15. 7月 2026 · July 15, 2026* Art Book for Stay Home / no.189 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『中川一政文選』中川一政(筑摩書房、1983年)

本著後記に「私のこの書は『中川一政文集』五巻の中から適当に抄録したものである。」とある。適当にというのは著者のテレもあるだろう、全五巻からというのは画家としては驚異的な著作量である。他の著作も含めて中川の著作は45冊ある。中川はもともと文学の分野で活躍しており、ふとしたことで洋画家に転向した。転向後も文を書き続けた結果である。
画を売るために描いているわけではない。私の画は売れないし、売るために描こうとは思わないという。それでは生活が成り立たないので、文を書く。文を書いてお金がいただけるのでありがたいと。それで書いた著作が45冊、中には詩集、短歌集、訳書『ゴオホ(ゴッホ)』もあるが、多くはエッセイである。エッセイであるが、美術評論が根幹にある。少し長いが、本著より私の大好きな一文を紹介する。(現代語に変更)

「私の画は役にたたないのだ。おいそれとすぐ役には立たないのだ。 戦争だから戦争の役にたつような画をかけと云って来たって、もともと戦争の為に画を勉強して来たのではないのだ。

役にたたなくとも不名誉とは思わない。それでは忠君愛国ではないと云ふかも知れない。忠君愛国も代用品になったと見える。本当の忠君愛国は眼に見えず、言葉に出でず、形がなく、もっと静かな、自由で広大無辺のものである。

とりあげていくらいくらと云う夜店の玩具のようなものではない筈だ。

私達画かきがますます勉強したら、ますます役に立たなくなるだろう。

それは前にも云ったように私達の仕事が前人未踏であるならば、大衆からはなれて私達の仕事は一人一人孤独になってゆく性質を持っているからである。

大衆がいくら聡明でも、勉強する画かきには追付いて来れない。それだから大雅は生涯貧しく、セザンヌは生涯孤独であったのである。」

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