29. 10月 2017 · モンデンエミコの刺繍日記 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 展覧会, 未分類

企画展のタイトル「日常を綴る」は、「宮脇綾子展」だけでなく、同時開催の「モンデンエミコの刺繍日記」と共通のコンセプトです。

これまでにもたびたび開催されてきた宮脇綾子展を踏まえ、何か新しい切り口で作品の魅力を伝えられないだろうか?と考えていたとき、モンデンエミコというアーティストの存在が頭に浮かびました。

宮脇綾子とモンデンエミコ。二人に直接的な接点はありませんが、どちらも「手芸」をベースにする作家で、それぞれ異なる基本軸がありながら共通項がある。この二人の作品によって生まれる化学反応を見てみたいと思いました。

 本展のチラシも《刺繍日記》の1点に。

モンデンエミコは封筒や紙袋、チラシやレシートなど身の回りにある紙に刺繍をほどこした作品を《刺繍日記》と題し、約2年間、毎日1点ずつ作り続けています。

もともとは金属彫刻家で、刺繍とは程遠い世界に身を置いていました。

制作環境や家庭環境の変化にともない、作品づくりの手法を模索。たどりついたのが「刺繍」でした。

自分の専門分野である彫刻の世界を離れても、それでもなお表現せずにはいられない、強い欲求。

(睡眠時間を削りながら)毎日制作し続けることはとても大変なことですが、彼女にとっては一方でその苦労が作家としての矜持につながっています。

モンデンさんは、環境の制約を逆手にとり、限られた環境だからこそできることをオリジナルな表現に昇華させ、また「日記」という形をとることで何でもない日常を表現の題材にすることに成功しています。

画家にとっての表現ツールが筆と絵具であるように、モンデンさんの針と糸は彼女のコミュニケーション言語です。針で思考し、糸で発する。

日常とは、私たちの周囲を取り囲む空気のようなものです。当たり前に存在し、人生の99%はそれらで占められていて、改めて意識することなく、漂い流れていく。

しかしそれはポジティブに考えれば、私たちの心の持ちよう次第でどうにでもなる、とても柔軟で可能性に満ちた領域と言えるのかもしれません。

今回展示している宮脇綾子の《色紙日記》や旅行記などを見ていると、ただ毎日の出来事を綴っているという以上に、液状に流れる日常を掬い取り、丁寧に濾して一コマ一コマを結晶化させていくような、そんな印象を受けました。

嬉しいことであっても、悲しいことであっても、日常の小さな出来事を自らの心に留め置き、作品という形にあらわす。宮脇綾子とモンデンエミコの共通点だと思います。

 

当初、展覧会のタイトルを「日々是好日(にちにちこれこうじつ、またはひびこれよきひ)」にしようと考えていました。(抽象的すぎるということで、結局ボツ)

禅語のひとつで、損得や優劣、是非などにとらわれず、良いことがあっても悪いことがあっても一瞬一瞬ただありのままに生きれば、どんな日もかけがえのない一日となる、という意味だそうです。

モンデンさんの《刺繍日記》のなかに、偶然「日日是好日」とテキストが書かれた作品があり、ちょっと運命を感じてしまいました。

 

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13. 8月 2017 · 【特別編】学芸員の卵、参上! はコメントを受け付けていません。 · Categories: 展覧会, 教育普及

2017年8月13日(日)

こんにちは!博物館実習生Nです。

博物館実習生とは、言わば学芸員の卵というところです(自分で言っておいて恥ずかしいです)

実習生は学芸員になるため、実際に美術館の現場でその仕事を体験します。

清須市はるひ美術館には7月からおじゃましています。

もしかしたら、もうお会いしている人もいらっしゃるかもしれません…!

今までキッズアートラボのお手伝いやアートサポーターとの交流、

展示の工夫について教えていただく等々、多くの経験をしました。

実習生は事前に学校で講義を受けるのですが、現場に訪れると

学芸員の方がどのようなことを考えながらお仕事をしているのか

伺うことができ、発見ばかりです。

そして、本日は…こちら!

