26. 11月 2017 · はるひ絵画トリエンナーレ、もうすぐ応募受付開始です! はコメントを受け付けていません · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ, 未分類

あの一大プロジェクトが3年ぶりに帰ってくる(絶賛てんやわんやで準備中)・・・そう、「トリエンナーレ」。

「トリエンナーレ」といえばアート界隈の方や東海のみなさまにとっては「あ〇ちトリエンナーレ」かもしれませんが、、、

当館にとって「トリエンナーレ」といえば「はるひ絵画トリエンナーレ」!です!!

開館当初から、当館の各事業として開催している全国公募展。

1999年の開館記念でおこなわれた「夢広場はるひ絵画展」からスタートし、おかげさまで今回第9回を迎えることとなりました。

応募受付は12月1日(金)からです。みなさんもう準備は整えられていますでしょうか!?(→詳細はこちら

知らない方、迷っている方のために、トリエンナーレに応募すべき理由を改めてお伝えします。

①確かな実績

8回の開催を重ね、高いレベルを備えた新進作家の登竜門として広く認知されています。応募数は右肩上がりに伸びており、前回の応募数は506名、1021点。厳しい審査をくぐり抜けた受賞者の多くが、現在国内外で活躍しています。

【過去のトリエンナーレ】

【過去の受賞者たち】

②豪華な審査員(←NEW!)

今回より審査員メンバーが大幅に変更することとなりました。これまでの先生方も豪華すぎましたが、今回もすごい。これだけのメンバーが揃うのは、これまで築いてきた実績があるからこそ。

画家、デザイナー、批評家、キュレーターと、多様な視点から幅広い領域をカバーされる方々ばかりです。

【開催概要】スクロールすると審査員のご紹介があります。

③表現技法不問(←NEW!)

はるひ「絵画」トリエンナーレと銘打っていますが、平面であれば基本的になんでもOKです。日本画、洋画、アクリル画、版画、ドローイング、写真、デザイン、染色、刺繍、切り絵、、、

昨今アートの領域横断的な表現が多いことへの対応です。展示するキャパや審査の関係で守っていただきたい点はありますので、細かい規定はご確認くださいね。

【応募規定】

④年齢制限なし

新進作家の発掘といえど、眠っている才能に年齢制限はありません。団体展などの所属も関係なし。真の実力を見出します。

⑤個展のチャンスがある

当館では、トリエンナーレで高い評価を受けた作家を個展形式でご紹介する「アーティストシリーズ」を毎年恒例の企画展として組み込んでいます。実力ある作家を発掘するだけでなく、育成・顕彰することも美術館の役割。受賞作以外の作品を展観することで、鑑賞者はより作家のことを深く知ることができますし、作家にとっても改めて自身の画業を俯瞰できる貴重な機会となっています。

12月20日からの「アーティストシリーズ」では第8回展の入選者のなかからご紹介します。

【生川和美展】 【川邉耕一展】 【野中洋一展】

 


 

この18年の間には本当にいろいろなことがありました(私が関わっているのはここ数年ですが…)。

2年に一度のビエンナーレ形式から3年に一度のトリエンナーレ形式に変わったり、審査員の何名かが交代されたり、スタッフが幾度か入れ替わったり、市町村合併で美術館が春日町立から清須市立になったり。

応募規約など細かいところも微妙に変遷していて、伝統と革新のバランスを保ちながら、その都度時代に即したよい公募展であろうと努力してきたことがわかります。

全国的に文化行政が厳しい風にさらされているなか、いろいろなピンチに遭遇しながらもなんとか継続してこられたのは、美術館に携わってきた多くの方々やトリエンナーレ関係者、そして作品を応募してくださる作家のみなさんや作品を見に来てくださるお客様のおかげであることを実感します。

アーティストシリーズと同時開催の収蔵作品展では、これまでの大賞作品を一堂に展示する予定です。

「現代アートはわからない」「知らない人の作品だから」と言わず、現代に生きる私たちだからこそ、現代にいままさに生きて描いている作家の作品を見るべきなんだと思います。

どうぞお楽しみに!&たくさんのご応募お待ちしております!

