古屋豊山西春線や江南線沿いをはじめ、50点余りの作品がいつでも見られます。

北名古屋市として合併する前の西春町と、町内に美術学部を置く名古屋芸術大学との関わりから、1990年以降漸次的に設置されたというこれらの作品群。

存在は知っているけど、ちゃんと見たことはない…というサポーターさんからご提案いただき、お出かけ先に決定

 

2013年に発行された『北名古屋市彫刻ガイドブック』(北名古屋市歴史民俗資料館や市役所で、なんと無料でもらえます!)を早速ゲットし、これをもとにちょこっと下調べした「しおり」を携え、いざ出発

 

当日は気温高めだったものの、風がさわやかで散策日和(改めて写真を見るとめっちゃ青空)。

6つのエリアのうち、今回訪れたのは名古屋芸大周辺のアートエリアロードです。

おもに名古屋芸大の先生や卒業生の作品が並びます。比較的人体彫刻が多め。

 

岩井義尚《遊-Ⅲ》

3人の子どもが戯れています。見る角度によって見え方が異なり、「ここから見たほうがいい!」とベストポイントを探していました。

加納秀美《踊り子》

尾張旭の城山公園にも同じ作者の作品がありました。

石田武至《語らい》

金ピカ。オリーブの環と女性の手には鳩。平和の象徴でしょうか。(おそらくこれと同じ鋳型の作品が、名古屋市鶴舞の通信ビルのてっぺんにあるのですが、ご存じの方いますでしょうか…)

三枝優《風》

マスクを着けていました。

両手で身体を浮かせて支えているようなポージング。腕がプルプルしそうです。

吉田鎮雄《踏》

手で髪の毛を引っ張る?不思議なポーズです。

身体の正面が道路側を向いているので、歩道側からはおしりが見えます。なぜこのような置き方をしたんでしょう。

大口明一《魚》

萩原清作《裸婦》

神戸峰男《春夢》

神戸峰男さんは2019年に公開された東岡崎駅の徳川家康騎馬像の作者でもあります。


 

野外彫刻は360度どこからでも見れて、触ることができるのも醍醐味。

ブロンズ、石、ブロンズだけどおそらく原型は木?(鑿の跡がわかる)など、質感の違いも楽しみました。

大学付近には公式情報にはない作品もひっそりあったりして、思いがけない鑑賞もできました。

 

普段は通り過ぎてしまうような場所で、みんなでわいわいと感想をおしゃべりしながら作品を見られたことが何より楽しかったようです。

最後に名古屋芸術大学 Art & Design Center Westで開催中の『儀間朝龍展 POP OR END』を鑑賞。

ダンボールを使ってアメリカや沖縄の文化を表現したポップな作品に、こちらでも大盛り上がりなのでした。

 

五条小前の歩道陶板。かわいい。

 

O

 

 

 

20. 4月 2020 · 臨時休館に入って1か月以上が経ちました。 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

臨時休館に入って1か月以上が経ちました。

目まぐるしく変化する状況のなかで、まだ展覧会を開催していた3月初めの頃が遠い過去のように思えます。

真っ先に「自粛」を余儀なくされた劇場やミュージアムは今どうなっているのか?

おそらく中の人たちは、今なにをすべきか、何ができるのかということに悩みながら日々を過ごしているのではなかろうかと思います。

私もその一人です。

 

とはいいつつ、実は開館中も閉館中も学芸員の仕事としてやっていることはそんなに変わりません。

展覧会の準備、収蔵作品の管理など、表からは見えないところでおこなっている日常業務を今も粛々と続けています。

この機会に、美術館を休館することで生じる様々な問題を、一般化して整理しつつ考えてみたいと思います。

(もちろん、すべての館の状況を把握しているわけではないので、あくまでも学芸員O個人の見解であることをご理解ください。)

 

休館中の美術館でおこなわれていること

例えば、近年ラッシュの施設改修中であっても、学芸員の仕事がなくなるわけではありません。

所蔵品のコンディションチェック(作品の状態をチェックして記録していくこと。人の健康診断のようなものです。)やアーカイブ整理(作品の写真を撮影したり、データベースを充実させたり)、普段手を付けにくい資料の調査・研究などに力を注いでいます。

つい最近も、桑名市博物館のうれしいニュースがありました。

中日新聞「臨時休館利用し、調査研究で新発見 桑名市博物館」

オンラインではすでに様々な取り組みがなされていて、SNSでは#エア博物館#エア美術館#おうちでミュージアムなどのハッシュタグで作品や展覧会が紹介されていたり、Youtubeでは国立西洋美術館国立科学博物館がギャラリートークをアップしていたりと、各館ができることを模索している様子がうかがえます。

WEB版美術手帖では連日このような国内外のオンラインコンテンツが取り上げられていて、とくに海外の先進的な試みには感嘆するばかり。

 

