08. 3月 2025 · March 8 , 2025* Art Book for Stay Home / no.161 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『小林薫と訪ねる「美の巨人たち」』テレビ東京編、(日本経済新聞社、2004年)

「美の巨人」と言えば、レオナルド・ダ・ビンチかパブロ・ピカソか、はたまた北斎か。いいえ違う、テレビ東京で毎週放映されている「美の巨人たち」現在は「新美の巨人たち」の通称。2000年より始まってはや四半世紀、美術ファンにはたまらない番組である。テレビの映像技術がひたすら高度になっているのに、相変わらず音楽番組ばかりで、美術番組と言ったら、NHKの日曜美術館しかないというのが長く続いていた。今ではBS日テレの「ぶらぶら美術・博物館」、NHKの「美の壺」などなかなか嬉しいラインナップである。

さて本著、放映済みの中から魅力的な15話を収録、掲載美術作品はすべて美しいカラー版。文章はテレビのナレーションを聞くようにやさしい、いやこちらの方で「美の巨人たち」調になれたのだろうか。読んでいるとあの小林薫のナレーションを聞いているような気分になるから不思議である。

第1話ピカソ「ゲルニカ」では、「じっくりその絵を観たいのなら早目にホテルを出たほうがいいかもしれません。スペイン、マドリッド。135ペセタの切符を買って、地下鉄に乗りましょう。行き先は、マドリッド市内アトーチャの駅。地上に出れば街路樹のプロムナード。その先に目指す美術館、国立ソフィア王妃芸術センターがあります。・・・」というすべり出し、テレビの映像が目に浮かんでくる。終わりは「『ゲルニカ』。二十世紀。白と黒の因果。パブロ・ピカソの一枚。」あの名画の余韻が残る見事なラストシーン。

私は仕事柄、美術館でのギャラリートーク、美術講演会を数多くこなしているが、絵を語ることは本当に難しい。言葉で説明できるなら絵はいらないと言った声もある。本著を読んでやさしく語ることの難しさと素晴らしさを知った。

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