20. 2月 2016 · 第41回館長アートトーク:マリー・ローランサン、華やかなマドンナ画家。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 教育普及

2016年2月20日(土)

 

前回に引き続き、今回もエコパリ展に関連した作家がテーマです。

マリー・ローランサンはエコール・ド・パリの芸術家のひとりで、パリ生まれの女性画家

やわらかく丸みをおびた身体にパステルカラーのドレスをまとい、どこか物憂げな表情を浮かべた女性像などで人気を集めています。

現在、碧南市藤井達吉現代美術館でも展覧会が開催されていますね!

(美術館サイト→マリー・ローランサン 愛と色彩のシンフォニー

Exif_JPEG_PICTURE

ここ最近で最多の参加者です!ローランサン人気、おそるべし

 

Exif_JPEG_PICTURE

ローランサンはお針子の母に育てられ、名門女学校にも通いますが、画家として生きる道を諦めきれず、母の反対を押し切って前衛芸術の世界に足を踏み入れます

モンマルトルの共同アトリエ「バトー・ラヴォワール(洗濯船)」で交流したのは、ジョルジュ・ブラックやピカソなどキュビストたちでした。

詩人のギヨーム・アポリネールとも出会い、恋人関係に。ローランサンの画業に大きな影響を与えます

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

あえて形を単純化・平面化して、稚拙にも思えるような画面に仕上げるのは、素朴派アンリ・ルソーからの影響です。

伝統的な写実絵画からは程遠い表現技法は、当時の前衛芸術家たちの目には新しく魅力的なものとして映ったようです

Exif_JPEG_PICTURE

やがて作品にはキュビスム的な要素が入り込んできます。が、その難解な理論には興味を示さず、自分らしい表現をつくりあげるうえでの一要素として、表面的に摂取していたといえます

存在感のある建物の輪郭線が画面を分割しながらも、グレーやピンクの淡くくすんだ色調はローランサンらしいやわらかさを感じさせます。

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

第一次大戦後に、現代の私たちがイメージする「ローランサンらしい」画風が確立されます。

細く幾何学的だった人物の身体はふっくらと肉感を持ち、黒く鋭い輪郭線は消え、パステルカラーの色面で画面が構成されているのがわかります。

灰色を基調としながらも、ピンクや水色などの割合が増してより明るく華やか、フェミニンな印象に

当時の上流階級のご婦人方はこぞってローランサンに肖像画を注文したのだとか

まさに、女性による、女性のための、女性らしい作品として受け入れられていたのでしょう

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

今回は館長独自の視点として、東山魁夷や東郷青児も取り上げられました。

東山魁夷が描いた白馬シリーズや、東郷青児が描いた物憂げな少女は、どことなくローランサンの作品を思わせる独特の美しさによってファンを得ています。

直接的な影響関係というよりは、多くの人々が理屈抜きで「なんだかいいな」「部屋に飾りたいな」と思うような作品の「愛されポイント」のひとつとして、「ローランサン風」という特徴が共通しているということなのかもしれません。

 

変遷の過程がなかなか面白いマリー・ローランサンの作品。エコパリ展では初期と晩年の二作品を展示しています

同じ作家の作品の画風の違いなどもぜひ比較してみてください

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

 

 

14. 2月 2016 · 染め花でつくるバラのコサージュ はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 教育普及

2016年2月14日(日)

 

次々と開催しております、エコパリ展のイベント。

今回はワークショップ「染め花でつくるバラのコサージュ」です。

講師は「染め花horry」の矢野仁代さんです。

イベントを企画するにあたり、展覧会に合ったワークショップを何かできないだろうか~と思い悩んでいたところ、矢野さんの染め花作品を見つけ、これだとひらめきました。

矢野さんはいろいろな染め花作品を制作されていますが、儚げな造形や美しくくすんだ色合いがどこかエコール・ド・パリの作品と通じるところがあって、とても魅力的です

身に着けられるコサージュは、形に残る展覧会の思い出にもなるのではと思い、講師をお願いするに至りました

IMG_3178

染め花というのは、染料で染めた布でつくった植物のこと(つまり、造花です)