現在開催中の特別展「イラストレーター 安西水丸 ―漂う水平線(ホリゾン)―」展に

合わせて開催されたワークショップ「スノードームをつくろう!」のお手伝いをしました。

それぞれ自分の好きなオブジェを空き瓶にいれて、世界にひとつだけの

キラキラかわいいスノードームを作りました。

こちらのワークショップは人気のため、次回開催はすでに定員に達しております

実はワークショップ開催前に学芸員の方とスノードームの試作品をつくりました。

どうしたらスノードームが上手にできるのか、試行錯誤しました。

当日、参加者の皆さまにレクチャーできるように勉強することも

学芸員の仕事のひとつなのです。

学芸員の仕事のうち、普段私たちが目にする展覧会の企画・運営の仕事はほんの一部にすぎません。

実際は様々な活動をしており、突き詰めると奥が深いです。

私も学芸員になれるように精進します!

 

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06. 8月 2017 · 安西水丸展 関連トークイベント はコメントを受け付けていません。 · Categories: 展覧会

2017年8月6日(日)

現在開催中「イラストレーター安西水丸 ―漂う水平線(ホリゾン)―」展、

関連トークイベント「知っておきたい!安西水丸さんのデザインを読み解くポイント」を開催

ゲストには、アートディレクターの水口克夫さんをお呼びして、

水丸さんのデザインのみどころを話していただきました。

水丸さんのデザインのお話にはいるまえに…

\\ デザインって、なんですか?//

さて、みなさん。

デザインという言葉は、いまや聞き馴染みのある言葉ですが、

説明できますか?

いざ、「デザインって、なに?」と聞かれると、意外に説明が難しいのではないでしょうか。

社会のあちこちにある課題(たとえば、若者の都会への流出による過疎化など)を解決し、

日常を豊かにするツールとしてデザインがあります。2016年のグッドデザイン賞金賞を

受賞したヤンマーの「トラクター(YT3シリーズ)」は、見た目のクールさだけではなく、

作業性にも配慮。若者も使いたくなるようなビジュアルで、農業への誇りを次世代の農業者に訴えかけています。

見た目の良さや、使いやすさだけではなく、社会の問題にもアプローチをするのがデザイン。深い。

水口さんのお話に、参加者のかたがたも学芸員も夢中でした。

そして、デザインについて学んだところで、水丸さんのデザインについてです

今回は、6つのテーマ(キャンバス、構図、モチーフ、色、文字、顔)に注目です。

教わったことを簡単にですが、以下にまとめてみます。

水丸展をご観覧されるときのご参考となれば幸いです

キャンバスについて

ーサイズを意識したデザインー

安西水丸さんの手がけた装丁をみてみると、

単行本と文庫本とでは表紙がガラッと変わっています。

本展でも展示している『村上朝日堂』は、その一例です。

中身は同じなのに、カバーが違う…

単行本の表紙を文庫本用に縮小したらいいのに…

なーんて思ってしまいそうですが、

大きさが違えば、絵の見え方も変わってきます。

それぞれのサイズに合わせてたイラストレーションを描くこと。

イラストレーターとしての水丸さんの誇りが感じられます。

構図について

ー全部は見せないずるさー

本展のメイン作品《スモモ》でもそうなのですが、

 

 

 

 

 

 

《スモモ》シルクスクリーン、1991年 ©Kishida Masumi

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右端の本のようにモチーフを全部みせず、途中で切り取る水丸さん。

皆川博子さんの『恋紅』(新潮文庫、1989年)のように

女性の顔が全部描かれず、特に目元がわからない…

表紙を見た人に「どんな女性なの?」と想像させる巧みな切り取り方です。

モチーフについて

ー描かれているモチーフは水丸さんのお気に入りたちー

水丸さんの好きなもの…スノードーム

多くの作品にモチーフとして登場しています。

たとえば、村上春樹さんの『夜のくもざる』(平凡社、1995年)や

山本益博さんの『食卓のプラネタリウム』(講談社、1984年)など

本展にもスノードームが描かれているものが多く、

「あそこにも!ここにも!」と探してもらうと楽しいですよ。

そして、もうひとつの好きなもの、野球についても取り上げてもらいました。

共通して言えるのは、同じモチーフであっても描き方が

何パターンもあってすごいということ。描き分けに注目です!