 

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29. 10月 2017 · モンデンエミコの刺繍日記 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 未分類

企画展のタイトル「日常を綴る」は、「宮脇綾子展」だけでなく、同時開催の「モンデンエミコの刺繍日記」と共通のコンセプトです。

これまでにもたびたび開催されてきた宮脇綾子展を踏まえ、何か新しい切り口で作品の魅力を伝えられないだろうか?と考えていたとき、モンデンエミコというアーティストの存在が頭に浮かびました。

宮脇綾子とモンデンエミコ。二人に直接的な接点はありませんが、どちらも「手芸」をベースにする作家で、それぞれ異なる基本軸がありながら共通項がある。この二人の作品によって生まれる化学反応を見てみたいと思いました。

 本展のチラシも《刺繍日記》の1点に。

モンデンエミコは封筒や紙袋、チラシやレシートなど身の回りにある紙に刺繍をほどこした作品を《刺繍日記》と題し、約2年間、毎日1点ずつ作り続けています。

もともとは金属彫刻家で、刺繍とは程遠い世界に身を置いていました。

制作環境や家庭環境の変化にともない、作品づくりの手法を模索。たどりついたのが「刺繍」でした。

自分の専門分野である彫刻の世界を離れても、それでもなお表現せずにはいられない、強い欲求。

(睡眠時間を削りながら)毎日制作し続けることはとても大変なことですが、彼女にとっては一方でその苦労が作家としての矜持につながっています。

モンデンさんは、環境の制約を逆手にとり、限られた環境だからこそできることをオリジナルな表現に昇華させ、また「日記」という形をとることで何でもない日常を表現の題材にすることに成功しています。

画家にとっての表現ツールが筆と絵具であるように、モンデンさんの針と糸は彼女のコミュニケーション言語です。針で思考し、糸で発する。

日常とは、私たちの周囲を取り囲む空気のようなものです。当たり前に存在し、人生の99%はそれらで占められていて、改めて意識することなく、漂い流れていく。

しかしそれはポジティブに考えれば、私たちの心の持ちよう次第でどうにでもなる、とても柔軟で可能性に満ちた領域と言えるのかもしれません。

今回展示している宮脇綾子の《色紙日記》や旅行記などを見ていると、ただ毎日の出来事を綴っているという以上に、液状に流れる日常を掬い取り、丁寧に濾して一コマ一コマを結晶化させていくような、そんな印象を受けました。

嬉しいことであっても、悲しいことであっても、日常の小さな出来事を自らの心に留め置き、作品という形にあらわす。宮脇綾子とモンデンエミコの共通点だと思います。

 

当初、展覧会のタイトルを「日々是好日(にちにちこれこうじつ、またはひびこれよきひ)」にしようと考えていました。(抽象的すぎるということで、結局ボツ)

禅語のひとつで、損得や優劣、是非などにとらわれず、良いことがあっても悪いことがあっても一瞬一瞬ただありのままに生きれば、どんな日もかけがえのない一日となる、という意味だそうです。

モンデンさんの《刺繍日記》のなかに、偶然「日日是好日」とテキストが書かれた作品があり、ちょっと運命を感じてしまいました。

 

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24. 10月 2017 · 日常を綴る 宮脇綾子展 はコメントを受け付けていません · Categories: 未分類

アップリケと聞いて、みなさんはどんなイメージを持つでしょうか。

昔ズボンのひざが破れて繕ってもらったなあ・・・とか、お母さんにねだってかわいいワッペンを縫い付けてもらったなあ・・・とか。

どこか懐かしい響きです。アップリケ。(展覧会のチラシなどでは、原語の発音に近い「アプリケ」で統一しています。)

現在開催中の展覧会では、アップリケを制作手法としたことで知られる、宮脇綾子の作品をご紹介しています。

今回、彼女の作品を取り上げるにあたって強く意識したのが「日常性」です。

「日常を綴る」というタイトルにもなっていますが、取り上げるモチーフ、制作の姿勢、そしてアップリケという手法どれもが、身近で、親密で、あたたかい。

庭の草花を愛で、野菜の断面の美しさに驚き、食材としてまな板に上がった魚たちの表情に思いをはせる——何気ない日常のなかで、綾子さんは小さな喜びや驚きを積み重ねて生きてこられたのだろうと思います。

