23. 11月 2014 · 第26回館長アートトーク:陶芸家 川喜田半泥子、その多様で豊かな人生。 はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2014年11月22日(土)

 

第26回館長アートトークが行われました。

テーマとなったのは、陶芸家・川喜田半泥子。

愛知県陶磁美術館にて、彼の生涯をとりあげた展覧会も開催中です

HPはこちら→『川喜田半泥子物語』

 

みなさんはこの明治から昭和を生きた実業家/陶芸家をご存知でしょうか?

「半泥子」…“はんでいし”と読ませるこの名前。

本名ではありません。

これは彼の号であり、「半分は泥んこになって夢中になる子どものように、

もう半分は冷静に作品を見つめる大人として」制作に打ち込みたいという姿勢をあらわしています

 

江戸時代から続く津の繊維問屋の長男として生まれた半泥子。

幼いころの半泥子の姿が残っていますが、

当時としては大変めずらしい洋服を着て写真におさまっています

裕福な旧家に生まれ、子どものころから美術品・骨董品にふれて、

ものをみる眼を養っていきました。

とはいえ、半泥子は若いうちから陶芸家としての道を歩んだのではなく、

最初は実業家として華麗なるキャリアをスタートさせます

20代半ばにして百五銀行の頭取に就任。

銀行の規模を拡大し、さらには県議会議員も務めました。

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こちらは半泥子が頭取時代に通勤につかっていた車!

なんと陶磁美術館での展覧会に現物が展示されています。

 

主に陶芸家として名を成した半泥子ですが、

陶芸以外にもさまざまなジャンルで制作を行いました。

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たとえば、こちらの写真。

野に咲くアザミに蝶がとまった一瞬をうつしとったかに見えますが…

その実、美しい構図を求め、活けたアザミに蝶の標本をあてがいながら

じっくりと室内で撮影されたようです。

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鮮やかな色彩で描かれた、壷に活けられた花々

半泥子は油絵もたしなんでおり、近代洋画の大家・藤島武二に師事しました。

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こちらの書も半泥子の手になるもの。

ゆったりとした、堂々たる作風で、作者の人柄が垣間見えるようですね

 

 

さて、いよいよ半泥子の陶芸作品を見てみましょう。

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半泥子は特に茶碗や水指など、茶道にまつわる道具を多く制作しましたが、

それらの作品の「銘」に非常にこだわっています。

茶碗の景色を四季や花鳥風月にみたてた美しい銘があったり、

かと思えば、思わずぷぷっと吹き出してしまいそうなお茶目なネーミングをすることも

たとえば…

古伊賀の名品で「破袋(やぶれぶくろ)」という銘のついた水指があります。

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オリジナルはこちら。

枯れた景色で、破格の美という言葉がふさわしい作品です。

これをモデルに半泥子が作ったのがこれ↓

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なんでしょう…味があるというか何というか…

オリジナルと比べ下半身がぼてっとして垢抜けないものの、愛嬌がある作品です。

この作品に半泥子がつけた銘が、その名も「欲袋」!

こうしたちょっとユーモラスな銘の付け方も半泥子作品の魅力です

 

半泥子の人となりを感じられる作品がスライドに映るたび、

参加者の皆さんもほーっと感心したり、笑ったり。

洒脱で文人という名にふさわしい半泥子の人生を紹介した今回の館長アートトーク。

終始和やかな雰囲気で幕を閉じました。

 

次回の館長アートトークは12月20日(土)16時~17時、

テーマは「日本画家秋野不矩、インドに魅せられて」です。

電話申込:052-401-3881

※前日までにお申込みください。

 

 

【開催中の展覧会】

生誕100年 前衛を駆け抜けた画家 岡田徹展

会期:2014年10月5日(日)―11月30日(日)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般500円、中学生以下無料

 

21. 11月 2014 · 第8回清須アートサポーター はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2014年11月20日(木)

 

当館の運営を支えてくれている、アートサポーターの活動。

まずはいつものように、最近行った展覧会の情報交換から始まりました。

 

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・パラミタミュージアム(三重)の「上村松園・松篁・淳之 三代展」「浅野弥衛展」

・京都国立博物館の「鳥獣戯画展」

・奈良国立博物館の「第66回正倉院展」

 

パラミタミュージアムでは、作品について質問をするとスタッフさんが丁寧に

答えてくれて、とても充実した時間が過ごせたそうです。

京博と奈良博の展覧会は大変な盛況ぶりで、

入るまでの待ち時間が長いので、それを考慮して訪れた方がいいですよとのことです。

 

ひとしきり情報交換をしてお茶を飲んだあと、3つのチームに分かれ、

それぞれが取り組んでいるプロジェクトを進めました。

 

まず「広報チーム」は10月末に、記念すべき「アートサポーター便り」創刊号を出しました

サポーター便り1

開催中の展覧会やイベントの見どころがコンパクトにまとめられています。

これを機に一大決心をして、パソコンと格闘。

試行錯誤して作ってくださった広報チームの皆さん、本当にありがとうございます!