について

ー不自由の中の自由 制限の中の無限ー

(水口さんが述べられたこの言葉、本当にその通りだと思いました)

独特な配色も、水丸さんの魅力。

現代では、背景の色や配色をパソコンでいろいろ変えることはできますが、

水丸さんは、パントーンを使い、決められた色数の中で制作していました。

色の数が限定されているからこそ、さまざまな色の組み合わせを考えられる、

偶然性が生まれ、作品に独特の雰囲気が生まれる…

まさに、制限の中の無限。

田辺聖子さんの『女のおっさん箴言集』(PHP研究所、2003年)の、

背景のうすピンク色と黒色の配色は、毒を感じさせます。

 

文字について

ー書体は声質ー

書体が変わるとイメージも変化するもの。

イラストレーションだけで魅せるのではなく、

同時に文字でも魅了する水丸さん。

村上春樹さんの『螢・納屋を焼く・その他の短編』(新潮社、1984年)の

タイトルは手書きになっています(最終的に採用したタイトル文字は、

初めに電話で依頼を聞いたときにその場で書いたものだったようです!なんと驚き!)

タイトルの文字で本の世界観を表現するのは至難の業。

本展にも手書きタイトルのものがいくつか展示されているので、

見比べていただくと面白いかと思います。

について

ー「あぁ~、何かみたことあるような顔」ー

本の「顔」をつくるのが上手だった水丸さん。

水丸さんが描いた『普通の人』(宝島社、1982年)と『平成版・普通の人』(南風社、1993年)の

表紙に描かれている男性の顔。昭和の方は、しかめっ面でセンター分け、刈り上げた髪型…

平成の方は、両手にファーストフードをもち、ななめに分けた前髪、どこか緩さを感じさせます。

昭和と平成をうまく表現しています。

みるだけで、「あぁ!わかるわかる!」となってしまう水丸さんの描くイラストレーション。

「普通」をうまく表現できるのは、難しいことです(鋭い観察眼をお持ちだったことがわかります)

本展にも、たくさんの顔が描かれた「JALプランナー」のポスター作品が展示してあります。

その中には、なんと嵐山光三郎さんが隠れています!是非、探してみてください。

【ちょっとひと息学芸員のひとりごと】

デスクワークが多い日、「仕事の気分転換に…」と展示室に足を運ぶたび、

ほのぼのとした空間に心が休まります。

水丸さんの人柄が、この居心地のよい空間を生み出してくれているのだなと思うのです

(「うまく展示できたな」とかちょっとは思ったりもしますが笑)

カッターでパントーンを切った跡(ちょっとした引っ掛かり)など

作業の痕跡が伝わってくるのは原画ならでは。水丸さんを身近に感じられます。

とくに、北川 悦吏子さんの『ロングバケーション』(角川書店、1996年)の

原画はおすすめです。貝殻の白い部分は切り抜きになっており、

作業の細かさを感じさせます。是非、直接ご自身の目でみてください。

 

お し ま い .

 

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13. 6月 2017 · 宮脇綾子の理知とあたたかさ。 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 展覧会

今秋に開催予定の「宮脇綾子展」の調査のため、富山県の砺波市美術館に行ってきました。

 

(建物が大きい・・・!)

宮脇綾子(1905-1995)は、古布の端切れなどを使ったアプリケ作品で知られ、名古屋を中心に活躍した作家です。

「手仕事」として表現されたアプリケ作品の題材は、庭に咲いた草花や畑でとれた野菜などとても身近なものばかり。

日常のささやかな幸福を綴るように制作された作品たちは、どれも心がほっこりするあたたかさにあふれていて、幸せとは心の豊かさから生まれるのだなぁということをひしひしと感じました。

色や形の組み合わせの妙はセンスの塊で、子どものあそびのような無邪気さがありながら、一方でモデルとなった対象や素材の布選びに対して鋭い観察眼が感じられます。

身の回りの人たちや自然への限りない愛情、そして妥協を許さない厳しさも垣間見たような気がしました。

本展は当館での企画展とは別物ですが、新収蔵品を中心に、当館なりのアプローチで綾子さんの作品の魅力をお伝えできたらと考えています。どうぞお楽しみに!