部位によって微妙に異なる色合いや絶妙な輪郭線のカーブなど、特徴をよくとらえていながらも、どこか歪で不格好なところも作品の魅力です。「世の中に同じようであって、同じものは二つない。」と本人が語っているように、一つ一つが個性的で完成された自然の造形を、さまざまな布を巧みに使い分けて表現しています。

アップリケや刺繍、編み物といった「手芸」は、家庭内での仕事や、手軽にできる趣味として位置付けられ、芸術の領域外に置かれてきました。

多様な表現が生まれている昨今のアート業界ですが、ようやく最近日の目を見るようになってきた工芸やデザインに比べても、まだ手芸は芸術として認められてはいないようです(「手芸」側からしても「芸術」であることを求めてはいないのかもしれません)。

綾子さんもおそらく芸術と手芸をめぐる複雑な関係性は多かれ少なかれ実感していたのでしょう、自らの作品を「芸術だと思ったことがない」としつつも、「でも、手芸家といわれるのもイヤ。」と言っていたりして、自身の作品に対する芸術性を否定しながらも、従来の手芸の範疇を超えて、表現を追求しようとしていたことがうかがえます。

また、東西を問わず古くから女性の生業であった「縫う」という行為は、どうしてもジェンダー論的な立場から語られがちです。綾子さんがアップリケという技法を選択したのも、嫁・母としての役割を果たす以上身に付けざるをえなかった針仕事の技術があったからこそですし、彼女が主婦としてできることだったからです。が、作品そのものにはそのような観点はあまり関係がありません。

自分の思いや考えを可視化し誰かに伝達するためのツール、というのが芸術のひとつの定義だとするならば、綾子さんの場合、その方法がアップリケだったということなのでしょう。

彼女の作品のファンが多いのは、アップリケという技術に親近感を覚えるからだけでなく、誰もが共感できる日常的で普遍的な感情――美しいものを見たときの喜びや面白い形に気づいた時の驚き――が直接感じられるからなのだと思います。

 

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13. 8月 2017 · 【特別編】学芸員の卵、参上! はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会, 教育普及

2017年8月13日(日)

こんにちは!博物館実習生Nです。

博物館実習生とは、言わば学芸員の卵というところです(自分で言っておいて恥ずかしいです)

実習生は学芸員になるため、実際に美術館の現場でその仕事を体験します。

清須市はるひ美術館には7月からおじゃましています。

もしかしたら、もうお会いしている人もいらっしゃるかもしれません…!

今までキッズアートラボのお手伝いやアートサポーターとの交流、

展示の工夫について教えていただく等々、多くの経験をしました。

実習生は事前に学校で講義を受けるのですが、現場に訪れると

学芸員の方がどのようなことを考えながらお仕事をしているのか

伺うことができ、発見ばかりです。

そして、本日は…こちら!

現在開催中の特別展「イラストレーター 安西水丸 ―漂う水平線(ホリゾン)―」展に

合わせて開催されたワークショップ「スノードームをつくろう!」のお手伝いをしました。

それぞれ自分の好きなオブジェを空き瓶にいれて、世界にひとつだけの

キラキラかわいいスノードームを作りました。

こちらのワークショップは人気のため、次回開催はすでに定員に達しております

実はワークショップ開催前に学芸員の方とスノードームの試作品をつくりました。

どうしたらスノードームが上手にできるのか、試行錯誤しました。

当日、参加者の皆さまにレクチャーできるように勉強することも

学芸員の仕事のひとつなのです。

学芸員の仕事のうち、普段私たちが目にする展覧会の企画・運営の仕事はほんの一部にすぎません。

実際は様々な活動をしており、突き詰めると奥が深いです。

私も学芸員になれるように精進します!

