20. 2月 2016 · 第41回館長アートトーク:マリー・ローランサン、華やかなマドンナ画家。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 教育普及

2016年2月20日(土)

 

前回に引き続き、今回もエコパリ展に関連した作家がテーマです。

マリー・ローランサンはエコール・ド・パリの芸術家のひとりで、パリ生まれの女性画家

やわらかく丸みをおびた身体にパステルカラーのドレスをまとい、どこか物憂げな表情を浮かべた女性像などで人気を集めています。

現在、碧南市藤井達吉現代美術館でも展覧会が開催されていますね!

(美術館サイト→マリー・ローランサン 愛と色彩のシンフォニー

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ここ最近で最多の参加者です!ローランサン人気、おそるべし

 

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ローランサンはお針子の母に育てられ、名門女学校にも通いますが、画家として生きる道を諦めきれず、母の反対を押し切って前衛芸術の世界に足を踏み入れます

モンマルトルの共同アトリエ「バトー・ラヴォワール(洗濯船)」で交流したのは、ジョルジュ・ブラックやピカソなどキュビストたちでした。

詩人のギヨーム・アポリネールとも出会い、恋人関係に。ローランサンの画業に大きな影響を与えます

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あえて形を単純化・平面化して、稚拙にも思えるような画面に仕上げるのは、素朴派アンリ・ルソーからの影響です。

伝統的な写実絵画からは程遠い表現技法は、当時の前衛芸術家たちの目には新しく魅力的なものとして映ったようです

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やがて作品にはキュビスム的な要素が入り込んできます。が、その難解な理論には興味を示さず、自分らしい表現をつくりあげるうえでの一要素として、表面的に摂取していたといえます

存在感のある建物の輪郭線が画面を分割しながらも、グレーやピンクの淡くくすんだ色調はローランサンらしいやわらかさを感じさせます。

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第一次大戦後に、現代の私たちがイメージする「ローランサンらしい」画風が確立されます。

細く幾何学的だった人物の身体はふっくらと肉感を持ち、黒く鋭い輪郭線は消え、パステルカラーの色面で画面が構成されているのがわかります。

灰色を基調としながらも、ピンクや水色などの割合が増してより明るく華やか、フェミニンな印象に

当時の上流階級のご婦人方はこぞってローランサンに肖像画を注文したのだとか

まさに、女性による、女性のための、女性らしい作品として受け入れられていたのでしょう

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今回は館長独自の視点として、東山魁夷や東郷青児も取り上げられました。

東山魁夷が描いた白馬シリーズや、東郷青児が描いた物憂げな少女は、どことなくローランサンの作品を思わせる独特の美しさによってファンを得ています。

直接的な影響関係というよりは、多くの人々が理屈抜きで「なんだかいいな」「部屋に飾りたいな」と思うような作品の「愛されポイント」のひとつとして、「ローランサン風」という特徴が共通しているということなのかもしれません。

 

変遷の過程がなかなか面白いマリー・ローランサンの作品。エコパリ展では初期と晩年の二作品を展示しています

同じ作家の作品の画風の違いなどもぜひ比較してみてください

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

 

 

14. 2月 2016 · 染め花でつくるバラのコサージュ はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 教育普及

2016年2月14日(日)

 

次々と開催しております、エコパリ展のイベント。

今回はワークショップ「染め花でつくるバラのコサージュ」です。

講師は「染め花horry」の矢野仁代さんです。

イベントを企画するにあたり、展覧会に合ったワークショップを何かできないだろうか~と思い悩んでいたところ、矢野さんの染め花作品を見つけ、これだとひらめきました。

矢野さんはいろいろな染め花作品を制作されていますが、儚げな造形や美しくくすんだ色合いがどこかエコール・ド・パリの作品と通じるところがあって、とても魅力的です

身に着けられるコサージュは、形に残る展覧会の思い出にもなるのではと思い、講師をお願いするに至りました

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染め花というのは、染料で染めた布でつくった植物のこと(つまり、造花です)

本来は布を染める段階から作業が始まりますが、今回は手軽なワークショップということで、矢野さんが1人ずつにキットを準備してきてくださいました。

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何種類かの花びら、がく、葉、飾りのリボンなどのパーツを組み立てていきます

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まずは芯に最初の花びらのかたまりを貼り付けて、つぼみのようなバラの核を作ります。

