『アメリカを変えた日本人 国吉康雄、イサム・ノグチ、オノ・ヨーコ』久我なつみ(朝日新聞出版、2011年)
3人のアーティストの名前が並び、その3人の形容が「アメリカを変えた日本人」という大胆なものになっている。美術に関心の高い人なら、この書名に異論はないだろう。私も同感である。ただしこの3人はまるで作品も活動も異なるので、それぞれ興味深く書かれ羅列されているのであろうと想像した。第1章国吉康雄、第2章イサム・ノグチ、第3章オノ・ヨーコ、そして第4章として俯瞰した論考が示される。
ところが内容は予想をかなり外していた。裏表紙に内容紹介で示されているが、
「太平洋戦争勃発前にアメリカに渡り、戦禍にまきこまれた3人のアーティストがいた」というストーリーなのだ。第1章から第8章、そして終章という構成の中で、国吉康雄、イサム・ノグチ、オノ・ヨーコの順でそれぞれの人生と作家活動が紹介されていく中で、他の2人が有機的に登場する。そのキーワードは戦禍であり、異国で活躍することの困惑、厳しさである。第7章から第8章にかけて著者は、カリフォルニア州、シエラネバダという山脈の麓にある日系アメリカ人強制収容所を訪れる。3人のアーティストから離れるようであって、核ともなる施設である。著者が最も書きたかったのはこの強制収容所ではないかという気さえする。
終章は、著者がサンフランシスコ近代美術館で開催されているオノ・ヨーコの「イエス展」を訪問し、レポートする。「イエス展」を紹介しながら、異国でその国の文化に大きな影響を与えるということのとてつもない3人の苦悩とエネルギーに言及している。私たち多くの日本人にとって、国籍というものが生涯に渡って人生に大きく影響することは先ずないが、異国で、世界で活躍するということは国籍の問題抜きにはありえないのである。