05. 1月 2020 · 想いを伝えるために はコメントを受け付けていません。 · Categories: その他

12月の半ばに、全国美術館会議の学芸員研修会に参加しました。

毎年異なるテーマが設定されるこの研修会。今回は「大規模災害被災地における学芸員の役割を知る」というお題でした。

会場は東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市にある、リアス・アーク美術館

これまでに何度も津波を経験している土地の在りようを、歴史的・文化的に伝えるため、震災直後から膨大な記録による調査・研究をおこない、常設展示として展開している館です。

(美術館の取り組みについは、学芸員の山内宏泰さんが詳しく語られていますのでぜひ。https://artscape.jp/report/curator/10156245_1634.html

防災や歴史教育の観点から災害が扱われることは一般的ですが、美術館として災害をどのように伝えていくのか、学芸員として何ができるのかということはとても難しい問題で、学芸員個人がスキルを磨けばどうにかなるというものではありません。

実際、震災当時は美術業界やアート界隈が自粛ムードになり、「こんな大変なときに芸術なんて」という空気があったように思います。

しかしそれでも、何年か経った後に必要になるのは、記録であり記憶です。「〇〇年にこんなことがあった」という客観的事実だけでなく、「このときに、人が何に対しどのように向き合い、感じ、考えたのか」というとてもナイーブなことを可視化し、表現し、共有することが人間には必要なのだということを登壇者の皆さんが口々におっしゃっていました(登壇者の立場は研究者、学芸員、自治体職員とそれぞれですが、皆さん自身、自宅が流されるなど被災者でもあります)。

過去・現在を含め、人の生きた証としての文化を守り未来へ伝えていくことがミュージアムの役割であるとすれば、私たち学芸員こそが「伝承」に際しできることがあるのではないかと考えさせられた、とても濃い研修会でした。

 

2019年、震災の記憶を伝えるための新たな施設「気仙沼市 東日本大震災遺構・伝承館」が新たにオープンしました。

海岸のすぐそばに位置し4階まで津波が到達した気仙沼向洋高校の旧校舎を遺構としてそのまま残し、映像や写真で生々しく震災の様子を伝える伝承館は、市の依頼で計画段階からリアス・アーク美術館が協力して、学芸員のマインドが全面的に生かされたそうです。

知識や数字で学ぶだけでなく、心で感じてほしい、体感してほしいという意向から、被災物が物語る強さや被災者の思いがダイレクトに伝わる施設になっています。

震災遺構はまさに衝撃的。

教室のなかに丸太や車が流れ込んできています。

津波によって流れてきた別の建物が外壁にぶつかってえぐれたんだそう。金属の手すりのポールが針金のようにぐにゃぐにゃ。

 こんな目を疑うような光景も。

震災直後は地域全体がこんな感じだったんですね・・・

 

災害後にもっとも危惧されるのは風化。伝承にあたり必要になるのは、想像力、表現力、感性、主観といった、アートにも通じるキーワードです。きれいごとにも思われるかもしれませんが、物事を他人事ではなく自分事として考えるには、結局「想い」や「心」に行き着くんだなと感じました。

遺構の屋上から見た穏やかな海と、早朝運よく見られた気嵐(けあらし)。

 

 

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