この成果は美術館のほか、隣の清須市立図書館にも置いてありますので、

ぜひ手に取って読んでみてくださいね。

今日は第2号の紙面の企画を話し合っていました。

 

そして「イベント企画チーム」。こちらも初のイベントを企画しました

来月には早速、以下の要領で工作ワークショップを行います。

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12月7日(日)10:00~12:00 「クリスマスソックスをつくろう!」

参加費:100円  申込み:先着15名

場所:清須市はるひ美術館

イベント企画チームのメンバーたちは、何度も試作品を作り、

参加者に満足してもらえるものをと張り切って準備しています。

クリスマスのオーナメントを親子で楽しく作ってみませんか。

興味をもたれた方は、ぜひお気軽にお申込みください。

TEL:052-401-3881(清須市はるひ美術館まで)

 

それから「美術館運営チーム」。今日は天気もよく、美術館の外に繰り出しました。

美術館からJR清洲駅まで歩いて、道中を観察。

 

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というのも、最寄り駅のJR清洲駅から歩いて約20分の道のりが、

美術館を訪れるお客様から、とても分かりづらいとのお声を頂戴することが多く、

少しでもそのストレスを軽減したいと思ったからです。

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自分たちの足で実際に歩き、道中の目印になるものはないか、この地区らしさを感じさせる景観はないか、

歩いていて楽しくなるようなものはないか、みんなで探しました。

 

まんほーる

途中、こんなマンホールを見つけましたよ。

近くを流れる五条川と、桜、そしてこの地区の特産「宮重大根」のキャラクター、

「だいちゃん」があしらわれています。

 

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来月はこの調査を元に、駅から美術館まで歩いてみよう!と思わせる

地図を作っていく予定です。

さあ、今後どんなものができ上がるのかお楽しみに。

 

サポーターの3つのチームはそれぞれに大きな一歩を踏み出しました。

ますます美術館にとって欠かせない存在になっています。

 

 

 

【開催中の展覧会】

生誕100年 前衛を駆け抜けた画家 岡田徹展

会期:2014年10月5日(日)―11月30日(日)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般500円、中学生以下無料

 

 

16. 11月 2014 · 岡田徹展 ギャラリートーク はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

2014年11月16日(日)

 

開催中の岡田徹展。

今日は、担当学芸員によるギャラリートークを行いました。

会期中3回目のギャラリートークで、最も多くのお客様に来ていただきました。

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展示室1では1930年代~60年代の作品を、

展示室2では1970年代~2002年の作品という風に、年代を追って展示しています。

 

ご遺族から2007~2014年の間に当館へ作品をご寄贈いただき、

現在、美術館としては最も多い計21点をコレクションしています。

本展ではこれに加え、現存する岡田の最も古い作品群を所蔵する岐阜県美術館より

初期作品5点をお借りして展示を構成しています。

 

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これらは戦前・戦中の作品。

1930年代、当時最先端の美術運動だったシュルレアリスムが日本にもたらされると、

若き岡田も熱心に研究し、ダリの影響を感じさせる作品を描いています。

 

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戦中、シュルレアリスム弾圧事件が起こり、岡田は特高警察に作品を没収され、

ついに返却されませんでした。

また、同じく美術文化協会に所属していた友人の画家は検挙されてしまいました。

自由な制作が許されないこうした過酷な戦争体験を経て、

岡田は戦後、反権力、反戦をテーマとして描いていくこととなります。

 

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↑「カラスのシリーズ」は岡田の作品の中で最もよく知られた連作です。

岡田にとってカラスは、黄泉の番人であり、人々を導く知恵者でもありました。

カラスとほおずきは、彼岸のイメージを幻想的に彩るモチーフとして共によく登場します。

 

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↑今回ポスターやチラシのメインビジュアルとして使用しているこちらの作品は、