 

砺波といえば、チューリップ。

残念ながら見ごろは過ぎていましたが、道中いたるところで隠れチューリップを発見

 

O

 

 

 

02. 5月 2017 · 驚きの造形と愉快な作家と。【黒蕨壮彫刻展】 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 展覧会

新年度になりました。といいつつもうゴールデンウィーク(去年も同じことを言っている気がする…)!

久しぶりの更新です。

現在開催中展覧会はこちら。

黒蕨壮彫刻展 木によるリアリティと情念

 

「清須ゆかりの作家」シリーズの第4弾となります。

清須市にある医王寺さんというお寺に、黒蕨さんが仏像と飛天像を奉納しているというご縁で、展覧会を開催する運びとなりました。

愛知在住歴は長いですが、鹿児島生まれの九州男児。豪放磊落な薩摩隼人という言葉がぴったりの、おおらかな空気をまとった作家です。

彼の作品の特徴は、なんといってもまずは木彫とは思えないその造形。

ポスターやチラシを見て、「なんだこれは?」とぎょっとした方も多いのではないのでしょうか。

 

黒蕨さんの作品には人間のようなものが彫られていますが、身体の一部であったり、どこかが欠けていたり、「抜け殻」(つまり衣服などの身体の「入れ物」)だったりと、いびつでちょっと不気味です。

ほぼすべての作品に共通しているのは顔がないこと。感情を表情から読み取ることに慣れている私たちですが、顔がない身体(のようなもの)からはかえって強烈な情念を感じます。

展覧会のタイトルにもあるように、黒蕨さんはリアリティのある造形を通して、人間の情念を表現しています。

喜び、悲しみ、怒り、苦しみ、とまどい、あこがれ、、などなど、何かしらの「情」が、つやつやとした木肌からにじみ出てくる。

そこにちょっとしたユーモアが加味されることで、彫刻の重厚なイメージから良い意味で脱しています。

黒蕨さんが「とにかく驚いてほしい、なんじゃこりゃ!と思ってほしい」と話すように、難しいことを考えずにただただ面白い!と思える作品です。

それと同時に、その裏にある確かな技術と、人間の細やかな感情を読み取る敏感な感受性も、感じていただければと思います。

ご来館されたことのある方はご存知の通り、当館はとっても小さな美術館です。

限られたスペースにどのように配置していくかということに関しては絵画とは勝手が違い少々苦戦しましたが、

作家と試行錯誤しながら空間を作り上げました。

(お客様の動線や鑑賞ポイントが想定とは違っていたりして、様子を見ながら会期中にも配置や角度を変えたりしています。)

   

会期中は不定期に在館されているので、わはは!と豪快な笑い声が聞こえたらぜひお話してみてください。

5月4日(木・祝)14:00からはアーティストトークも開催します。

 

 

14. 2月 2017 · アーティストシリーズVol.83 北籔和展 はコメントを受け付けていません。 · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ, 展覧会

2017年2月11日(土)

アーティストシリーズVol.83北籔和展が先週から開催中です。

北籔さんは、2015年に開催された第8回はるひ絵画トリエンナーレで

優秀賞を受賞された方です。

あああああ    《のしてんてん 道》

本展のいちばんの見どころは、はるひ美術館オーダーメイドの作品といっても過言ではない

《ナウイズムの夢》。

この作品は、91cmの正方形のカンヴァスが44枚、194cm×97cmのカンヴァスが2枚の

計46枚の作品で構成されています。長さはなんと約22m

4枚1組で《現世》《浄土》《五次元》を描き続け、はるひ美術館に展示することが決まってからは、今回のような組作品になるように追加で制作されたようです。

あ     ああ// 長いっーーー!!! \\

当館特有の、ゆるやかに湾曲した細長い展示室。

今回は、このカーブが良い味を出してくれ、北籔さんの世界観をうまく

引き出しています。

 

ああ

そして本日は、アーティストトーク。

北籔さんを目当てに大阪、和歌山、東京とさまざまなところから足を運んでくださいました。

 

今回のアーティストトークのテーマは、北籔さんが提唱されている「ナウイズム」や「五次元」について。四次元(過去、現在、未来などの時間の流れ)までは、よく耳にするのではないでしょうか?

