『多木浩二対談集・四人のデザイナーとの対話』多木浩二+篠原一男+杉浦康平+磯崎新+倉俣史朗(新建築社、1975年)
50年前に購入して、オフィスの書棚に眠っていた本を取り出して再読した。「四人のデザイナーとの対話」ということで、篠原と磯崎は建築家であるが、著名にあるように(建築)デザイナーとしての対談である。2人は建築家の中でも、その個性的な造形性からデザイン認識が高いと言える。建築家の中でも特に私の好きなタイプである。杉浦はグラフィックデザイナーであるが、最も理数学的なデザインをする。アジアの図像学研究者としての肩書もある。私は杉浦のデザインに強く影響を受けてタイポグラフィ(文字に関わるデザイン全般)を身に付けた。今でもその精密さを大切にしている。
上記3人は、理論派でデザイン論では秀逸な多木とは、理論合戦の対談となっており、相当疲れる。モノとしてのデザインから離れ過ぎて抽象論になっている。結果私がどれほど理解し得たか、はなはだ疑問である。
一方倉俣は、デザインは非常にシャープであるが、感性の高いクリエイティブで、語りも感覚的である。何が言いたいのかと思ってしまうが、多木の理論分析が倉俣の言葉を明解に提示してくれる。倉俣自身も多木の言葉によって自身のデザインを語るので、対談とはこうあって欲しいというものになっている。
それにしても、デザインというものが一過性の魅力と捉えられがちな中で、4人のデザインの普遍性が半世紀たった今も褪せることがないのは、本著の凄さでもある。
なお篠原、磯崎、倉俣は亡くなっているが、杉浦は93歳の今も現役で活躍している。