本来は布を染める段階から作業が始まりますが、今回は手軽なワークショップということで、矢野さんが1人ずつにキットを準備してきてくださいました。

IMG_3181 IMG_3206

何種類かの花びら、がく、葉、飾りのリボンなどのパーツを組み立てていきます

IMG_3183

まずは芯に最初の花びらのかたまりを貼り付けて、つぼみのようなバラの核を作ります。

IMG_3189 IMG_3186

次に大輪に咲く花びらのニュアンス付け。5~6枚重なっている花びらの端にボンドを少しつけて、すぐに手のひらでこすり合わせて、あえて「しわ」や「めくれ」を付けます。

そのままでもきれいな花びらですが、この一手間を加えることで華やかさが全然違ってくるんですね

みなさん「ここまでやっていいの…?」とおそるおそるこすっていましたが、思い切ってゴシゴシとしたほうが全体的にきれいなバランスになるようです。

IMG_3192

大きさが少しずつ異なる花びらの束にボリュームが出ました

重なっている花びらはそれぞれ生地の素材も違っていて、それらを組み合わせることで独特の味わいが生まれるんだとか。

すこしだけ濃いピンク色に染められた部分がポイントになっています

IMG_3188 IMG_3197

だんだんと花の形が見えてきて・・・

IMG_3211 IMG_3212

茎や葉、がく、リボン、ブローチピンも取り付けて、完成です!

手作りとは思えないクオリティ、みなさんすばらしいです一番外側の花びらの位置やしわの付け方などでそれぞれの個性が出ます。色は白とピンクから選んでいただきましたが、どちらも素敵に仕上がりました

IMG_3217 IMG_3216

落ち着いた色とデザインなので、どんなお洋服にも合いやすそうです

IMG_3191

10人という少人数制のワークショップで、それぞれのテーブルではわきあいあいと会話も弾ませながら作業を進めている様子がみられました

1時間半ほどで作り上げたコサージュたち、美術館の思い出になれば幸いです

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

 

 

 

 

 

 

07. 2月 2016 · バイオリン・コンサート はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 教育普及

2016年2月7日(日)

 

今日は名古屋出身のバイオリニスト、中川香さんと松本一策さんをお招きして、エコパリ展関連イベントとして「バイオリン・コンサート」を開催しました

DSC_1683 DSC_1666

中川さんは武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科を首席で卒業。現在はセントラル愛知交響楽団団員としてご活躍されています。

松本さんは信州大学理学部物理科学科を卒業後、愛知県立芸術大学へ進学。卒業後は自主企画のコンサートをはじめ、レッスン、依頼演奏やアマチュアオーケストラの指導など、後進の育成にも力を入れています。

今回はエコール・ド・パリ展にちなんで、同時代の音楽家やフランスの映画音楽などを中心に、全部で10曲(+アンコール1曲)演奏していただきました

1. ジュ・トゥ・ヴ (サティ)
2. シェルブールの雨傘 (ルグラン)
3. Where is your heart (オーリック)
4. 2台のヴァイオリンのためのソナチネ (オネゲル)
5. 亡き王女のためのパヴァーヌ (ラヴェル)
6. ハバネラ (ビゼー)
7. 月の光 (ドビュッシー)
8. 愛の賛歌 (モノー)
9. 私の心はヴァイオリン (ラパルスリー)
10. ツィガーヌ (ラヴェル)

DSC_1648

先着50名のイベントでしたが、立ち見も出るほど大勢のお客様にお越しいただきました

エコパリの芸術家たちが生きた時代、同じくパリで活動していた音楽家としてよく知られているのはエリック・サティやモーリス・ラヴェル。

少し上の世代にはクロード・ドビュッシーなどがいます。

オネゲル、オーリックは「フランス6人組」と呼ばれる作曲家集団のなかの2人で、彼らはモンパルナスの画家のアトリエで、美術と音楽のコラボレーション企画などもおこなっていたそうです

諸芸術が花開いた20世紀初頭のパリにおいて、絵画や彫刻だけでなく、音楽の世界にも新しい波がもたらされたことがうかがえますし、彼らがアトリエやカフェなどで芸術談義を交わしていたのだろうか・・・と妄想が膨らみます