北籔さんの「五次元」は何を示しているのか…それは、「スケール」です。

人のからだはたくさんの素粒子(ちいさな物質)があつまってできています。

そして、どんなちいさな物質でもその物体と物体のあいだには空間が存在します。

その空間は、宇宙にある空間と同じもの。自分自身も空間そのものと言えるのでは?

というお話です。

宇宙を彷彿させる一方で、自分の体内をも思わせます。

これらの作品を北籔さんはシャープペンシルで描いています。

わたしたちの生活と身近な道具、シャープペンシルで描いたとは

思えないほどのリアリティ。

 

そして、モチーフのまわりにある暗闇。

その闇がどこまで続いているのかわかりません…

北籔さんの作品には、無限の空間が存在していると思わずにはいられません。

闇と光。そして、宇宙。

ぜひ、北籔ワールドを体験してみませんか?

北籔和展は来週末2月26日までです。お待ちしております。

◆◇◆学芸員雑談◆◇◆

紙面上で考えた展示プランで「うまくいきそう!」と思っても、

実際に作品を空間に置いていくと「あれ?違うな…」となることが多いです。

今回は思いのほか、湾曲した壁が作品にあう空間をうまく作ってくれました。

作品を配置することで、同じ空間なのに展覧会ごとに違った空気が流れ始める…

「面白いな」と毎回思ってしまいますし、くせになりますね。

 

開催中の展覧会】

「清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.83 北籔和展」

会期:2017年2月8日(水)~ 2017年2月26日(日)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般200円 中学生以下無料

21. 1月 2017 · アーティストシリーズ Vol. 82 原勉展 はコメントを受け付けていません。 · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ, 展覧会

2017年1月21日(土)

アーティストシリーズVol.82原勉展が、今週からはじまりました

原さんは、2015年に開催された第8回はるひ絵画トリエンナーレで優秀賞を受賞されました

↓こちらが受賞作品《ひとのいれもの》

白地が美しく、モチーフは繊細に描かれています。

実は、下地にはレース模様がほどこされているのです(写真で伝えきれないのが悔しい!!)。

このような表現方法で描き始めたのは40代になってからとのこと。

自分の思ったことをどのような技法で表現すればいいのか、

描き続ければ自分にぴったりの表現方法がみつかるのではないかと

あきらめずに模索されていたようです。

そして、本日はアーティストトークでした。みなさん熱心に耳を傾けます

熱心にメモを取られる方も・・・

レース模様の下地の作り方についての説明もありました。

下地がどのようなものなのか触れるようにとサンプルを作ってきてくださりました

わたしもスリスリと・・・

レースのところはすこしだけデコボコでしたが、手触りは良かったです

原さんの制作のもとになっているのは、基本的には負の感情。

生活していく上で生まれた心のモヤモヤ、それを網で掬い取り、自分の心を浄化する。

「墓参りをしているのに近い」と原さんはおっしゃっていました。

《やわらかな迷路》は、見えているのになかなかたどり着けない、

蜃気楼のような印象を与えます。もどかしささえ感じさせます。

おぼろげでやわらかそうなのに硬度も同時に兼ね備え、行く手を阻んでいるかのよう。

それはまるで、人生に立ちはだかる壁や障害物。

こうした負の感情も 心のひだ として自分の一部と化していく。

嬉しいことも悲しいこともつらいことも、感じているのは自分自身。

負の感情から目を背けるのではなく、自分といういれものの中にちゃんとしまうことの大切さを教えられた気がします。

そして、その先には・・・

《bloom》

いまある幸せを思って描かれた作品。

未来への希望を感じさせます。

原さんもおっしゃっていた通り、

写真では伝えきれないおぼろげな表現。それはカメラの技術を超えた

人の目でしか捉えきれないニュアンスがあるからです。

是非とも、ご自身の目でじっくりとご覧ください。

原勉展は、2月4日(土)までです。

心よりお待ちしております。

 

【開催中の展覧会】

「清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.82 原勉展」

会期:2017年1月17日(火)~2017年2月4日(土)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般200円 中学生以下無料