こうして見てみると、ミュージアムの新しい可能性を見出すことができそうな一方で、じゃあ美術館にわざわざ行かなくても楽しめるんじゃない?という意見も出てきそうです。

美術館に親しんでいる方にとっては、特別な空間で本物の作品に出会う価値をよくご存知でしょうし、私たち学芸員もその体験を提供することに尽力しています。

しかし確かに、混雑するし、空調は効きすぎているし、照明は暗いし、ガラスケースや結界で距離があってよく見えない美術館よりも、家の中にいながらどこまでも拡大できる高精細デジタル画像のほうが作品をよく見ることができる場合もあるでしょう。

モノがあること、実物を見てもらうことを前提に成り立っているミュージアムの根幹を揺るがしかねない事態になったとき、私たちはどうしたらいいのか?

私はまだその答えを持ち合わせていません。

 

展覧会が開かないということ

・スケジュール調整

次に、現在実際に起こっている事態として、「展覧会が開催できない」という問題があります。

美術館では一般的に、展覧会一本につき1年~数年をかけて準備されていて、その間に多くの人の協力を要します。

そのためスケジュール管理はかなり厳密で、予算立て、内容の検討、広報、作品借用がある場合はその交渉、集荷、運搬、そして展示作業と、会期から逆算して無理なく予定を組み立てています。

現在多くの館が、会期途中・会期前に休館になることが急に決まり、その期間が何度か延長していて、いつ再開できるかが明確にわからない、という状況です(少し前までは「〇月〇日まで休館」だった表記が「当面の間休館」と変わる館が増えています)。

中には一度も日の目を見ることなく会期を終えることになる展示もあるでしょう。

再開できたとしても、それぞれの美術館が厳密なスケジュールで動いているので、そのままスケジュールをスライドできるとは限りません。

わかりやすい例では、森美術館で2020年4月8日~6月14日に開催予定だった「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」が2023年1月~3月(予定)に延期するというニュースがありました。

なんと、3年後です。びっくりしてしまいますが、国外の組織やアーティストが関わるとなるとさらに調整は困難になるでしょう。

また、美術館が「開館する」=お客様に入館していただく、ということです。つまり作品を鑑賞できる状態にしておく必要があります。

したがって、いつ再開するかわからないけれども、いつ再開してもいいように、再開の判断がなされる前の段階で展覧会を完成させておかなくてはいけません。

当館を含め、今現在休館している館でも、先が見えない中でスケジュール調整に奔走しながら展覧会の準備を続けているところが多いと思います。

 

・予算の問題

運営母体にもよりますが、公立の美術館は基本的に予算を年度単位で組んでいます。

そのため、年度内で事業収支をある程度完結させる必要があり、事業計画を柔軟に変更することが難しいという面があります。

(しかし前述したように、展覧会の準備は年度をまたいで進められており、かつ、学芸員は年度更新などの不安定な短期雇用が少なくない現状と矛盾するところです。。。)

金額が大きい案件であれば入札(決まった条件を提示して、請負者を募集→最も安価な見積額を出した業者に決定するプロセス)をかけることもあるので、その手続きには時間がかかり、素早い動きがとれません。

企業が運営する美術館であれば、単純に収入がなくなるので、ただでさえ採算の取れない美術館の経営が危ぶまれるところもあるかもしれません。

 

・広報のタイミング

デジタル媒体が隆盛を極める昨今ですが、美術館ではいまだアナログにポスターやチラシなどの紙モノを印刷していて、その文化はなかなか廃れません。

かくいう私も展覧会のチラシ(かっこよく言うとフライヤーですかね)を集めるのが好きで、自館の広報物を作るときの参考にしていたりします。

当館の場合は開会の約1か月前には広報物を完成させて、デジタル媒体も併用しながら各種広報を展開します。

そこから逆算すると、開会の3~2か月前くらいからデザインの検討を始めます。

デザイナーや印刷会社と打ち合わせしながらデザインの細部まで詰め、微妙な色味の調整(作品画像を印刷物に使うことが多い美術館の広報物。できるだけ本物の印象を損なわないよう、インクの乗り方や紙の質感などにも気を使います。)を重ねながらようやく納品される、何万枚もの紙の束。というか山。

展覧会が開けられないとなると、それらが無駄になってしまいます。

すでに全国に配布された後に中止や延期が決まった展覧会も多く、今は各館から「中止のお知らせ」「延期のお知らせ」「チラシの回収」といった書面が届いています。作成の手間や追加の郵送料もかかります。

名古屋市美術館で4月25日から開催予定だった「みんなのミュシャ」展のポスターが名古屋駅に掲示されていましたが、会期の日付の上から「開幕が延期となります」というシール?が貼られていました。すべてのポスターに貼りに回っているんでしょうか…大変です。

