23. 4月 2015 · 新緑の季節 はコメントを受け付けていません · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ

2015年4月23日(木)

 

新緑のまぶしい季節になりましたね。

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公園のなかに建つ清須市はるひ美術館では、木々の新芽が青々と繁って、

木漏れ日が美しく、散歩するのに心地よい陽気です。

 

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今朝も、公園にはケリという野鳥がやってきました。

黄色くて長い足をしています。盛んに地面を掘り返しては虫を採って食べていました。

 

当美術館は名古屋駅から10キロ。

JR東海道本線では、名古屋駅から約7分。2つ目の駅が最寄の清洲駅です。

(清洲駅からは徒歩20分かかりますが。)

お客様から「名古屋からすごく近いのに、こんなにのんびりしたところがあるのね。」と声をかけられることも。

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お昼時になると、公園でレジャーシートを広げてお弁当を食べる家族連れの姿もちらほら。

↑ この建物の外観を頼りに、ぜひお越しください。

きっとリフレッシュできるはず。

 

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現在、館内で開催中の「清須市第8回はるひ絵画トリエンナーレ」。

展示室の最初に、審査で最高賞を獲得した、興津眞紀子さんの《光と希望》を展示しています。

淡い色彩で植物のシルエットが描かれ、とても瑞々しい作品。

ちょうど、公園の木漏れ日のイメージと重なります。

 

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美術館では入賞・入選作品、計28点を展示しています。

こうして並べてみると、とても表現の幅が広くて、意欲的な作品が選ばれていることがよく分かります。

作家のコメントも掲示していますので、そちらも合わせてお楽しみください。

 

 

 

清須市第8回はるひ絵画トリエンナーレ

会  期|2015年4月19日(日)-6月7日(日)

休館日|〈美術館〉4月20日(月)・27日(月)、5月7日(木)・11日(月)・18日(月)・25日(月)、6月1日(月)

      〈図書館〉4月20日(月)・27日(月)・30日(木)、5月7日(木)・11日(月)・18日(月)・25日(月)~6月4日(木)

時  間|10:00-19:00(美術館の入館は18:30まで)

観覧料|〈美術館〉一般300円、中学生以下無料 

      〈図書館〉無料

 

 

19. 4月 2015 · 清須市第8回はるひ絵画トリエンナーレ 表彰式 はコメントを受け付けていません · Categories: はるひ絵画トリエンナーレ

2015年4月18日(土)

 

本日、清須市第8回はるひ絵画トリエンナーレの表彰式がおこなわれました。

国内外から過去最多となる506名、1,021点の作品が寄せられた今回の公募展

これまでにない厳しい審査を潜り抜けたのは、大賞1名、準大賞2名、優秀賞5名、

入選20名(そのうち「きよす賞」1名)、佳作30名のみなさんです

 

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大賞の興津眞紀子さんに賞状とトロフィーが贈られます

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続いて、準大賞の矢島史織さん、平野えりさん。

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表彰式後は、展示室にて入賞・入選の作品の講評会を行いました

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審査員の櫃田伸也先生、山脇一夫先生、高北幸矢館長による講評(中村英樹先生は所用のためご欠席)にみなさん聞き入っています

会場では受賞者のみなさんそれぞれの、制作の経緯や作品に対する思いなどもお話しいただきました

 

今回のトリエンナーレは応募点数の多さもさることながら、表現の手法も幅広く、

レベルの高い作品が多く集まりました

受賞者のみなさん、本当におめでとうございます

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4月19日(日)からはじまるこの展覧会では、入賞8点と入選20点を清須市はるひ美術館に、

佳作30点のうち26点を、美術館隣の清須市立図書館にて展示します。

5月9日(土)午後2時からは、大賞受賞の興津眞紀子さんによるアーティストトークも開催。

ここから発信される新進作家たちの意欲あふれる作品を、ぜひお見逃しなく

 

*美術館のエントランスでは「美術館賞」投票コーナーも設置しています。

あなたのお気に入りの1点を探してみてはいかがでしょう。

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清須市第8回はるひ絵画トリエンナーレ

会  期|2015年4月19日(日)-6月7日(日)

休館日|〈美術館〉4月20日(月)・27日(月)、5月7日(木)・11日(月)・18日(月)・25日(月)、6月1日(月)