 

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06. 8月 2017 · 安西水丸展 関連トークイベント はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

2017年8月6日(日)

現在開催中「イラストレーター安西水丸 ―漂う水平線(ホリゾン)―」展、

関連トークイベント「知っておきたい!安西水丸さんのデザインを読み解くポイント」を開催

ゲストには、アートディレクターの水口克夫さんをお呼びして、

水丸さんのデザインのみどころを話していただきました。

水丸さんのデザインのお話にはいるまえに…

\\ デザインって、なんですか?//

さて、みなさん。

デザインという言葉は、いまや聞き馴染みのある言葉ですが、

説明できますか?

いざ、「デザインって、なに?」と聞かれると、意外に説明が難しいのではないでしょうか。

社会のあちこちにある課題(たとえば、若者の都会への流出による過疎化など)を解決し、

日常を豊かにするツールとしてデザインがあります。2016年のグッドデザイン賞金賞を

受賞したヤンマーの「トラクター(YT3シリーズ)」は、見た目のクールさだけではなく、

作業性にも配慮。若者も使いたくなるようなビジュアルで、農業への誇りを次世代の農業者に訴えかけています。

見た目の良さや、使いやすさだけではなく、社会の問題にもアプローチをするのがデザイン。深い。

水口さんのお話に、参加者のかたがたも学芸員も夢中でした。

そして、デザインについて学んだところで、水丸さんのデザインについてです

今回は、6つのテーマ(キャンバス、構図、モチーフ、色、文字、顔)に注目です。

教わったことを簡単にですが、以下にまとめてみます。

水丸展をご観覧されるときのご参考となれば幸いです

キャンバスについて

ーサイズを意識したデザインー

安西水丸さんの手がけた装丁をみてみると、

単行本と文庫本とでは表紙がガラッと変わっています。

本展でも展示している『村上朝日堂』は、その一例です。

中身は同じなのに、カバーが違う…

単行本の表紙を文庫本用に縮小したらいいのに…

なーんて思ってしまいそうですが、

大きさが違えば、絵の見え方も変わってきます。

それぞれのサイズに合わせてたイラストレーションを描くこと。

イラストレーターとしての水丸さんの誇りが感じられます。

構図について

ー全部は見せないずるさー

本展のメイン作品《スモモ》でもそうなのですが、

 

 

 

 

 

 

《スモモ》シルクスクリーン、1991年 ©Kishida Masumi

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右端の本のようにモチーフを全部みせず、途中で切り取る水丸さん。

皆川博子さんの『恋紅』(新潮文庫、1989年)のように

女性の顔が全部描かれず、特に目元がわからない…

表紙を見た人に「どんな女性なの?」と想像させる巧みな切り取り方です。

モチーフについて

ー描かれているモチーフは水丸さんのお気に入りたちー

水丸さんの好きなもの…スノードーム

多くの作品にモチーフとして登場しています。

たとえば、村上春樹さんの『夜のくもざる』(平凡社、1995年)や

山本益博さんの『食卓のプラネタリウム』(講談社、1984年)など

本展にもスノードームが描かれているものが多く、

「あそこにも!ここにも!」と探してもらうと楽しいですよ。

そして、もうひとつの好きなもの、野球についても取り上げてもらいました。

共通して言えるのは、同じモチーフであっても描き方が

何パターンもあってすごいということ。描き分けに注目です!

について

ー不自由の中の自由 制限の中の無限ー

(水口さんが述べられたこの言葉、本当にその通りだと思いました)

独特な配色も、水丸さんの魅力。

現代では、背景の色や配色をパソコンでいろいろ変えることはできますが、

水丸さんは、パントーンを使い、決められた色数の中で制作していました。

色の数が限定されているからこそ、さまざまな色の組み合わせを考えられる、

偶然性が生まれ、作品に独特の雰囲気が生まれる…

まさに、制限の中の無限。

田辺聖子さんの『女のおっさん箴言集』(PHP研究所、2003年)の、

背景のうすピンク色と黒色の配色は、毒を感じさせます。

 

文字について

ー書体は声質ー

書体が変わるとイメージも変化するもの。

イラストレーションだけで魅せるのではなく、

同時に文字でも魅了する水丸さん。

村上春樹さんの『螢・納屋を焼く・その他の短編』(新潮社、1984年)の

タイトルは手書きになっています(最終的に採用したタイトル文字は、

初めに電話で依頼を聞いたときにその場で書いたものだったようです!なんと驚き!)