DSC_1681 DSC_1674

ご夫婦でもあるお二人。息ぴったりの演奏で、会場がパリの空気に包まれました

聞きなれた美しい旋律のメロディーもあれば、20世紀らしい個性的な調性の音楽もあり、エコパリ展の雰囲気をより深く味わっていただけるようなラインナップでした

DSC_1692

とくに、超絶技巧を要するラヴェルの「ツィガーヌ」は圧巻の一言!弾き終わるとみなさんの感嘆のため息が洩れました

DSC_1652 DSC_1696

音楽家や曲のエピソード、練習の裏話などのトークも交えながらの楽しい1時間となりました

展覧会と合わせて、余韻に浸りながらお帰りいただけたのではないでしょうか?

 

残すところ会期もあと20日ほど。

まだ・・・という方も、もう一度!という方も、ぜひぜひお越しくださいませ。

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

 

 

 

 

 

 

 

31. 1月 2016 · 「まるでパリじゃん!」 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 教育普及

2016年1月30日(土)、31日(日)

 

エコパリ展のビッグイベント、「まるでパリじゃん!」が1月30日(土)、31日(日)の2日間をかけて開催されました

グラフィックデザイン、アートディレクション、イベント企画など幅広く活動するユニット、holidayの堀出隼さんによる似顔絵イベントです

堀出さんはいわゆる「似顔絵師」ではなく、さまざまな活動の内の一つとして、出会った人たちの似顔絵をその場で描く似顔絵イベントを各地でおこなっています。

(※holidayについてはこちら→http://we-are-holiday.com/

今回はエコール・ド・パリ展の内容に合わせ、モンマルトルやモンパルナスの街角にいるような似顔絵画家をヒントに、お客様がまるでパリの下町にいるかのような気分を少しでも味わっていただきたく、堀出隼もといCROQUIS MONSIEUR(クロッキームッシュ)として似顔絵を描きまくっていただきました!

ちなみに「まるでパリじゃん!」というタイトルも堀出さんのアイデアです。(ダジャレになっているの、気がつきましたでしょうか?)

IMG_3105

似顔絵はムッシュが手にしているトリコロールのカードに描きます。油性ペンで一発勝負。一人当たり5分ほどで完成させます。

(手前のカンヴァスはディスプレイですが、ムッシュの息子さんが2歳のときに描いた作品とのこと。)

IMG_3113

開館直後からたくさんの方にご来場いただき、瞬く間に予約でいっぱいに・・・

IMG_3131 IMG_3147

お一人の方もいれば、カップルやご家族も。なかには「1枚は一人で描いてもらって、2枚目は家族と!」というお客様もいました

性別も年齢層もさまざまで、「美術館で似顔絵」という企画に興味津々。

しかしいざ始まるとけっこう緊張するもので・・・ スタッフも合間に描いてもらったのですが、誰かにずっと見つめられたり、5分間とはいえ目の前の人と言葉を交わさずじっと目を合わせたりというのは思っていたよりもどぎまぎしてしまうことがわかりました。これもひとつのコミュニケーションですね。

 

恥ずかしがりながらもモデルを努めたみなさん。

完成した似顔絵を目にすると思わず歓声と笑顔が!

とても特徴をとらえていて、名前もかっこよくデザインされています

IMG_3145 IMG_3126

 

終日予約は途切れることなく、最終的に2日間で約80人の方に参加していただきました

展覧会を見たついでに寄っていかれた方、イベントを目当てに来られた方、みなさんがとても充実した表情で館をあとにされるのを見て、スタッフも大変嬉しかったです

エコール・ド・パリ展をちょっと異なる視点から楽しんでいただけたのではないでしょうか。

 

描き続けて腱鞘炎になってしまったムッシュも、「楽しかった!」と言いながら帰っていきました。

参加していただいたみなさま、堀出さん、本当にありがとうございました!