      〈図書館〉4月20日(月)・27日(月)・30日(木)、5月7日(木)・11日(月)・18日(月)・25日(月)~6月4日(木)

時  間|10:00-19:00(入館は18:30まで)

観覧料|〈美術館〉一般300円、中学生以下無料 

      〈図書館〉無料

 

 

 

 

 

25. 3月 2015 · 第10回清須アートラボ はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2015年3月11日(水)

 

今年度最後となる第10回清須アートラボ。

受講生のみなさんには、これまでの総まとめとして「清須アートラボ検定」に挑戦していただきました

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絵巻、伊藤若冲、アンリ・マティス、ボッティチェリについて、ラボで学んだことを思い出しながら、真剣に問題に取り組むみなさん・・・

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当初は「美術検定4級程度」の難易度に設定していましたが、学芸員がそれよりも少し難しく作ってしまったかも・・・

みなさん頭をひねらせながらも、解答用紙を埋めていらっしゃいました

 

問題を解き終わった後は、復習を兼ねて答え合わせ

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あ~そうだそうだと記憶が戻り、うなずかれる方も。

さて、全問正解できたでしょうか

 

1年を通してアートラボで学んだことをきっかけに、さらにアートに対する関心を深めていただければ幸いです

ラボでご紹介した作品を実際に目にしたとき、豆知識や見るべきポイントをちょっと思い出していただければ、

鑑賞がさらに魅力的なものになるかもしれません

参加いただいた受講者のみなさま、ありがとうございました

 

2015年度も、清須アートラボを開催いたします。

美術講座とミュージアム鑑賞ツアーを通して、アートを楽しみながら学びましょう

※申込み詳細は「教育プログラム」ページ、「清須市生涯学習講座」をご覧ください。

 

 

 

14. 3月 2015 · 第30回 館長アートトーク:飛べなくなった人、石田徹也の苦悩の絵。 はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2015年3月14日(土)

 

今年度最後となる館長アートトークのテーマは、現代社会の闇をひたすらに描いた夭逝の画家、石田徹也

31歳の若さで事故死しましたが、そのあまりに短い生の時間を予兆していたかのように、膨大な数の作品を残しました

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1973年に静岡県で生まれた石田徹也。

画家として活躍したのは、バブル崩壊後の1990年代から2000年代はじめです。

世の中が大きく動き、価値観が変わり、人々のなかに不安や孤独感が渦巻いていた時代でもあります

石田徹也が描くのは、そんな社会に生きていた名もなき「普通の人々」。

自画像ともいわれる、無表情の青年やサラリーマンが登場します。

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↑ 代表作のひとつ、《飛べなくなった人》

大人になるにつれて、社会のいろいろなしがらみにとらわれて、身も心も羽ばたけなくなってしまった人。

夢も希望もなく、ただ過ぎていく無機質な時のなかで機械のように生きる人。

心に傷を負い、誰にも干渉されない自分だけの世界に閉じこもる人。

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石田徹也の作品には、現実にはありえないことが描かれていますが、

現代に生きる誰もが共感できる、現実を突きつけられるような感覚があります。

そこで表現された痛みや苦しみは強烈で、なかには目を覆いたくなるようなものも・・・

 

22歳にして公募展のグランプリを受賞するなど、気鋭の画家として早くから注目されていましたが

世間からの評価に奢ることなく、黙々と制作を続けました。

とにかく描き、思考を繰り返した石田徹也の作品は、今もなお私たちの心に深く突き刺さります

 

2015年度最初の館長アートトークは4月25日(土)16時~、

テーマは「女流画家三岸節子、不屈の花世界。」です。

電話申込:052-401-3881

※前日までにお申込みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

25. 2月 2015 · 第29回 館長アートトーク:アルチンボルドのだまし絵、そしてマニエリスム。 はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2015年2月21日(土)

 

第29回目の館長アートトークのテーマは、

「だまし絵」、そしてマニエリスムを代表する画家「アルチンボルド」です

マニエリスムって・・・?