タイトルの文字で本の世界観を表現するのは至難の業。

本展にも手書きタイトルのものがいくつか展示されているので、

見比べていただくと面白いかと思います。

について

ー「あぁ~、何かみたことあるような顔」ー

本の「顔」をつくるのが上手だった水丸さん。

水丸さんが描いた『普通の人』(宝島社、1982年)と『平成版・普通の人』(南風社、1993年)の

表紙に描かれている男性の顔。昭和の方は、しかめっ面でセンター分け、刈り上げた髪型…

平成の方は、両手にファーストフードをもち、ななめに分けた前髪、どこか緩さを感じさせます。

昭和と平成をうまく表現しています。

みるだけで、「あぁ!わかるわかる!」となってしまう水丸さんの描くイラストレーション。

「普通」をうまく表現できるのは、難しいことです(鋭い観察眼をお持ちだったことがわかります)

本展にも、たくさんの顔が描かれた「JALプランナー」のポスター作品が展示してあります。

その中には、なんと嵐山光三郎さんが隠れています!是非、探してみてください。

【ちょっとひと息学芸員のひとりごと】

デスクワークが多い日、「仕事の気分転換に…」と展示室に足を運ぶたび、

ほのぼのとした空間に心が休まります。

水丸さんの人柄が、この居心地のよい空間を生み出してくれているのだなと思うのです

(「うまく展示できたな」とかちょっとは思ったりもしますが笑)

カッターでパントーンを切った跡(ちょっとした引っ掛かり)など

作業の痕跡が伝わってくるのは原画ならでは。水丸さんを身近に感じられます。

とくに、北川 悦吏子さんの『ロングバケーション』(角川書店、1996年)の

原画はおすすめです。貝殻の白い部分は切り抜きになっており、

作業の細かさを感じさせます。是非、直接ご自身の目でみてください。

 

お し ま い .

 

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13. 6月 2017 · 宮脇綾子の理知とあたたかさ。 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

今秋に開催予定の「宮脇綾子展」の調査のため、富山県の砺波市美術館に行ってきました。

 

(建物が大きい・・・!)

宮脇綾子(1905-1995)は、古布の端切れなどを使ったアプリケ作品で知られ、名古屋を中心に活躍した作家です。

「手仕事」として表現されたアプリケ作品の題材は、庭に咲いた草花や畑でとれた野菜などとても身近なものばかり。

日常のささやかな幸福を綴るように制作された作品たちは、どれも心がほっこりするあたたかさにあふれていて、幸せとは心の豊かさから生まれるのだなぁということをひしひしと感じました。

色や形の組み合わせの妙はセンスの塊で、子どものあそびのような無邪気さがありながら、一方でモデルとなった対象や素材の布選びに対して鋭い観察眼が感じられます。

身の回りの人たちや自然への限りない愛情、そして妥協を許さない厳しさも垣間見たような気がしました。

本展は当館での企画展とは別物ですが、新収蔵品を中心に、当館なりのアプローチで綾子さんの作品の魅力をお伝えできたらと考えています。どうぞお楽しみに!

 

砺波といえば、チューリップ。

残念ながら見ごろは過ぎていましたが、道中いたるところで隠れチューリップを発見

 

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13. 6月 2017 · 美術館の役割とは? はコメントを受け付けていません · Categories: その他

先日「全国美術館会議」というものに参加してきました。

全国美術館会議とは、1952年に設立された組織で、美術館のさまざまな問題をみんなで共有し、ともにつながりあう場として会合や研修会を開いています。

全国の美術館400館弱が加盟しており、美術館どうしの横のつながりを深める貴重な機会でもあります。

http://www.zenbi.jp/index.php

鎌倉で開催された第66回の総会では、美術館に関わる人たちが美術館の機能や役割についてどのように理解し、その内容をどのように共有していくべきか?ということについて、改めて話し合われました。

岐阜県美術館さんの「ミュージアムの女」やtwitterのハッシュタグ「♯学芸員のおしごと」等々、最近ようやく美術館の内部が社会に向けて発信される動きがありますが、

