『うずまきは語る―迷宮への求心性』千田稔(福武書店、1991年)
新聞の新刊紹介で本著を購入した頃は、私の作品はすべて抽象で創作意欲の絶頂期にあった。絶頂期というのは作品のレベルや評価の問題ではなく、抽象表現がおもしろくて仕方なかったのである。そしてその抽象図像は、円錐形、紡錘形、円、楕円、円環、スパイラルに発していた。なぜそのような形に引き寄せられるのか、言葉にすれば「命の源、宇宙の運動」と位置づけていた。しかしそのような自己陶酔イメージでは自他ともに高い説得力の持つものではなかった。
そんなとき本著と出会った。うずまき、スパイラル、円運動について、ありとあらゆる観点から紐解いている。宗教あるいは信仰、天文、地勢、民族、生物、史跡と歴史、都市と集落、心理学、そして芸術。芸術において取り上げられているのは、ゴッホ、ダビンチ、曼荼羅(宗教)、縄文土器、銅鐸、そして舞踊。
美術を理解するために美術の本を読む、というのは直接的な動機であって、否定されることではないが、どうしても浅く狭い。まして作家が見識を広めるべきはそこにはない。そこにあるのは全て先駆者たちの功績である。「何のために描くのか、創るのか」を考えたとき、美術から離れる必要がある。離れて何を学ぶのか、自我との向き合いしかない。それは大きな苦しみである。
そんなときこの本に出会え、自分の考えていることに客観的分析を加えることができた。著者は地理学者、地理学から離れ渦に巻き込まれた著者の発想に感服した。