いまひとつピンと来ない方も、「だまし絵」、そしてトリックアートといえば馴染みがあるのではないでしょうか。

2009年に名古屋市美術館で開催された「視覚の魔術―だまし絵」展は、

異例の22万人の入場者数を記録するなど、大盛況

ふだん美術館はあまり訪れないけれど、

この展覧会には足を運んだという人も多かったのではないでしょうか。

現在、好評だったこの展覧会の第二弾として、

「だまし絵II」展が3月22日まで同館で開催中です。

 

さて、現代でも多くのファンを持つだまし絵というジャンルですが、

その元祖ともいうべき作家が、ジュゼッペ・アルチンボルドです。

16世紀、美術史上ではマニエリスムと呼ばれる、ある特徴・傾向をもった様式が登場していました。

この時期は、1月のアートラボでもとりあげたボッティチェッリに代表される、

調和のとれた普遍的な美を特徴とするルネサンスの後の時代。

ルネサンス期に完成された人体美を模倣し、これでもかと強調してみせる作品が見られました。

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たとえば、パルミジャニーノ《長い首の聖母》という作品。

ちょっと見づらいですが、タイトル通り、

聖母の首や体が蛇のように長くねじれていますね。

誇張され、デフォルメされた人体表現もマニエリスムの特徴の一つ。

こうしたマニエリスムの代表的作家といわれる、アルチンボルド。

どんな作品を残しているのかというと、、、

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いかがでしょう。見たことがある方も多いのではないでしょうか?

目を凝らして見ると、眉がインゲン豆だったり、唇が果物だったり、

農作物や花、草木で人間の顔をかたどっています。

同じマニエリスムを代表する作家とはいえ、先ほどのパルミジャニーノの作品と比べて、

アルチンボルドの作品はあまりにも特異。

人の目をだますようなしかけ、奇想、トリックを絵の中に忍び込ませています

たとえば、下の作品を見てみましょう。

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人の手がお盆のふたをとると、中には美味しそうな食べ物が盛られています。

しかし、この絵をぐるりと180度回転してみると・・・

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大きな鼻をした男の顔が現れました。

こうした、人をあっと驚かせるような仕掛、アイディアこそ、

アルチンボルドの作品の魅力の一つではないでしょうか。

 

草木などのモチーフを巧みに組み合わせ、人物を作るというアルチンボルドの手法、

実は日本の浮世絵版画にも見ることができるんです。

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歌川国芳によるこちらの浮世絵。

人の体が重なったり、組み合わさったりして、顔を作り上げていますね。

パズルを組み合わせるように、物と物を組み合わせて別のモチーフを作ったり、

人の目を驚かす仕掛を絵の中にしのばせるしゃれっ気は万国共通なのかもしれません。

 

 

次回の館長アートトークは3月14日(土)16時~、

テーマは 「飛べなくなった人、石田徹也の苦悩の絵。」です。

31歳という若さで亡くなるまで、ひたすら制作に没頭した画家の生涯を辿ります。

電話申込:052-401-3881

※前日までにお申込みください。

 

 

 

 

24. 1月 2015 · 第28回館長アートトーク:情熱の画家ゴッホ、その人生と名画 はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2015年1月24日(土)

 

今日の館長アートトークのテーマは、情熱の画家ゴッホ

美術史にくわしくない方でも一度は名前を聞いたことがあるのでは・・・?

うねるような筆づかいと、あざやかな色彩は一度見たら忘れられないインパクトがあります。

そんなゴッホの作品、現在名古屋ボストン美術館で開催中の「華麗なるジャポニスム展」で見ることができます。

 

今回から清須市立図書館との連動企画として、

館長アートトークのテーマにちなんだ本を会場に置いてもらうことになりました

アートトークを聞いて、もっと知りたい!と興味を持った人にさらに理解を深めてもらえるよう、

会場にはゴッホの人生や弟との手紙のやり取り、描かれたモチーフ、さらには絵本にいたるまで関連本がずらり。

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関連書籍は、アートトークの後借りることもできますよ。

 

さて、今回のテーマであるフィンセント・ファン・ゴッホ。

オランダ出身の彼はヨーロッパ各地を転々とした後、画家をめざしパリにやってきます。

ゴッホといえば、まばゆい黄色や紫がかった青など、

あざやかな色彩を用いた作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?