 

・美術品輸送、ディスプレイ

作品を展示するにあたり、学芸員だけではできないこと、プロの協力が不可欠な場面がたくさんあります。

その最たる例が美術品の輸送と展示です。

ここでお世話になるのが、美術品の扱いと輸送に習熟した専門のスタッフです。

細心の注意を払った梱包技術、適切に温湿度管理され、安全面とセキュリティに特化した輸送技術、そして多様な作品の形態に合わせた展示技術によって、私たちは国内外の作品を、適切な環境で鑑賞することができます。

海外と比べて、日本の美術専門業者の技術はとくにすぐれていると言われていますが、特殊性ゆえその数は限られていて、複数の美術館が同じ会社に委託することもしばしば。

展覧会が開催されないことで、彼らの仕事にも影響が出ています。

 

また、展覧会の会場で目にするキャプション(作品情報が書かれた名札のようなもの)や解説のパネル、セクションごとに色が変えられた壁、展示台などなど、展示をよりよく演出するための設えを形にしてくれるのは、空間デザイナーやディスプレイ業者です。

展覧会によっては床から天井まで、部屋丸ごとを限られた期間のためだけに作る(ちょっとした建築工事です)こともあり、ときに本来の展示室の状態がわからないほどに作りこまれた会場もありますね。

展覧会に合わせてその環境・空間まで設えるのは、来館される方々が鑑賞に埋没できるように、そして作品の良さをより引き立てるためです。

そしてお気づきかと思いますが、ここまでのことをするにはかなり費用がかかる場合もあります。

一つの展覧会の中止で数百万の案件が飛ぶことにもなります。業者の損失は大きいでしょう。

 

・館内のスタッフ

これも館によりけりですが、展示室の要所要所にいる看視スタッフや警備員は、非正規職員や派遣アルバイトの枠で雇用されていることが多く、彼らの収入保障も考慮しなければなりません。

(看視スタッフの視点で美術館の中を描いた漫画『ミュージアムの女』は電子書籍でも読める!おすすめです。)

ミュージアムショップ、カフェやレストランは外部委託のところもあるでしょうね。お客様が来なければ収入はありません。

ネット通販は可能かもしれませんが、展覧会に関連したグッズや図録などは、展覧会が開催されていない状態では売ることもままならないのではないでしょうか。

このほかにも、たくさんの人々の協力によって、美術館の運営は支えられています。

 

・アーティストの負担

言わずもがな、です。

とくに現存アーティストの場合ですが、数年前に決定された個展ともなると、アーティストは会期に照準を合わせて集中して作品を制作し、準備し、構成を練ります。

オリンピックという特別な場で最高のパフォーマンスができるように鍛錬を重ねるアスリートと同じですね。

不測の事態とはいえ、突然表現の機会を失ってしまった芸術家たちの思い、そして経済的な側面も含めた損失というのは、私たちが想像する以上に過酷なものだと思います。

モチベーションを維持するのも大変でしょう(アーティストじゃなくても大変ですよね)。

 

しかし、この状況で私たちの心を救ってくれているのは彼らの創造力に依るところが大きいはずです。

こんな状況だからこそ、芸術がますます必要とされているように感じます。

文学、音楽、美術、演劇、映画、ダンス…などなど、stay homeしながら楽しめるこれらの術が、この世にあってよかったと心底思いますし、ネットのあちこちで、日夜表現活動を私たちに提供してくれているアーティストたちに感謝の意を表したいです(しかし無償の提供が当たり前ではないことも強調しておきたいです)。

優先順位はいつも低く、軽んじられ、消費され、利用されてきた芸術が、今、私たちの人間らしさを保つ力になっていることを、忘れないでほしい。

 

***

今はどんな職種も(もちろん仕事をもっていない方も)未曽有の危機のなかで苦労を強いられています。

恨み節にならないように、休館という状況を受け入れたうえで、いまだブラックボックス視されている美術館の仕事を知っていただけたらと、できるだけ客観的に記述したつもりです。

こんな長い文章をここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

命を守ることを最優先に、ともにこの危機を乗り越えましょう。

そして、開館の折には、また当館にお越しいただければうれしいです。

 

O

29. 3月 2020 · 美術館で「よくみて、考える」ということ はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

こんにちは。

 

前回のブログ(http://museum-kiyosu.jp/blog/curator/)の通り、学芸員のFさんがご卒業されました。

そしてこのブログを書いている学芸員IがFさんの後任として、今後みなさまに美術館のいろいろを発信していきます。

 

3月のはじめ、この美術館にやってきましたが、

残念なことに、コロナウイルスの影響で臨時休館することになってしまいました。

そして臨時休館は4月末まで延長になりました。

 

今日は寒いですが、だんだんと春が近づいてきています。美術館近くでは菜の花が咲いています。

 