 

 

 

 

04. 1月 2017 · アーティストシリーズ Vol.81 平野えり展 はコメントを受け付けていません。 · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ, 展覧会

2017年1月4日(水)

あけましておめでとうございます

本年も芸術の魅力をたくさん発信できればと思います。

現在、アーティストシリーズ1人目、平野えりさんの展覧会を開催しています。

平野えりさんは第8回清須市はるひ絵画トリエンナーレで準大賞を受賞された方です

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展覧会のサブタイトルは「今この瞬間を刻む」。

一本一本、線を描くその瞬間を生きている…

同じ時は存在しないということ、今の自分はこれまで蓄積された

多くの瞬間によってできていることを彷彿させる作品です。

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画面から溢れ出すエネルギーを感じます。

平野さんは福祉施設や病院に勤務する中で、人の尊厳や命を身近に感じ、

それらをテーマとし制作されています。何度も引かれている線は、平野さんが

生きてきた証そのものなのです。

作品を構成する力強く集積した線のほとんどは鉛筆で描かれています

そして、なんと

展示作品《My DiaryⅧ 2016》は会期中にも線を加えられています。

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濃さの違う鉛筆を持ち、「ガリガリガリッ」と

力を入れて描いている平野さん。会期中も変化してゆく作品に

目が離せません

また、12月23日(金・祝)にはアーティストトークがありました

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モノクロの作品が多いですが、鮮やかな寒色の作品も

自分の好きな色で描くと落ち着くそうです

制作中は「勝手に手が動く」と述べられていましたが、

オートマティックに「無意識」に描いたり、線の重なりや面を強く「意識」して描いたり、

主観性と客観性を考えて、作品によって異なる姿勢で制作されています。

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アーティストトークの途中で制作する平野さんに、

みなさん目が釘づけ

作品が完成してゆく姿を生で見るのは面白いですね。

そして、作品タイトルの《My Diary》や《being》には、言葉にはできない

日々の思いを作品として描いた「日記(Diary)」そして、今もなおここに「存在し続ける(being)」

自分の証といった意味が込められているそうです。

作品が展示されている「今この瞬間」もまた、日記の1ページ。

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「作品が生きている」ように見えるほど、画面をうごめく線の力強さを

是非、実際に感じてください

会期は1月13日(金)までです。

心よりお待ちしております。

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【開催中の展覧会】

「清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.81 平野えり展」

会期:2016年12月20日(火)~2017年1月13日(金)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般200円 中学生以下無料

19. 11月 2016 · 榊原澄人 永遠の変身譚(3) はコメントを受け付けていません。 · Categories: 展覧会

2016年11月19日(土)

 

当館には、円弧を描く細長い展示室のほかに、もうひとつ展示室があります。

それが、この階段の下の黒いカーテンの向こう。

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ここは、ただ1作品《Solitarium》をじっくり鑑賞していただくスペースとしました。

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この展示室もまた、曲面が多用された作りになっています。

そして、写真ではわかりづらいかもしれませんが、奥に行くほど狭まっており、突き当りには円柱があります。

こうした建物の構造に、可動式の四角い展示壁面と細長い袖板2枚とを組み合わせて、スクリーンとしました。

全ての壁は斜めに配置してあるので奥行きがあり、まだこの先の空間があるのかと錯覚させます。

 

一瞬「どうなっているんだろう?」と思わせるこの展示方法は、実は偶然の産物です。

当初の構想では、円柱は隠し、お客様に正対するフラットな壁面の設置を予定していました。

が、展示作業の段階で、たまたま壁面をバラバラに仮置きし、《Solitarium》の映像調整をしていたところ、

榊原さんが「あ、この感じ、いいな。」とポツリ。

それでこの実験的な上映方法が決まったのでした。

 

榊原さんは過去にも立体的なスクリーンへの上映を試みています。

まるで洞窟の中のような雰囲気を好んで採用し、

なおかつ鑑賞者が絵の中に入る、つまり鑑賞者の影が映像にかかるのも歓迎しています。

ですから、みなさんご来館の際には遠慮なくこの部屋を歩き回って、作品を体感してくださいね。

 