しかし若かりし頃のゴッホの作品は暗い色調のものが多く、

テーマも労働の苦しさや貧困を連想させるモチーフを描いたものが目立ちます。

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↑こちらの作品で描かれたのは農夫たちの食事の風景。

食べているのは、じゃがいもです

簡素な室内と服装、そして重めのマチエールと色合いが貧しいながらも地に足をつけて生きる農夫の姿を際立たせる良品ですが、

残念ながらあまり人気が出なかったそう。

一方、当時のパリを席巻していたのは、

明るく軽やかな色彩と筆触で風景や都市の現代生活を描いた印象派でした

一向に作品が売れないゴッホも、印象派が描いたモチーフや技法を取り入れた作品を制作しています。

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印象派風の筆触分割に取り組んだり、

モチーフを複数の視点でとらえ、画面上に再構成するセザンヌの技法を試したり、

ルノワールが明るい幸福感をもって描いたムーラン・ド・ラ・ギャレットを描いてみたり、

当時もてはやされていた作品をいろいろと模倣しています。

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同じく当時のパリで一大ブームとなっていた、日本の浮世絵版画。

ゴッホも北斎や広重の浮世絵にちなんだ作品を残しています。

 

こうして流行の作品を多く模倣したゴッホですが、その良さが光るのは、

(恐らく貧乏な彼にとって身近であっただろう)じゃがいもなどの作物を描いた静物画。

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特に籠に入ったじゃがいもを描いた右端の作品は、

獲れたてのじゃがいものみずみずしさが薄ピンクや紺色で描かれ、

輝くばかりの色彩にあふれた作品を制作する南仏時代を予見させます。

 

作品が売れないゴッホ。パリを離れ、南フランスに居を移します。

南仏の強烈な光の影響なのか、

この頃から画面に鮮やかな色彩があふれ始めます。

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麦畑や、太陽を背に種を蒔く農夫を描いた作品は、

ゴッホが若いときから取り組んできた労働や農民といったモチーフを、

南仏滞在でつかんだ光あふれる鮮やかな色彩で表現した集大成ともいうべき作品です。

しかし、ゴッホは徐々に精神の均衡を崩してゆきます。

自分の耳を切り落として精神病院に収容され、

一時回復の兆しを見せたものの、最後は拳銃自殺を遂げました。

彼の死後、その劇的な生涯はある種伝説化し、

皮肉なことに生前売れなかった作品の値段も高騰します。

 

37年間の生涯を駆け抜けたゴッホ。

画家独自の試みと、売れるため当時人気のあった名画を積極的に模倣したという点をあわせて見ることで、

新たなゴッホ像が浮かび上がってくるのではないでしょうか。

 

次回の館長アートトークは2月21日(土)16時~、

テーマは「アルチンボルドのだまし絵、そしてマニエリスム」です。

電話申込:052-401-3881

※前日までにお申込みください。

 

 

【開催中の展覧会】

清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.76 井上雅夫展

会期:2015年1月27日(火)―2月14日(土)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日

観覧料:一般200円、中学生以下無料

10. 1月 2015 · 木下令子展 アーティストトーク はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

2015年1月10日(土)

 

現在開催中の『アーティストシリーズVol.75 木下令子展』。

出展作家によるアーティストトークが行われました

 

アーティストシリーズとは、

当館が開館以来継続して開催してきた公募展で、高い評価を得た作家を個展形式により紹介する企画です。

現在出展中の木下令子(きのした れいこ)さんは、

2012年の公募展、第7回清須市はるひ絵画トリエンナーレにて優秀賞を受賞された作家さんです

 

優秀賞を受賞した2011年の作品《fixing》から、2014年の最新作に至る全33点が一堂に会しています。

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14時から始まったアーティストトーク。

木下さんによるトークに入る前に、簡単にアーティストトーク&木下さんの経歴についてご紹介

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木下さん自身による制作の裏側が聞けるとあって、たくさんの方が参加してくれました!