 

次のイベントは2月7日(日)14:00~のバイオリン・コンサートです。

名古屋出身のバイオリニスト、中川香さんと松本一策さんによるデュオをお楽しみいただけます。

★料金無料(要観覧料)

★先着50名(当日13:30から整理券配布)

 

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

 

 

 

 

 

 

 

23. 1月 2016 · 第40回館長アートトーク:エコール・ド・パリ 藤田嗣治、困窮からパリの寵児へ はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 教育普及

2016年1月23日(土)

 

2016年最初の館長アートトークのテーマは「藤田嗣治」。

現在当館で開催中の「エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-」展に作品が展示されている作家の一人です。

展覧会と合わせてご来場いただいた方が多かったようで、いつもより密集度高めです

藤田嗣治の人気の高さもうかがえますね

Exif_JPEG_PICTURE

エコール・ド・パリのなかでもとくにその名が知られる藤田嗣治。

東京美術学校(現在の東京藝術大学)卒業後、1913年に渡仏。

ピカソやモディリアーニなど当時の前衛美術の最先端にいた芸術家たちと交流しながら独自の画風を築き上げ、1920年代にはフランス国内で高い評価を得るようになります。

Exif_JPEG_PICTURE

この独特の風貌、見覚えある方もいらっしゃるかもしれません。

おかっぱ頭に丸眼鏡、両耳にリングのピアスをつけて粋なスーツを着こなす藤田は、当時のパリでもかなり個性的だったようです

(上映中の映画「FOUJITA」ではオダギリジョーが藤田を演じていますが、完璧に再現されていますね・・・!)

Exif_JPEG_PICTURE

藤田をフランス語表記にすると FOUJITA になることから、頭の「FOU」をとって「FOUFOU(フーフー=お調子者)」という愛称でも親しまれていました。

奇抜な格好をしたり、ユーモラスな愛称をつくったりすることは、彼にとって自己表現のひとつであったと言えます。

モンマルトルやモンパルナスにヨーロッパ中から大勢の芸術家の卵たちが集まってきた1920年代。遠い東の異国からやってきた名もなき日本人画家が、芸術の都パリでいかにして生き抜いていくかということは、非常に重要な問題だったでしょう。芸術家としての技術はもちろん、自分を売り込むための自己プロデュース力も必要になってきます。藤田はその点で突出した才能を見せ、一躍パリの寵児になったのです

 

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

彼の作品の代表的な特徴といえば、乳白色の肌の裸婦です。特殊なメディウムの配合でつくり出されたなめらかで艶やかな肌の色は唯一無二のもの。

藤田は終生、自らの表現技法について誰かに教えることはなかったのだとか(近年研究が進み、タルク(ベビーパウダーの材料)を使用していたことが指摘されています

またその乳白色を際立たせているのが、日本画で使用する面相筆と墨を使って描かれた繊細な輪郭線です。

浮世絵をはじめ日本の文化がフランスで流行していたことは有名ですが、藤田は日本人という自分のアイデンティティを強みにして、作品表現に生かしていた部分もあったのでしょう

 

その後、世界恐慌から第二次世界大戦へと続く激動の時代に入り、藤田は日本に帰国します。

フランスで確立したスタイルだけでなく、そのときの興味関心や描く対象によってさまざまな画風を見せていることから、藤田の類稀なる芸術センスと技量がうかがえます

 

Exif_JPEG_PICTURE

戦中は軍からの要請で、戦地の様子を伝えたり兵士たちや国民の戦意を高揚させたりするような「戦争画」を手がけています。

こういった作品に対して今なおさまざまな意見がありますが、当時の日本に生きる画家として戦争に向きあい、彼ができることをやった結果であるということは言えそうです。

 

Exif_JPEG_PICTURE

戦後、藤田をはじめとする戦争画家たちは戦犯として糾弾されることとなります。彼はそのような日本の美術界に見切りをつけ、再びフランスへ。フランス国籍を取得し、キリスト教に改宗して洗礼名「レオナール」を授かります。

晩年は教会建築にも携わり、フランス人「レオナール・フジタ」として生涯を終えました。

 

美しい女性や可愛らしい子どもの絵だけではない、藤田の多様な作品。

いまだ謎めいている部分も多く、魅力は尽きません

 

今回のエコパリ展では藤田作品を3点展示。

独自の画風を確立する以前の初期の作品と、最晩年の作品になります。

貴重なラインナップなので、ぜひこの機会をお見逃しなく

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

 

 

 

20. 1月 2016 · 第8回清須アートラボ はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2016年1月20日(水)

 

清須市内在住在勤の方を対象に通年で開講している「清須アートラボ」。

今日は美術講座の西洋美術編②として、

「ルネサンスの幕開け ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》」と題してお話しました。

 

パワポ

《ヴィーナスの誕生》といえば、名画中の名画。

ルネサンス期に入って、ギリシア神話の女神ヴィーナスを等身大の裸体で表現した

初めての作例として名高い作品です。

 

改めてよく観察してみようということで、何が描かれているのか一つひとつ確認してみました。

描かれた人物は何人か、場所はどこか、天候はどうか、季節はいつか、構図はどうなっているか?