さて、今回は新たにやってきたIの今後の抱負を綴っていきたいと思います。

わたしの抱負は、

 

美術館での活動を通じて「よくみて、考える」経験を多くの方々と共有すること

 

です。

 

突然の質問ですが、日常のなかで、なにかを「よくみる」ことはありますか。

 

忙しない日々を過ごしていると、ふぅと気持ちを落ち着けて、なにかをじっとみてじっくり考える機会は少ないように思えます。

 

わたしは、作品をよく知るためには、「よくみて、考える」ことがとても大切だと考えています。

作品のキャプションに記載された「情報」も重要ですが、

まず自分の目で作品をよくみて、なにがどんなふうに描かれているのか確認し、

そこから疑問や気づきをみつけることが、作品の深い理解につながると思います。

 

作品は必ずしも誰がみても明らかな表現をしているとは限りません。

そのため、作品をみたときに、人によって異なることを感じ、考えることは不思議なことではないのです。

 

作品はみる人に多様な解釈をもたらすという前提で、他人と共に作品をみると、

自分とは異なるみかたや意見が現れたとき、

「こんなみかたもあるのか!」とわくわくすると思います。

多様な意見を共有し、尊重し、楽しむことは、

自分とは異なる意見を排除する傾向にある現代において、とても大切だと思います。

 

来館された方が、美術館で「よくみて、考える」経験をし、

その経験を普段の暮らしにまでつなげ、

日常がわくわくすることに包まれるような展覧会やイベントを企画していきたいと思います。

 

美術館でわくわくしましょう。

 

I

13. 11月 2019 · 特別編 誠信高等学校インターンシップ① はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

当館では、2019年11月12日(火)から14日(木)まで

誠信高等学校の生徒さんがインターンシップとして

来ています!

中の人は、普段高校生と話すことが少ないので緊張しました・・・(笑)

まずは、現在開催中の「嗅覚のための迷路」を鑑賞してもらいました。

若いからか、すぐに匂いの濃度をかぎ分けられる生徒たち

・・・スゴイ!

その後、

「学芸員って、どういう仕事?」ということで、

学芸員の主な仕事(収集・保存/調査研究/展示/教育普及)や

ひとつの展覧会ができるまでの流れをお話ししました。

「研究」といっても、なかなかイメージがつかなかったり・・・

説明の難しさを感じました

そして午後からは、収蔵庫のなかへ!!

学芸員が作品のコンディションチェックを行っている様子をみてもらったり、

立体作品をどこからみるのがいいのか、みんなで考えたり・・・

身近に作品を感じる機会になったのではないでしょうか?

今日の感想をみんなに書いてもらいました!

【インターン生/Mさん】

今日は展示作品や収蔵庫内、収蔵してある作品のコンディションチェックなどの見学を行いました。学芸員という仕事についてお話をお聞きしたのですが、その中でも、いかに「作品」の世界を壊すことなく「作品」に目を向けてもらうかという課題に対して、様々な工夫がされていることに驚きました。

たとえば、展示室に一歩はいった瞬間に、来館者にどこを見てほしいのかや、一般的な人の視線の高さまで考えた上で作品の展示の位置や角度、照明の当て方を考えていると知り、学芸員の方々の努力を目の当たりにしたような気がしました。学芸員の方の工夫があるからこそ、そこにある「作品」の世界に入り込むことができるということに気がつき、初めてその「作品」を見たときよりも感動しました。

【インターン生/Yさん】

今日は、美術館内の展示物や収蔵庫の見学、コンディションチェックの説明がありました。まず、僕の将来の夢が美術やイラスト関係なので、美術館でのインターンに興味を持ち、清須市はるひ美術館を選択しました。

普段、自分が来館者として来るときは、「飾ってあるだけ」とか「置いてあるだけ」というイメージがどうしてもありました。しかし、実際に展示の説明を受け、配置の仕方であったり、来館者の目線で考えたりと、自分の知らなかった配慮が多くあり、とても驚きました。

更に、作品の保存の方法や果てには、作品に影響のある虫まで調べなければならないと聞き、自分の考えていた「学芸員は楽そう」というイメージが、やりがいのあるとても難しい仕事という風に大きく変わりました。

【インターン生/Oさん】

今日は、色々な絵を見ることができました。絵を見て、保管の仕方が細かくて、傷がつかないようにプチプチを使ったりしていました。額縁に触るときに指紋がつかないよう白手袋をしたり、絵にカビがないか隅々までライトで見て、細かい作業だと思いました。

また展示作品には、匂いのカーテンもあり、布の縫合の線が一枚目と二枚目と重なるように意識していてすごいと思いました。

【インターン生/Hさん】

今日から3日間のインターンシップが始まりました。僕は清須市はるひ美術館に初めてお邪魔させていただきました。着いた時の感想は建物の形がでこぼこしていて外から来館者を楽しませるような工夫がされ、入る前から楽しさが伝わってきました。

