8月20日より古川美術館で「加藤金一郎と丹羽和子—絵は人生—」同分館為三郎記念館で「磯田皓と12人の作家たち」が始まった。2展とも見応えのある素晴らしい展覧会となっている。
「加藤金一郎と丹羽和子—絵は人生—」加藤と丹羽は夫婦である。私は金一郎先生にも和子先生にもそれぞれ大変親しくさせていただいた。油絵を描かないので弟子としてではなく、友人の様にお付き合いしていただいた。そこで知ったことは、こういう画家夫婦というのがあるのかということである。同じ画業の道を夫婦で歩むことは、イバラの道ともなる。ライバルと暮らす訳である。優れた作品には嫉妬が、駄作には罵倒がある。それが真実のライバルである。夫婦としての愛がそれを包み込むほど作家という生きものは生易しいものではない。愛と憎が泥沼の様なエネルギーとなって魅力的な作品が生まれている。
「磯田皓と12人の作家たち」は、愛知県立芸術大学デザイン科の教授であった磯田皓とその教え、言葉に感化された卒業生たちである。しかし彼らは決して優等生ではない。いわゆる優秀なデザイナーとしての道を歩んでいる者は一人もいない。絵画、イラストレーション、陶、染織、針金アート、漆、舞台衣裳などとんでもない多領域である。これは何を示唆しているのだろうか。
為三郎記念館での展覧会を拝見すると、圧倒的な強い造形ビジョンに打ちのめされる。造形教育とは形や表現方法の指導ではない。師の言葉を受け止め、発酵させ、醸成し、輝きをもたらすものである。言葉の力と受け止める力の双方が創作の源となる。美しい為三郎記念館と響き合い、13人の創作が一つの世界を形成していることに感動する。