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木下さんの作品の特徴のひとつは、制作技法にエアブラシを取り入れていること。

そんなエアブラシを使って制作された、最初期の作品《fixing》からトークがスタート。

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エアブラシ特有の、ぼんやりした、筆触がわからない背景。

白く浮かび上がっているのは、髪の長い人の後姿

その上から、ドリッピングされたり絵筆で描かれた色班が、しみのように重なり、

まるでレンズ越しにみえるピントのずれた風景のような、不思議な景色を作っています。

この《fixing》が優秀賞を受賞したことで、エアブラシという技法をもっとつきつめてみよう、

そう決心がついたと言います。

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2012年以降は、布のしわが画面に登場します。

もともと画布にしわが寄るのがストレスだったという、木下さん。

ある日、アトリエに丸まって捨てられていた紙を広げて見たところ、

しわが寄った紙の中に、文字がぼんやりと判別できたそうです。

そんな体験から得た感覚をヒントに、布にあえてしわを寄せ、

その痕跡をエアブラシによって浮かび上がらせる制作スタイルへと変わってゆきます。

吊るしたり、地面においてしわを寄せた布に、外側から徐々にエアブラシで絵具を定着させ、

ひきのばして木枠に固定すると、平面でありながら非常に立体的でオールオーヴァーな画面が現れます

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また、この頃から制作に取り入れる素材も多様化。

たとえば、印画紙という光を受けて変色する紙や、日焼けしてぼろぼろになった古本、何かを包んでいた包装紙。

こうした素材を使い、時間の経過そのものや、誰かの手元にあったという由来や痕跡、

そして人と人との日常のやり取りを想起させるような作品を制作しています

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それぞれの作品について、丁寧に説明してくれた木下さん。

トーク終了後も、参加者の方が質問をされていました。

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『木下令子展』は1月24日(土)までの開催です。

忘れていた昔の体験や、見落としがちな日常のやり取りを思い出し、

ふりかえるきっかけを与えてくれるような作品がたくさん出品されています。

どうぞ足をお運びください

 

 

【開催中の展覧会】

清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.75 木下 令子 展

会期:2015年1月6日(火)―1月24日(土)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般200円、中学生以下無料

 

 

08. 1月 2015 · 第10回清須アートサポーター はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2015年1月8日(木)

 

今日は、年が明けて第一回目のアートサポーターの活動がありました。

まずは、現在開催中の『アーティストシリーズVol.75 木下令子展』の見学会からスタート

 

アーティストシリーズ第二弾となる今回の展示では、

当館が主催した直近の公募展、第7回清須市はるひ絵画トリエンナーレにて

優秀賞を受賞した木下令子さんを取り上げています。

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優秀賞を受賞した作品《fixing》から解説をスタート。

木下さんの作品の特徴のひとつであるエアブラシを使った初期作品です。

エアブラシで仕上げたぼんやりとした背景の上に、

赤や白の絵具のしみのような色班がかさなり、

ピントのずれたカメラ越しの風景のような印象を与えます

 

展示は、2011年から2014年までの年代順。

この《fixing》から、布の皺や古本の頁などを取り入れた最新作まで、

人と人との日常のやり取りやその痕跡、思い出せそうで思い出せない記憶などをモチーフに、

何もないようでいて、その実確かに存在するものを求めて制作を続けてきた木下さんの軌跡が追える構成です

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繊細で、ほっとするような温かい作品ばかり。

サポーターさん達にも、じっくりと間近で作品を鑑賞してもらいました。

 

見学会を終えたら、通常のサポーター活動へ。

まずは、最近行った展覧会の情報交換

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・大原美術館の常設展

・メナード美術館の「コレクション名作展2014」

大原美術館はコレクションが豪華で、美術館自体も巨大すぎないため作品を間近に鑑賞できるとのこと

また、教育普及プログラムも充実していて、

小学生や地元の人たちが気軽に入ってくる「地域の美術館」という印象を持ったそうです。

収蔵作品の質と量が充実しているメナード美術館は、

清須からの距離も近く飲食スペースも充実しているため、

気軽に訪れることが出来るのも魅力のようです

 

情報交換の後は、班毎に分かれての活動です。

まずは、「広報チーム」。

昨年秋、めでたく創刊号を発行した「アートサポーター便り」

この勢いのまま次号を春ごろに発行すべく、

1月に行われる第8回清須市はるひ絵画トリエンナーレの模様や、

審査結果などを伝えてはどうか等、紙面の内容を話し合いました。

 

「美術館運営チーム」が取り組んでいるのは、最寄駅から美術館までのウォーキングマップの作成。

前回の活動では、実際に清洲駅から美術館まで歩き、

目印になるもの・春日地区らしさを感じさせるものを探しました

徒歩20分の距離を歩いてみたい!と思わせるにはどんな地図が良いか、

他の美術館のウォーキングマップも参考にしながら智恵を出し合います。

 