まずはじめに僕達4人と担当者のFさんと自己紹介をしました。その後館内を見学して、展示している作品を鑑賞しました。作品を見たとき、その世界観をつくるために様々な配置にしたり、展示空間の色を統一したり、作品を生かすために細心の注意を払って来館者を楽しませようとする学芸員さんに、僕はとてもすばらしい仕事であり、見えないところで工夫していてカッコイイの言葉しか出てきませんでした。その後、収蔵庫で作家さんの絵を生で見ることが出来て、作品それぞれに個々の味が出ていて作品のすばらしさに気づくことができました。

今日は濃い1日でしたが、残りの2日間も自分が学びつつ、楽しんでいけたらいいなと思います。

 

4人とも1日お疲れさまでした!

明日からもがんばっていきましょうね。

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F

 

 

13. 11月 2019 · 嗅覚鑑賞の可能性  はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 未分類

現在、当館では企画展「嗅覚のための迷路」(以降、嗅覚展)を開催しております!

ちょうど会期の半分が過ぎたところです。

想定していた入館者数を3週間余りで達し!(ありがたい・・・

嗅覚に関するみなさんのつよい関心を感じています。

嗅覚展が開幕してから「ブログを書かねば!」とずっと思っていたのですが、

会期中、たくさんの気づきがあり、文章化する時間がとれずにいました。

今日はちょっとだけブログにしたいと思います。

本展は、嗅覚アーティストのMaki Ueda(上田麻希)さんの国内美術館での初個展となります。

展示している作品は3点。

①《嗅覚のための迷路 ver. 5》@2階オープン展示室

②《嗅覚のための迷路 ver. 4》@展示室2

③《OLFACTOSCAPE ーローズ香の分解ー》@展示室1

同じ空間に複数の作品を展示すると匂いが混ざってしまうため、

ひとつの空間に1点の作品を展示しています。

当館での展示室は3つなので、展示作品も3点となりました。

(エントランスは3つの作品の匂いがすでに混ざっているため、なかなかの香りかも・・・)

本展では、「嗅覚」で鑑賞していただきます。

美術館で視覚ではない他の感覚を使うことは、あまりないのではないでしょうか?

(たまに、触れるものや音を聴くものもありますが)

最近では、あいちトリエンナーレで展示されていたタニア・ブルゲラさんの

メンソールをつかった作品がありました。

(私も行ったのですが、他の展示室からもメンソールの香りが・・・)

匂いは、快・不快がはっきりするものであり、

かつ自身の意思とは関係なく知覚してしまうもの。

そして現代では、「香害」という言葉もあったり・・・と、

実は、美術館での展示はハードルが高かったりします。

それでも、「展示したい!」と思ったのは、嗅覚鑑賞の面白さを

伝えたかったためです。

私がはじめて「嗅覚っておもしろい!展示したい!」と思ったのは

パリにあった「ル・グラン・ミュゼ・デュ・パルファン(Le Grand Musée du Parfum)」にいったことがきっかけです。

※この博物館は2018年に閉館しており・・・残念。

そこでは、古代の香りを嗅げたり、

香水に使われる単体香料を嗅げたり、

 

 

 

 

 

 

 

禁断の香りとしてアプサントの香りが嗅げたりと、

とにかく嗅ぎまくりました。

こんなにも嗅覚を使ったことはいままでになかったなと思い、

なんともいえない疲労感と満足感。

日本ではこうした経験はなかなかできない(こんなに面白いのに!!!)と思い、

ずっと企画してみたいと温めていました。

秋の企画展の担当が決まり、「ここはもう、やるっきゃない!」と

すぐにUedaさんにオファーをしました。

絵画や彫刻の企画とはちがい、何からすればよいのか

どういった問題点があるのか、果たして実現できるのか。

国内での前例がない分、不安とプレッシャーも・・・。

そんなとき、Uedaさんの「大丈夫ですよ!」に何度救われたことか

本当に感謝しかありません。

開幕してからは、老若男女問わず幅広い方にご来館いただいています。

(本展では、おしゃれカップルが多い・・・!?

そして、嗅覚展の開催が決まったときにまず「やってみたい!」と

思ったのは視覚障がい者の方を対象としたイベントでした。

嗅覚を扱う作品は、障害の有無にかかわらずフラットに鑑賞していただけると思ったためです。

でも、視覚障がい者向けのイベントを今までにしたことがないし、参加したこともなく・・・

そんなとき、あいちトリエンナーレの視覚障がい者向けイベントの

研修から(運よく!)お邪魔させていただくことができ、レクチャーを受けました。

そして、レクチャーを生かして

作品と同じ小瓶の見本を用意したり、

美術館の形が分かるように模型をつくったり・・・

ようやく当館でも実施することができました!