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次に大輪に咲く花びらのニュアンス付け。5~6枚重なっている花びらの端にボンドを少しつけて、すぐに手のひらでこすり合わせて、あえて「しわ」や「めくれ」を付けます。

そのままでもきれいな花びらですが、この一手間を加えることで華やかさが全然違ってくるんですね

みなさん「ここまでやっていいの…?」とおそるおそるこすっていましたが、思い切ってゴシゴシとしたほうが全体的にきれいなバランスになるようです。

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大きさが少しずつ異なる花びらの束にボリュームが出ました

重なっている花びらはそれぞれ生地の素材も違っていて、それらを組み合わせることで独特の味わいが生まれるんだとか。

すこしだけ濃いピンク色に染められた部分がポイントになっています

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だんだんと花の形が見えてきて・・・

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茎や葉、がく、リボン、ブローチピンも取り付けて、完成です!

手作りとは思えないクオリティ、みなさんすばらしいです一番外側の花びらの位置やしわの付け方などでそれぞれの個性が出ます。色は白とピンクから選んでいただきましたが、どちらも素敵に仕上がりました

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落ち着いた色とデザインなので、どんなお洋服にも合いやすそうです

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10人という少人数制のワークショップで、それぞれのテーブルではわきあいあいと会話も弾ませながら作業を進めている様子がみられました

1時間半ほどで作り上げたコサージュたち、美術館の思い出になれば幸いです

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

 

 

 

 

 

 

07. 2月 2016 · バイオリン・コンサート はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 教育普及

2016年2月7日(日)

 

今日は名古屋出身のバイオリニスト、中川香さんと松本一策さんをお招きして、エコパリ展関連イベントとして「バイオリン・コンサート」を開催しました

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中川さんは武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科を首席で卒業。現在はセントラル愛知交響楽団団員としてご活躍されています。

松本さんは信州大学理学部物理科学科を卒業後、愛知県立芸術大学へ進学。卒業後は自主企画のコンサートをはじめ、レッスン、依頼演奏やアマチュアオーケストラの指導など、後進の育成にも力を入れています。

今回はエコール・ド・パリ展にちなんで、同時代の音楽家やフランスの映画音楽などを中心に、全部で10曲(+アンコール1曲)演奏していただきました

1. ジュ・トゥ・ヴ (サティ)
2. シェルブールの雨傘 (ルグラン)
3. Where is your heart (オーリック)
4. 2台のヴァイオリンのためのソナチネ (オネゲル)
5. 亡き王女のためのパヴァーヌ (ラヴェル)
6. ハバネラ (ビゼー)
7. 月の光 (ドビュッシー)
8. 愛の賛歌 (モノー)
9. 私の心はヴァイオリン (ラパルスリー)
10. ツィガーヌ (ラヴェル)

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先着50名のイベントでしたが、立ち見も出るほど大勢のお客様にお越しいただきました

エコパリの芸術家たちが生きた時代、同じくパリで活動していた音楽家としてよく知られているのはエリック・サティやモーリス・ラヴェル。

少し上の世代にはクロード・ドビュッシーなどがいます。

オネゲル、オーリックは「フランス6人組」と呼ばれる作曲家集団のなかの2人で、彼らはモンパルナスの画家のアトリエで、美術と音楽のコラボレーション企画などもおこなっていたそうです

諸芸術が花開いた20世紀初頭のパリにおいて、絵画や彫刻だけでなく、音楽の世界にも新しい波がもたらされたことがうかがえますし、彼らがアトリエやカフェなどで芸術談義を交わしていたのだろうか・・・と妄想が膨らみます

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ご夫婦でもあるお二人。息ぴったりの演奏で、会場がパリの空気に包まれました

聞きなれた美しい旋律のメロディーもあれば、20世紀らしい個性的な調性の音楽もあり、エコパリ展の雰囲気をより深く味わっていただけるようなラインナップでした

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とくに、超絶技巧を要するラヴェルの「ツィガーヌ」は圧巻の一言!弾き終わるとみなさんの感嘆のため息が洩れました

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音楽家や曲のエピソード、練習の裏話などのトークも交えながらの楽しい1時間となりました

展覧会と合わせて、余韻に浸りながらお帰りいただけたのではないでしょうか?

 

残すところ会期もあと20日ほど。

まだ・・・という方も、もう一度!という方も、ぜひぜひお越しくださいませ。

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

 

 

 

 

 

 

 

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