気づいたことを各自書き込んでいきます。

 

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

まずはじっくり画面を見る。当たり前のようですが、これが絵画鑑賞の基本ですね。

 

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

描かれている人物や構図を確認したところで、

次はその人物のしぐさや姿勢が、何を参考に描かれたのかを探っていきます。

 

Exif_JPEG_PICTURE

いかに高名なボッティチェリといえども、ゼロから全てを作り出すことはできません。

当時目にすることができた美術品などからアイデアをもらったはず。

親方ヴェロッキオの作品、パトロンだったメディチ家のコレクションのカメオ、

彼が暮らすフィレンツェの教会に描かれていた壁画、古代ギリシア・ローマの石像など、

いろんなものを着想源にして、描いたと言われています。

 

Exif_JPEG_PICTURE

当時、《ヴィーナスの誕生》の優雅で堂々とした女性のヌードは非常に革新的なものでした。

 

現代の私たちからすると、見慣れてしまっているものでも、

当時の人たちの目にはとても斬新に映ったり、不快なものだったり、

挑戦的なメッセージを放つものだったりということがよくあります。

 

それは、ボッティチェリ一人の作品を見ているだけでは分かりません。

同時期に活躍した画家や、ボッティチェリ以前の作品と比較することで、

彼の独自性や立ち位置が浮かび上がってくるのです。

 

また、ボッティチェリが生きた当時の社会情勢、宗教や思想、パトロンとの関係なども

作品の理解を大いに助けてくれます。

 

Exif_JPEG_PICTURE

それから、《ヴィーナスの誕生》の対作品と言われることも多いもうひとつの傑作《春》。

《春》は、ここに描かれた神々が一度に登場する文学的典拠がないために、

謎多き作品として、古来たくさんの研究者たちによって議論されてきました。

 

Exif_JPEG_PICTURE

ですが、注文主も制作年もはっきりせず、未だ結論は出ていません…。

いろんな解釈が可能な点も、多くの人をひきつけてやまない理由なのでしょう。

 

さまざまな先行作品や新しい思想を貪欲に吸収し、

歴史の大きなダイナミズムの中で、自らの才能を開花させ、

後世に残る名作を残したボッティチェリ。

 

今回は、1つの名画に見え隠れする、美術作品の図像の連鎖、

そして作者を取り巻く社会との関係に思いをはせる時間になったのではないでしょうか。

 

 

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

17. 1月 2016 · エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢- はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

2016年1月17日(日)

 

エコール・ド・パリとは。

1920~30年代のパリで活躍した芸術家たちの総称で、「パリ派」という意味です

文化の中心地のパリには、当時世界中から多くの芸術家たちが押し寄せていました。

彼らは異邦人として差別を受けたり貧困にあえいだりしながらも、前衛的な芸術に魅せられ、

それぞれ独自の個性を発展させていきます。

なかにはフランス人も含まれていますが、異邦人の芸術家たちと共同アトリエやカフェで交流し、

同じく新しい表現を追求していました

今回の展覧会では、パスキン、シャガール、ローランサン、ユトリロ、モディリアーニ、キスリング、ルオー、ヴラマンク、藤田嗣治・・・などなど総勢17人の画家・彫刻家の作品を展示しています。

0001

作品はすべて、北海道立近代美術館と札幌芸術の森美術館からお借りしています

なかでも北海道立近代美術館が誇る日本有数のパスキン・コレクションは必見です

 

解説パネルや展覧会図録、オリジナル紙袋にはそれぞれの作家の似顔絵イラストが(好評です!)