視覚障がい者向けガイドツアーの内容については、また改めて。

【開催中の展覧会】

「嗅覚のための迷路」

会期:2019年10月12日(土)~12月8日(日)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般500円 中学生以下無料

F

 

07. 6月 2019 · 高北幸矢インスタレーション「落花、未終景。」 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

名古屋市千種区にある古川美術館分館爲三郎記念館にて、当館館長・高北幸矢の個展が開催されています。

古川美術館HP

近年、椿、しかも枝から落ちた後の落花をモチーフに作品を制作している高北館長。

花びらが散るのではなく花が丸ごと落ちる落椿は、縁起が悪いと言われることもありますが、枝から離れてもなおさらに大地で美しく咲き誇るその生命力に、惹かれ続けているそうです。

 

今回の個展のタイトルは「落花、未終景。」

造語ですが、「未だ終わらぬ景」という言葉からは、まさに落ちた椿の終わらぬ命を思い起こさせます。

 

《流溜》

一つずつ木彫りでつくられた無数の椿は、さりげなく佇んでいることもあれば、圧倒的な力で迫ってくることもあります。

同じ形のようでいて、一つとして同じ形はなく、一つ一つが人格をもっているようにも思えてきます。

《終景》

生と死は相反するものではなく共存するもの。生があるからこそ死は尊く、死によって生が輝く。

生々流転、諸行無常、輪廻転生。

四季のめぐりの循環を思わせる空間になっていました。

 

会期は7月15日(月・祝)まで。

都会のオアシスのような爲三郎記念館で、静かなひと時をぜひどうぞ(抹茶もおいしい)。

 

O

18. 5月 2019 · 清須ゆかりの作家 岡崎達也展 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 未分類

令和初のブログです

現在、清須市はるひ美術館では、

「清須ゆかりの作家 岡崎達也展 セラミックデザインとクラフト」を開催しています。

フライヤーなど、じっくりみてもらうと・・・

お分かりいただけたでしょうか!!!!?

・・・開館20周年記念

清須市はるひ美術館は、今年で開館20周年となりました!

おめでたい。

これからもよろしくお願いします!!

さて、清須ゆかりの作家シリーズも今回で、第5弾となりました。

本展では、清須に工房をもつセラミックデザイナーの岡崎達也(おかざき・たつや)さんを

ご紹介しています。

ここでは、展覧会の予備知識として、「鋳込み(いこ・み)」について書きたいと思います。

岡崎さんの作品の多くは、鋳込みという技法で作られています。

鋳込みとは、成形型に泥漿(粘土と水と水ガラスを混ぜたもの)を流しいれ、

型に水分を吸水させて、泥漿を固まらせる方法です。

実際に、5月11日(土)に行われた

公開制作「イコミってなあに?」の様子を辿ってみてみましょう

これが、石膏でできた型です。そこに、ムラができないよう、よく混ぜ合わせた泥漿を流し込みます。

 

流したばかりだと、下の写真のように表面に艶が!

ここから、吸水性のある石膏が泥漿の水分を吸っていき、数分後には・・・

表面がマットな感じになっています。

石膏に近いところから水分が吸収されていくので、

まわりから固まってきます。

時間がきたら・・・なかの泥を流し出します。

そして、縁のまわりに固まったものを取り除き、

バリを取るために水を付けたスポンジでならしていきます。

 

時間を置くと、しだいに型と成形物とのあいだに隙間が生まれ、すぽっと外せます。

 

ポットの持ち手も鋳込みで作られています。

ポットにつけるために、持ち手の微調整が続きます。

持ち手をポットにつけるのも、泥漿です。

 

 

隙間ができてしまうと、後々取れてしまうため、

筆をつかって、隙間を埋めていきます。

注ぎ口も特製の道具で調整。

ああ完成するとこうなります!

形ができあがるまでにも、デザインのアイデア出しや設計、

鋳込みでつかう石膏型の制作、試作など、

数多くの段階があります。

わたしたちの周りには、物があふれかえっています。

ですが、ひとつひとつは誰かがデザインしたもの。

もっと物を大事にしないといけないなと改めて考えさせられました。

【開催中の展覧会】

清須ゆかりの作家 岡崎達也展 セラミックデザインとクラフト

会期:2019年4月20日(土)~6月23日(日)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般300円 中学生以下無料

F

 

 

 

16. 2月 2018 · 茅野市美術館との交流会 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

茅野市美術館は、複合施設である茅野市民館のなかにある美術館です。

地元の作家に注目した展覧会企画はもちろん、複合施設であることを生かした取り組みや、地域へのアウトリーチなどチャレンジングな活動をおこなっていて、個人的に気になる美術館ではありました。

http://www.chinoshiminkan.jp/

そんな茅野市美術館から「ボランティアスタッフどうしで交流をしませんか?」というお誘いがあり、「うちでいいのか!?」と思いつつ、せっかくの機会に乗らせていただくことになりました。