美術館や博物館は公共施設であるにもかかわらず、そもそもどういう役割をもっていて、誰がどんな仕事をしているのか、ということについて正しく理解されてこなかったのではないかと思います。

(美術は好きでも「美術館の中身」に関心を持つことは一般的に稀ですし、先日のニュースで初めて「学芸員」という言葉を耳にしたという方も少なくないでしょう…)

美術館は敷居が高いというイメージはいまだに根強く、関心がなければ一度も訪れることなく生涯を終えることもあるかもしれません。

もちろん、それぞれの美術館によって理念や特徴はさまざまですが、

美術館の活動基盤(調査・研究/収集・保存/展示・公開/教育・普及)のもと芸術を守っていくことを美術館に関わる者すべての共通理解とし、

そのためには芸術が人と社会に果たす役割を考え伝えていく努力をしなければならないということを改めて考えさせられました。

 

時代の流れによって、芸術のあり方も美術館のあり方も変化しています。

美術館はもはや象牙の塔やブラックボックスではなく、誰もがアクセスできるプラットフォームであるべきなのだろうと思います。

 

帰りに神奈川県立近代美術館にて「木魂を彫る 砂澤ビッキ展」を鑑賞。

黒蕨さんの作品と同じく、木彫作品のエネルギーがすさまじかったです。

写真は屋外展示のイサム・ノグチ《こけし》。

 

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02. 5月 2017 · 驚きの造形と愉快な作家と。【黒蕨壮彫刻展】 はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

新年度になりました。といいつつもうゴールデンウィーク(去年も同じことを言っている気がする…)!

久しぶりの更新です。

現在開催中展覧会はこちら。

黒蕨壮彫刻展 木によるリアリティと情念

 

「清須ゆかりの作家」シリーズの第4弾となります。

清須市にある医王寺さんというお寺に、黒蕨さんが仏像と飛天像を奉納しているというご縁で、展覧会を開催する運びとなりました。

愛知在住歴は長いですが、鹿児島生まれの九州男児。豪放磊落な薩摩隼人という言葉がぴったりの、おおらかな空気をまとった作家です。

彼の作品の特徴は、なんといってもまずは木彫とは思えないその造形。

ポスターやチラシを見て、「なんだこれは?」とぎょっとした方も多いのではないのでしょうか。

 

黒蕨さんの作品には人間のようなものが彫られていますが、身体の一部であったり、どこかが欠けていたり、「抜け殻」(つまり衣服などの身体の「入れ物」)だったりと、いびつでちょっと不気味です。

ほぼすべての作品に共通しているのは顔がないこと。感情を表情から読み取ることに慣れている私たちですが、顔がない身体(のようなもの)からはかえって強烈な情念を感じます。

展覧会のタイトルにもあるように、黒蕨さんはリアリティのある造形を通して、人間の情念を表現しています。

喜び、悲しみ、怒り、苦しみ、とまどい、あこがれ、、などなど、何かしらの「情」が、つやつやとした木肌からにじみ出てくる。

そこにちょっとしたユーモアが加味されることで、彫刻の重厚なイメージから良い意味で脱しています。

黒蕨さんが「とにかく驚いてほしい、なんじゃこりゃ!と思ってほしい」と話すように、難しいことを考えずにただただ面白い!と思える作品です。

それと同時に、その裏にある確かな技術と、人間の細やかな感情を読み取る敏感な感受性も、感じていただければと思います。

ご来館されたことのある方はご存知の通り、当館はとっても小さな美術館です。

限られたスペースにどのように配置していくかということに関しては絵画とは勝手が違い少々苦戦しましたが、

作家と試行錯誤しながら空間を作り上げました。

(お客様の動線や鑑賞ポイントが想定とは違っていたりして、様子を見ながら会期中にも配置や角度を変えたりしています。)

   

会期中は不定期に在館されているので、わはは!と豪快な笑い声が聞こえたらぜひお話してみてください。

5月4日(木・祝)14:00からはアーティストトークも開催します。

 

 

19. 3月 2017 · 親子ワークショップ「ポップアップカードを作ろう!」 はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2017年3月12日(日)

アートサポーターさんによる親子ワークショップ「ポップアップカードを作ろう!」を開催しました!