「原爆幻想シリーズ」の一つ。

一見、良く晴れ渡ったさわやかな青空のようですが、よく見ると、

手前では奇岩が空からバラバラと落ちてきているという凄惨な場面です。

奇岩の一つひとつは絶叫する顔であったり、肢体であったり…。

私たち見る者の心をざわつかせ、想像をかきたてる作品です。

 

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↑こちらは88歳の時に描き、絶筆となった《呪縛》。

おそらくは未完ですが、却って制作の過程を垣間見ることが出来る貴重な作品です。

様々なものが行く手を阻もうとするなか、もがき苦しみつつも前進しようとする人間。

生(せい)そのものを描いた作品のように思えます。

 

岡田徹は70年にわたる長い画業において、5~10年くらいの周期で、

描くモチーフや描き方をめまぐるしく変えています。

一方で、生涯一貫して人間の愚かさを主題にし、告発し続けました。

本展は、各時期に手がけたシリーズを通して、

画家としての軌跡をご覧いただける貴重な機会です。

ぜひ一度ご覧になり、闘い続けた一人の画家の生き様に思いを馳せてみませんか。

 

 

 

【開催中の展覧会】

生誕100年 前衛を駆け抜けた画家 岡田徹展

会期:2014年10月5日(日)―11月30日(日)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般500円、中学生以下無料

 

 

 

 

12. 11月 2014 · 第7回清須アートラボ はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2014年11月12日(水)

 

今日は、当館から最も近くの美術館である

稲沢市荻須記念美術館にお邪魔してきました。

お目当ては、現在ここで開催されている特別展「小磯良平展」です。

HPはこちら→小磯良平展

 

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小磯良平(1903-88)は、荻須記念美術館がコレクションの主軸としている

荻須高徳(1901-86)の東京美術学校(現・東京藝術大学)時代の同級生。

ともにフランスに渡り絵を学んでいます。

特別展の小磯良平作品と、常設展の荻須高徳作品を、

比較しながら同時に見られる貴重な機会とあって、

アートラボのメンバーはとても楽しみにしていました。

 

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展示室に入る前に、担当学芸員の河合さんが、小磯良平の画業について

展覧会に出品されている作品を中心にお話くださいました。

 

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小磯良平は、気品のある女性像を得意とした画家です。

1903(明治36)年、モダンな洋館の立ち並ぶ神戸の裕福な家に生まれ、

1922(大正11)年、東京美術学校に入学。

同級生には、荻須のほか、猪熊弦一郎もいました。

きら星のごとき作家たちを輩出した時代だったのですね!

中でも小磯は東京美術学校を首席で卒業しているので、群を抜いていたはず。

 

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まだ若い在学中に、《T嬢の像》が帝展で特選を獲得するという前代未聞の快挙を経て、フランスへ留学。

印象派以降の比較的新しい時代の表現だけでなく、

ヨーロッパの古典的な技法を積極的に学んでいます。

2年後に帰国してからは、安定感のあるピラミッド構図に、

光を受けた物質の質感を巧みに表現する作品を数多く制作しました。

 

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戦後は母校の東京藝術大学で教鞭をとり、

当時学部長だった伊藤廉(いとう・れん)とともに、

初めて版画教室を創設するなど、意欲的に後進の育成に取り組みます。

伊藤廉は名古屋出身の画家で、現在、碧南市藤井達吉現代美術館で

回顧展を開催中ですので、こちらもぜひ訪れてみてください。

HPはこちら→伊藤廉展

 

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小磯良平は自分の考えを押し付けず、個性を伸ばす教育方針の持ち主で、

学生たちにとても慕われたそうです。

都会的でおしゃれな雰囲気をまとった女性像を多く描いた小磯良平と、

人物は描かないものの、町並みによってその存在を感じさせる風景を描いた荻須高徳。

じっくりと二人の画家の軌跡に思いをはせることのできる展覧会でした。

 

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荻須の復元されたアトリエへと続くアプローチを歩きながら、

美術館に隣接する公園を眺めることもできる気持ちのいい美術館です。

まだの方はぜひ、小磯良平展(12月7日まで)にお出かけになってみてください。

 

 

 

 

【開催中の展覧会】

生誕100年 前衛を駆け抜けた画家 岡田徹展

会期:2014年10月5日(日)―11月30日(日)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般500円、中学生以下無料

 

 

 

 

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