茅野市美は毎年サポートメンバーを募集していて、実際にスタッフとして活動をする前にさまざまな講座を設けて美術館について学んでもらうのだそう。

連続講座のなかに「他の美術館を見学しよう」という回があり、そこで見学+ボランティアスタッフとの交流をおこなう機会にしているのだとか。

http://www.chinoshiminkan.jp/museum/2018/0121.html#hirogaru

当館のアートサポーターの存在を知った学芸員さんが声をかけてくださったわけですが、ボランティアスタッフのいる美術館がたくさんあるなかで、当館を選んでくださったのは嬉しい限りです

 

当日は大型バスで30人以上の方がご来館

アーティストシリーズ川邉耕一展を鑑賞後、当館のアートサポーターと交流会をおこないました。

部屋の密度がかなり高くなってしまいました・・・

2館の活動をスライドでご紹介し、その後はそれぞれのテーブルで座談。

茅野チームの人数と熱意に圧倒されていたはるひチームでしたが、座談の時間にはアートを介して集う同士として話に花が咲いていました

・・・

どの美術館も人手が足りているとはいえない状況の昨今、多くの館にボランティアで活動に携わるスタッフがいて、館の特色に合わせてさまざまなサポートをおこなっています。

こまごまとした雑務(だけどやっていただくととても助かる)のような裏方仕事からギャラリートークといったお客様相手の業務まで、その活動内容は幅広く、美術館にとって大きな存在であるといえます。

しかしあくまでもそれらは無償で、自発的におこなっていただいていること。美術館は日々のサポートに甘えるのではなく、感謝の気持ちを忘れず、今後も美術館を応援してもらえるように、努力をしていかなくてはならないのだと思います。

普段、他館のボランティアと関わる機会はまずないなかで、サポーターも学芸員も、貴重な経験をさせていただきました。

後日のサポーター活動日におこなった交流会の振り返りでは、「こういうところは、ここでも生かせるのでは?」という意見も。

今後ますます、アートサポーターがパワーアップしていくことを期待しています

 

O

 

26. 11月 2017 · はるひ絵画トリエンナーレ、もうすぐ応募受付開始です! はコメントを受け付けていません · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ, 未分類

あの一大プロジェクトが3年ぶりに帰ってくる(絶賛てんやわんやで準備中)・・・そう、「トリエンナーレ」。

「トリエンナーレ」といえばアート界隈の方や東海のみなさまにとっては「あ〇ちトリエンナーレ」かもしれませんが、、、

当館にとって「トリエンナーレ」といえば「はるひ絵画トリエンナーレ」!です!!

開館当初から、当館の各事業として開催している全国公募展。

1999年の開館記念でおこなわれた「夢広場はるひ絵画展」からスタートし、おかげさまで今回第9回を迎えることとなりました。

応募受付は12月1日(金)からです。みなさんもう準備は整えられていますでしょうか!?(→詳細はこちら

知らない方、迷っている方のために、トリエンナーレに応募すべき理由を改めてお伝えします。

①確かな実績

8回の開催を重ね、高いレベルを備えた新進作家の登竜門として広く認知されています。応募数は右肩上がりに伸びており、前回の応募数は506名、1021点。厳しい審査をくぐり抜けた受賞者の多くが、現在国内外で活躍しています。

【過去のトリエンナーレ】

【過去の受賞者たち】

②豪華な審査員(←NEW!)

今回より審査員メンバーが大幅に変更することとなりました。これまでの先生方も豪華すぎましたが、今回もすごい。これだけのメンバーが揃うのは、これまで築いてきた実績があるからこそ。

画家、デザイナー、批評家、キュレーターと、多様な視点から幅広い領域をカバーされる方々ばかりです。

【開催概要】スクロールすると審査員のご紹介があります。

③表現技法不問(←NEW!)

