『鏡・空間・イマージュ』宮川淳(美術出版社、1967年)
1967年の出版といえばもう半世紀以上も前である。そのころ美術出版社は『美術手帖』の売上を伸ばし、本著のシリーズ『美術選書』も次々出版される人気であった。いわゆる前衛美術が血気盛んな頃である。
本著を学生時代に読んだ。本屋で手に取った段階で「難しそうやなぁ」という印象を持ちながら、当時の私にとって創作の突破口になるのではないかという思いで買ったことを憶えている。『鏡・空間・イマージュ」はいかにも魅力的な著名である。一見具象的でありながらも抽象的である。そもそも鏡という実態は単なる物体であるが、美術において単にものを映す道具ではない。空間はどのような空間を指すのか、小さな名刺にさえ活きる空間から、インテリア空間、都市空間、はては宇宙空間まで、更には人間空間といったものまで、果たしてそれは具象的なものなのか。イマージュ(イメージではないがイメージを含んでいる)、創作には極めて必要なものであるが、必ずしも対象物がイマージュを持たなければならないものではない。といった3つのキーワードである。
著者は本著をエッセイという認識を持っており、評論という位置づけではない。したがって内容はテーマを自由に飛び交い、読者を惑わし楽しませる。巻末に本文で取り上げられた美術作品が十数点モノクロームで紹介されているが、文学にも精通している著者は、本著でかなりの内容量で文学を取り上げている。
読み返してみると、半世紀前に読んで側線を引いたところが今も再度引きたくなる。つまり成長していない自分がいる。例えば「サルトルがいうように『距離をつくり出したのは人間であり、距離というものが意味を持つのは人間的空間においてのみ』」そのとおりだが、それを今も自分の創作に活かせない以上、私の成長はないのである。