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

個性的な面々と合わせて作品をお楽しみください

 

2階オープン展示室では、「ピンナップ・パリマップ!」と題したミニワークショップを常時実施しています

DSC_1585 DSC_1586

大きなパリの地図に、おすすめスポットや思い出のエピソードなどを書き込んだマスキングテープやふせんをぺたぺた貼って、世界にひとつだけのパリマップをみんなでつくろう!という企画です

すでにけっこうマニアックな情報が集まっています。。!

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

展覧会を見たあとに、ぜひお立ち寄りください

パリの異邦人気分を味わっていただければと思います

 

★そのほかにもイベントいろいろ。詳しくはこちらをご覧ください。

 

2月1日(月)に展示替をおこない、前後期合わせて67点を展示いたします。

半期しか見られない作品もありますので、どうぞお見逃しなく!

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

 

 

 

 

 

 

 

 

17. 1月 2016 · エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢- 【展示作業】 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

2016年1月17日(日)

 

年があけてすっかり日にちが経ってしまいました。本年もどうぞよろしくお願いいたします

2016年最初の展覧会は、

「北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-」展

です!

岡山県の新見美術館、大分県の大分市美術館、広島県のはつかいち美術ギャラリーから巡回して、

ついに当館にやってきました

まずは搬入・展示作業の様子を少しだけ。

梱包された作品が展示室に運び込まれたところ。

点数はもちろんわかっていますが、この物量に「本当にうちに入りきるのだろうか・・・」とちょっと不安になりました

Exif_JPEG_PICTURE

大きい作品は2~3人がかりで慎重に運びます。(このなかにはシャガールの作品が。)

輸送中の傷や異常がないか作品をチェックしながら開梱し、展示プランに沿って仮置きしていきます。

DSC_1483

作品間隔や並び順を調整して、壁掛け作業へ。

展示室がだんだん完成形に近づいていくのを見るのはわくわくします

DSC_1471 DSC_1467

キャプションや解説パネル、章バナーなども取り付け、最後にライティング作業

100年ほど前の作品もありますので、光による傷みをできるだけ抑えるため、1点ずつ照度を測りながら照明を当てていきました。

 

今回の展覧会は、これまで当館ではあまり展示する機会のなかったジャンルのものです。

どのような印象になるか、実際に展示してみないとわからない部分が大きかったのですが、

作品をお借りした北海道立近代美術館、札幌芸術の森美術館からのアドバイスや、

他館での展示風景を参考にしながら、なんとか形にすることができました

じっくりと鑑賞を楽しんでいただけるのではないかなと思います。

 

DSC_1511 DSC_1521

みなさまぜひお越しください

 

【開催中】

北海道立近代美術館・札幌芸術の森美術館コレクションによる

エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-

会   期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)

開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)

休 館 日:月曜日

観 覧 料:一般700円、中学生以下無料

 

 

 

 

 

 

18. 12月 2015 · アーティストシリーズVol.80 大山紗智子展 はコメントを受け付けていません · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ, 展覧会

2015年12月17日(木)

 

今年度4人目のアーティストシリーズは、

「清須市第8回はるひ絵画トリエンナーレ」にて優秀賞を獲得した大山紗智子さん。

愛知県立芸術大学大学院に通う学生です。

 

DSC_1430

今回の個展では、「よくある運命」というサブタイトルで、

昨年・今年の2年間に制作した15点を出品しています。

 

DSC_1392 DSC_1385

大山さんの作品には、人々の日常生活に戦闘機が突如出現するという場面がよく描かれます。

ただ、戦闘機の出現という異常な事態にもかかわらず、画中の人々は驚いている様子もなく、

入浴をしたり、食事をしたり、遊んだり、休息したりと、もっぱら日々の営みに没頭しています。

なぜでしょうか。

 

12月12日(土)、アーティストトークにて、大山さんが作品について語ってくださいました。

Exif_JPEG_PICTURE  Exif_JPEG_PICTURE

戦闘機は、大山さんが愛好するプラモデルなのだそうです。

同時に、彼女にとっては、身近な人の死の象徴でもあります。

つまり、わたしたちの生の営みに突如出現するプラモデルは、

われわれに寄り添う、死の存在でもあるのです。

 