ポップアップカードとは、こんな風に…

ああああああ// じぃ~~~~~っ \\

とびだすカードのことです。

でははじめに、みんなで作り方のお話をききます。

今回は、このなかから好きなものを選んでもらって

つくります

くまさんにバス、パトカーにお家

まよってしまいそう…

つくるものを決めたところで、台紙に色をぬっていきましょう!

 

丁寧にぬってみたり、力強くぬってみたり…気のままにぬってみたり。

カラフルな台紙が完成していきます

次は、しかけにも色をぬりましょう

ああ

ああ\\ あっ!バスに人がのってる! //

お友達がのっているのかな??家族なのかな??

想像するとおもしろいですね。

色をぬれたら、台紙としかけをくっつけます!!

ここがいちばん難しいところ 気を抜かないでっ!!

見本をしっかりみたり、サポーターさんに教えてもらったり…

ゆっくり確実にくっつけていきます…どきどき

くっつけると…

ああああああ\\ 完成っ!!! //

じぶんだけのバス、お家ができました

みんな素敵です

そして、なんといっても…

親子ワークショップの魅力といえば、

ああああああ\\  これっ  //

親子一緒に楽しそうにつくっているところをみると

こちらまで楽しく、嬉しくなります

一緒になってつくるのはいいですね。

そして、こんなポップアップカードも…

アートサポーターさんが考えるワークショップはいつもおもしろいです

親子で一緒に遊べるワークショップは、これからも企画していきます。

お気軽にご参加ください

 

12. 3月 2017 · ミュシャの《スラヴ叙事詩》 はコメントを受け付けていません · Categories: その他

2017年3月12日(日)

 

昨年当館で開催した「アルフォンス・ミュシャ デザインの仕事」展の会期前後から、何かと話題になっていた「《スラヴ叙事詩》来日」。

いよいよ開幕ということで、初日に国立新美術館に行ってきました。

(公式サイトはこちら→http://www.mucha2017.jp/ 展示作業の様子が動画で見られるのは貴重!「ミュシャ団」作業着がおちゃめ。)

 

《スラヴ叙事詩》とは、アルフォンス・ミュシャ晩年のライフワークともいえる作品で、20点の油彩(テンペラ)画から成っています。

ポスターやイラストレーションなどの商業美術でアール・ヌーヴォー全盛のパリを席巻したミュシャでしたが、元来備えていた愛国心と「画家」への憧れを募らせ、20世紀に入ったころから《スラヴ叙事詩》を構想し始めます。

資金援助をとりつけ故郷のチェコに帰国したのが1910年。チェコとスラヴ民族の歴史を壮大なスケールで描き出した《スラヴ叙事詩》は、そこから18年もの時間をかけて制作されました。

プラハ市に寄贈されたのちは展示スペースの問題や政治状況・戦争の影響等で長らく不遇の状態にあった作品。20点全てが国外にまとめて出るのは初めてのことです。

展示室は一部撮影OK。

まあとにかく大きい。すべて同じサイズではないのですが、最大のもので約6×8m。

あまりにも巨大なので、それだけでモニュメンタル。圧倒されます。

西洋美術において伝統的に高位の画題とされてきた歴史画は「大きいこと」が一つの条件となっていましたが、ここではまさにデザイナーではなく、アカデミックな歴史画家としてのミュシャの一面を思い知らされます。

そのような伝統への回帰が20世紀以降の前衛美術の時代には受け入れられず、今なお必ずしも高い評価を受けているわけではないこの作品。

日本では非常に人気のあるミュシャですが、多くの人にとっての「好きなミュシャ」とはかなり異なる作品だと思います。

デザイナーとしてのミュシャが大好きな日本人、そしてスラヴという民族にあまり馴染みのない日本人が、この《スラヴ叙事詩》を見て何を感じるのか、率直な感想を知りたいところです。

 

最初で最後かもしれない全20点の来日。

貴重な体験となることは間違いないでしょう。おすすめです^^

 

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