はるひ「絵画」トリエンナーレと銘打っていますが、平面であれば基本的になんでもOKです。日本画、洋画、アクリル画、版画、ドローイング、写真、デザイン、染色、刺繍、切り絵、、、

昨今アートの領域横断的な表現が多いことへの対応です。展示するキャパや審査の関係で守っていただきたい点はありますので、細かい規定はご確認くださいね。

【応募規定】

④年齢制限なし

新進作家の発掘といえど、眠っている才能に年齢制限はありません。団体展などの所属も関係なし。真の実力を見出します。

⑤個展のチャンスがある

当館では、トリエンナーレで高い評価を受けた作家を個展形式でご紹介する「アーティストシリーズ」を毎年恒例の企画展として組み込んでいます。実力ある作家を発掘するだけでなく、育成・顕彰することも美術館の役割。受賞作以外の作品を展観することで、鑑賞者はより作家のことを深く知ることができますし、作家にとっても改めて自身の画業を俯瞰できる貴重な機会となっています。

12月20日からの「アーティストシリーズ」では第8回展の入選者のなかからご紹介します。

【生川和美展】 【川邉耕一展】 【野中洋一展】

 


 

この18年の間には本当にいろいろなことがありました(私が関わっているのはここ数年ですが…)。

2年に一度のビエンナーレ形式から3年に一度のトリエンナーレ形式に変わったり、審査員の何名かが交代されたり、スタッフが幾度か入れ替わったり、市町村合併で美術館が春日町立から清須市立になったり。

応募規約など細かいところも微妙に変遷していて、伝統と革新のバランスを保ちながら、その都度時代に即したよい公募展であろうと努力してきたことがわかります。

全国的に文化行政が厳しい風にさらされているなか、いろいろなピンチに遭遇しながらもなんとか継続してこられたのは、美術館に携わってきた多くの方々やトリエンナーレ関係者、そして作品を応募してくださる作家のみなさんや作品を見に来てくださるお客様のおかげであることを実感します。

アーティストシリーズと同時開催の収蔵作品展では、これまでの大賞作品を一堂に展示する予定です。

「現代アートはわからない」「知らない人の作品だから」と言わず、現代に生きる私たちだからこそ、現代にいままさに生きて描いている作家の作品を見るべきなんだと思います。

どうぞお楽しみに!&たくさんのご応募お待ちしております!

 

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29. 10月 2017 · モンデンエミコの刺繍日記 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 未分類

企画展のタイトル「日常を綴る」は、「宮脇綾子展」だけでなく、同時開催の「モンデンエミコの刺繍日記」と共通のコンセプトです。

これまでにもたびたび開催されてきた宮脇綾子展を踏まえ、何か新しい切り口で作品の魅力を伝えられないだろうか?と考えていたとき、モンデンエミコというアーティストの存在が頭に浮かびました。

宮脇綾子とモンデンエミコ。二人に直接的な接点はありませんが、どちらも「手芸」をベースにする作家で、それぞれ異なる基本軸がありながら共通項がある。この二人の作品によって生まれる化学反応を見てみたいと思いました。

 本展のチラシも《刺繍日記》の1点に。

モンデンエミコは封筒や紙袋、チラシやレシートなど身の回りにある紙に刺繍をほどこした作品を《刺繍日記》と題し、約2年間、毎日1点ずつ作り続けています。

もともとは金属彫刻家で、刺繍とは程遠い世界に身を置いていました。

制作環境や家庭環境の変化にともない、作品づくりの手法を模索。たどりついたのが「刺繍」でした。

自分の専門分野である彫刻の世界を離れても、それでもなお表現せずにはいられない、強い欲求。

(睡眠時間を削りながら)毎日制作し続けることはとても大変なことですが、彼女にとっては一方でその苦労が作家としての矜持につながっています。

モンデンさんは、環境の制約を逆手にとり、限られた環境だからこそできることをオリジナルな表現に昇華させ、また「日記」という形をとることで何でもない日常を表現の題材にすることに成功しています。

画家にとっての表現ツールが筆と絵具であるように、モンデンさんの針と糸は彼女のコミュニケーション言語です。針で思考し、糸で発する。

日常とは、私たちの周囲を取り囲む空気のようなものです。当たり前に存在し、人生の99%はそれらで占められていて、改めて意識することなく、漂い流れていく。

しかしそれはポジティブに考えれば、私たちの心の持ちよう次第でどうにでもなる、とても柔軟で可能性に満ちた領域と言えるのかもしれません。

今回展示している宮脇綾子の《色紙日記》や旅行記などを見ていると、ただ毎日の出来事を綴っているという以上に、液状に流れる日常を掬い取り、丁寧に濾して一コマ一コマを結晶化させていくような、そんな印象を受けました。

嬉しいことであっても、悲しいことであっても、日常の小さな出来事を自らの心に留め置き、作品という形にあらわす。宮脇綾子とモンデンエミコの共通点だと思います。

 

当初、展覧会のタイトルを「日々是好日(にちにちこれこうじつ、またはひびこれよきひ)」にしようと考えていました。(抽象的すぎるということで、結局ボツ)

禅語のひとつで、損得や優劣、是非などにとらわれず、良いことがあっても悪いことがあっても一瞬一瞬ただありのままに生きれば、どんな日もかけがえのない一日となる、という意味だそうです。

モンデンさんの《刺繍日記》のなかに、偶然「日日是好日」とテキストが書かれた作品があり、ちょっと運命を感じてしまいました。

 

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