そして、「イベント企画チーム」。

昨年12月に記念すべき第一回親子ワークショップ、

「クリスマスソックスをつくろう!」を企画・実施しました。

今日は、その振り返りと次のワークショップについて話し合います。

前回は広報期間が短かったため、その反省を活かし、

次回はより告知に力を入れたい。

参加人数は多くはなかったものの、その分参加者一名につき

サポーターが二、三人で手厚く教えることが出来た、など。

これらの反省点を活かし、記憶が新しいうちに次回のワークショップを実施するのが目標です

次回は4月頃の開催を目指しています

 

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なかなか学芸員だけでは補いきれない美術館の運営に、

それぞれのプロジェクトを通して、サポーターさん達が熱心に取り組んでくれています。

これからも目に見えるかたちで、

活動の成果を発信してゆきますのでご期待ください

 

 

【開催中の展覧会】

清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.75 木下 令子 展

会期:2015年1月6日(火)―1月24日(土)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般200円、中学生以下無料

 

 

 

 

 

 

07. 1月 2015 · 第8回清須アートラボ はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2015年1月7日(水)

 

新年、明けましておめでとうございます。

年の初めの今日は、気分も新たに、清須アートラボの第8回目を開催しました。

少しでも美術の見方、楽しみ方をお伝えしたいと始めた講座です。

 

美術講座として今回取り上げたのは、

西洋美術史のなかでも燦然と輝く、ルネサンスの幕開けとなった、

ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》です

 

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ご存知の方も多いと思いますが、海で生まれたヴィーナスが、貝に乗り、西風に吹かれて陸にたどり着いたところ。

このヴィーナスは一糸まとわぬ姿で、全身で優美なS字曲線を描いて立っています。

 

さて、ルネサンスとは、「古典古代の再生」を意味します。

つまり、ルネサンスの芸術家たちは古代ギリシア・ローマ文化を再評価し、

ギリシア彫刻のポーズや質感を取り入れて、新たな絵画作品を創り出しました。

 

《ヴィーナスの誕生》は、ギリシア神話の女神であるヴィーナスを、

堂々たるスケールで、裸体像として描いた、ルネサンスで初めての作品です。

約1000年続いた中世の間、不吉なものとして隠避されてきたギリシアの神像に生命を吹き込み、

瑞々しい裸体像として再生させたのです。

まさしく、ルネサンスという新しい時代の幕開けとなった、記念すべき作品と言えるでしょう。

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では、その新しい絵画を描く時にヒントになったのは何だったのでしょうか。

それは、古代の彫像の「恥じらいのヴィーナス」(左上)のポーズだったり、

先輩格の画家が描いた「キリストの洗礼」(右上)のポーズだったりします。

 

ボッティチェリは、すでにあるギリシア彫刻やキリスト教絵画を良く学び、

それらをミックスし、当代風にアレンジして、独自の新境地を切り拓いたのですね。

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↑ それからこちらは、同じくボッティチェリの名高い傑作 《春》という作品。

こちらも中央にヴィーナスがいますが、裸体ではなく衣装をまとっています。

ヴィーナスの周りには、この女神にまつわる神々が一堂に集まり、華やかな様子。

 

この《春》の登場人物たちも、先輩の芸術家の作品を元に、構想が練られたと考えられます。

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例えば、↑ ヴィーナス(左上)は、当時たくさん作られていたマリア像(右上)がヒントになっています。

右側の作品は、あくまで参考資料としての例ですが、

少し奥まったところでアーチ型の構造物の中に収められている姿が共通していますよね。

 

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また、旧約聖書の登場人物ダヴィデ(右上)の姿が、ボッティチェリの作品では

ギリシア神話の神であるメルクリウス(左上)に姿を変えて、受け継がれています。

 

このように美術史は、たくさんの芸術家によって人物やモノの姿勢・形態が受け継がれていく歴史でもあります。

意味や内容の違うものを別の事物に応用した結果、思わぬ効果を上げ、

私たちの目を楽しませてくれることもしばしば。

作品鑑賞の醍醐味は、

芸術家たちが何をヒントに作品を制作したのかを探ることでもあります。

 