死はいつ私たちを襲うかもしれない。

けれど、それをことさらに恐れ、騒ぎ立てるのではなく、淡々と毎日を過ごしていきたい、

そんな思いがこめられています。

 

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

大山さんの作品は、タイトルを一ひねりしてあったり、

よく見ると人が穴に落ちていたり、浴槽から脚だけが出ていたりと、

見る人をクスリと笑わせる部分があります。

テーマの重さは前面に出さず、ユーモアをもって人の営みを捉えているのです。

まるで、「人生は滑稽だ」と言っているかのよう。

 

そして、戦闘機の出現に驚くでもなく、目の前の用事を粛々とこなす人間の姿は、

現代社会の縮図にも見えてきます。

日々どこかで起こる事件を、新聞やテレビ、SNS等で見聞きしてはいても、

他人事に深入りすることなく、我が事にのみ心をくだいている。

そんな人間の様子を、「人間ってこうしたものだ」とやや離れた所から肯定的に見ているのが、

大山さんの作品世界のような気がします。

 

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

ただ、最新作では、戦闘機が出現しない作品も。

色味も、赤茶と紺を基調にしたものから、紫がかった寒色を多く使ったものへと変化しています。

これら最新作では、物語性が引っ込んだ代わりに、

色や形をキャンバスにどのように配置するかという、造形的な実験が目を引きます。

 

今後の展開がとても楽しみな大山紗智子さん。

ぜひ、会場に足を運んで、大山ワールドを味わってくださいね。

12月27日まで開催中です。

 

 

 

【開催中の展覧会】

清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.80 大山紗智子展

会期:2015年12月10日(木)―12月27日(日)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般200円、中学生以下無料

03. 12月 2015 · アーティストシリーズVol.79 矢島史織展 はコメントを受け付けていません · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ, 展覧会

2015年11月29日(日)

 

アーティストシリーズ3人目、矢島史織さんの展覧会を開催しています

矢島さんは清須市第8回はるひ絵画トリエンナーレで準大賞を受賞されました

受賞作《Monster》は、トリエンナーレ会期中の来場者の投票によって「美術館賞」にも選ばれています

《Monster ♯1》2015年

 

展覧会のタイトルは、「ひかりのなかの永遠」。

DSC_1301

矢島さんは、「光と影」をテーマに作品を制作してきました。

きっかけは木漏れ日のピンホール現象を見たこと。

無数の楕円形の光が地面に落ちて揺れ動いている光景に感動したそうです

はじめは目に映った景色そのものを表現していましたが、次第にテーマは「目に見えない光と影」へ。

人間の心のなかにある輝きと闇のようなものを、コップや家といった身近なものに映し出していきました

DSC_1341

今回の展示では、2009年から2015年までの22点の作品をご紹介しています。

注目は、最新作の《Monster》シリーズ!

受賞作品をきっかけとして、5作目まで制作されています。

子どもの成長をあらわしたこのシリーズ。繊細な筆遣いと色合いでありながら、生のエネルギーがみなぎるような画面は、矢島さんにとって新たな境地となる表現です

DSC_1302

今日おこなわれたアーティストトークでは、作品の制作背景や内容について、丁寧にお話ししていただきました。

矢島さんの作品は墨や岩絵具、膠(にかわ)、胡粉(ごふん)といった日本画の材質を使って描かれていますが、

なかなか扱いが難しいのだそう

それでも、自分の表現したいものに適しているからこそ、

こういった材質にこだわって作品を創り続けているんですね

キラキラと輝く岩絵具の質感、墨のにじみ、和紙のしっとりとした滑らかさを感じるような作品たちは、

どれも温かみがあり、見る人の気持ちを穏やかにしてくます。

Exif_JPEG_PICTURE Exif_JPEG_PICTURE

先日発表されたばかりの「シェル美術賞2015」でも、準グランプリを受賞された矢島さん!

今後の活躍がますます期待されます

12月5日(土)までの会期となっております。どうぞお見逃しなく

 

 

【開催中の展覧会】

清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.79 矢島史織展

会期:2015年11月18日(水)―12月5日(土)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般200円、中学生以下無料

 

 

 

 

ツールバーへスキップ