《Solitarium》は、反時計まわりに全体がゆっくりと回転する作品です。

回転の中心(スクリーンの上端中央)にはギラギラときらめく太陽があり、

そのまわりを巨木、バクテリア、怪物、鳥、人間、ビル群など、ありとあらゆる物がうごめいています。

上述の通り一般的なスクリーンではないので、絵は時にねじ曲がり、時に引き伸ばされ、

遠近感覚が狂い、整合性のない摩訶不思議な世界となっています。

でもこれこそ、異様なエネルギーを放出する映像世界にぴったり。

 

今この時、清須市はるひ美術館でしか見ることのできない映像インスタレーションです。

 

 

 

 

【開催中の展覧会】

「榊原澄人 永遠の変身譚(メタモルフォーシス)」

会期:2016年10月4日(火)~12月11日(日)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日

観覧料:一般500円 中学生以下無料

 

 

 

 

06. 11月 2016 · 榊原澄人 永遠の変身譚(2) はコメントを受け付けていません。 · Categories: 展覧会

2016年11月6日(日)

 

今回の展覧会の見どころは、何といっても当館の細長い展示室をいかした作品の上映です。

幅5メートル、長さ約28メートルのきわめて細長く、しかも湾曲したこの展示室は、

学芸員泣かせと言ってもよいイレギュラーな形状で、普段私たちは、

どうしたら作品が映える展示にできるか、お客様の動線をいかにスムーズにつくるか、展示の度に頭を悩ませています。

 

ところが今回は、この細長く湾曲した壁がとても役に立ちました。

絵巻状に長い作品《É in Motion No.2》を、横幅23メートルの大スクリーンでご覧いただくことができます。

映像にすっぽりと包まれた、圧倒的な鑑賞体験。

dsc_3015

《É in Motion No.2》は《浮楼》の手法を継承・発展させた作品で、

光と闇、生と死、言葉と沈黙、戦争と平和、創造と破壊。。。

つまり世界のすべてが詰まった壮大な叙事詩です。

 

作品のフォーマットからして、またしても型破りなアニメーション。

人が絵巻を見るとき右から左に繰り進めるように、映像もまた全体がゆっくりと動いていきます。

止まって見ていても、まるで歩いているかのように、世界が次々と現れては消えていく様子は、

私たちの歴史を走馬灯のように眺めている感覚と言ったらいいでしょうか。

この作品と対峙していると、人間の来し方行く末についての瞑想に誘われていきます。

 

榊原澄人さんは《É in Motion No.2》を制作する際、絵巻物に着想を得ましたが、

本作が絵巻物と違うのは、始まりも終わりもないということ。そして、エンドレスにループし続けるということ。

《É in Motion No.2》は、円環状の輪になったスクリーンへの上映を念頭に作られた作品なのです。

 

ご来館のお客様にお配りしている作品リストに《É in Motion No.2》の全貌が載せてあります。

dsc_3212_mini←作品リスト

なので、これを輪っかにしてみていただければ、左右の端っこがつながり、

円環状に構想された作品だというのがお分かりいただけると思います。

dsc_3229_mini

 

作品リスト自体も、榊原さんが絵巻に着想を得て《É in Motion No.2》を制作したことにちなみ、

巻物を模したデザインとしました。巻いた状態で自立します。

dsc_3220_mini

 

当館では円環状のスクリーンはご用意できませんでしたが、《É in Motion No.2》のためにプロジェクター5台を連結し、

弧を描く壁面いっぱいに美しい絵が流れていく、という展示空間ができました。

彼の世界観は十分にお楽しみいただけます。

 

なお、本展の展示プランは、榊原さんご本人によるものです。

まだ実際に美術館にお越しいただいていない打ち合わせの段階で、展示室の図面をお見せしたところ、

すぐさま、この場所にこの作品をこういう形で上映したらどうかと、イラストで描いてくださいました。

その時の構想は、ほぼ実現されています。改めて、榊原さんの的確な判断に脱帽です。

 

 

 

 

 

【開催中の展覧会】

「榊原澄人 永遠の変身譚(メタモルフォーシス)」

会期:2016年10月4日(火)~12月11日(日)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日

観覧料:一般500円 中学生以下無料