では、裸体のヴィーナスが描かれた《ヴィーナスの誕生》と、

着衣のヴィーナスが描かれた《春》と、どうして2つあるのでしょうか

 

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↑ こちらはボッティチェリの作品から約30年後に描かれたティツィアーノの《聖愛と俗愛》という作品。

着衣のヴィーナス(左)と、裸体のヴィーナス(右)の二人が描かれています。

着衣のヴィーナス(地上のヴィーナス)は、世俗的で物質的な愛を表し、

裸体のヴィーナス(天上のヴィーナス)は、それよりも高位の、精神的で貞節な愛を表します。

地上と天上の、異なるヴィーナスが融合するのが最高の美徳だとされ、

ルネサンスの時代、二人のヴィーナスを描くことが流行したのです。

 

そうしたことから、ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》と《春》は、それぞれ、

天上のヴィーナスと、地上のヴィーナスを描いていると考えられています。

 

絵画は、描かれた対象の表現を鑑賞する楽しみ、

描かれた史実や物語を知る楽しみ、そしてベースとなった思想に触れる楽しみなどがあり、

いろんな切り口で楽しめるものです。

 

次回は愛知県美術館で開催される「ロイヤル・アカデミー展」を見に行きます。

みなさん、それぞれに好きな作品を見つけて、楽しんでもらえたらなと思います。

こちらもどうぞお楽しみに。

 

 

 

【開催中の展覧会】

清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.75 木下 令子 展

会期:2015年1月6日(火)―1月24日(土)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般200円、中学生以下無料

 

 

 

04. 1月 2015 · 第27回館長アートトーク:日本画家秋野不矩、インドに魅せられて。 はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2015年1月4日(日)

 

今回の館長アートトーク(12月20日開催)でとりあげたのは、

日本画家・秋野不矩(あきの ふく)

 

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50歳を過ぎてから出会ったインドに惹かれ、

従来の日本画の枠を超えた力強い作品を多くのこしています。

不矩の存命中に設立された秋野不矩美術館には、大作がずらり。

 

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藤森照信氏による建築は、

木や土など自然の気配がのこる気持ちのいい空間です

 

さて、秋野不矩という少し変わったこの名前。

不矩の本名は「秋野ふく」ですが、

やわらかい印象の平仮名の代わりに、彼女が選んだ画号は「不矩」。

使われている漢字「矩」は、「ものさし、定規」を意味します。

型にはまることなく、創造的にありたいという画家の意思を感じさせますね。

 

そんな画号を反映してか、不矩は日本画の伝統的な主題である、

花鳥風月に興味がもてなかったようです

新しい日本画を求め試行錯誤していた不矩は、

インドで日本画を教えてみないか?という誘いに応じ、一年間インドに滞在

 

インドという土地の持つ力強さ、人々の暮らし、風習に魅了され、

その後インドを題材にした作品を多く発表してゆきます。

 

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ヒンドゥー教の神像や、祈りをささげる女性。

濁流の中をゆったりと泳ぐ牛の姿。

どこまでも広がる地平と、乾燥して赤茶けた大地。

天竜川の山間の町に生まれた不矩にとって、

初めて見たであろう情景を、鮮やかな色彩で力強く描いています

 

そして最後にスライドに映し出されたのは、《オリッサの寺院》。

写真ではわかりませんが、実物はなんと縦7メートル・横12メートルもの大きさです。

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横長の支持体をめいっぱい使った、迫力ある構図。

その細部をよく見てみると…

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日本画の伝統技法を彷彿とさせる、箔押しが用いられていますね

日本画家として、これまでにない日本画を生み出したい。

不矩の情熱が結実した大作です。

 

2001年に93歳で亡くなるまで精力的に活動した、

不矩の生涯に思いを馳せながらの館長アートトークでした。

当日はあいにくの雨でしたが、

色鮮やかで力強い作品からパワーをもらうことが出来たのではないでしょうか

次回の館長アートトークは1月24日(土)16時~、

「情熱の画家ゴッホ、その人生と名画」です。

ふるってご参加ください!

電話申込:052-401-3881

※前日までにお申込みください。

 

 

【開催中の展覧会】

清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.75 木下 令子 展

会期:2015年1月6日(火)―1月24日(土)

開館時間:10:00―19:00

休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)

観覧料:一般200円、中学生以下無料

 

 

 

 

 

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