2013年10月29日(火)
先週の土曜日、企画展「歌舞伎|変身」関連イベント、「大向こうって何だろう?!」を開催しました
こちらが講師の波多野洋七さんです。ビシッとお着物で登場。かっこいいですね!
なんと波多野さん、大向こう歴50年以上
若いときから芝居三昧だとか。自己紹介も、きまっていましたよ。
白波五人男という盗賊5人のお話に出てくる親分・日本駄衛門(にっぽんだえもん)の台詞調で、
「問われて名乗るもおこがましいが、生まれは~」と始まり、
集まったお客様たちの心をしっかり掴んでいました
レクチャーは、まず「大向こうとは?」という説明から始まりました
「大向こう」という言葉の意味について
本来、昔の芝居小屋の安価な立見席のことを指します。今の三階席や幕見席にあたる席。
ここに陣取った芝居好きは、いい芝居やいい役者に接した感激や、
「しっかりせい!」という叱咤の心を、掛け声に託して舞台に伝えるようになったそうです。
そのうちにその掛け声や掛ける人のことも、「大向こう」と呼ぶようになったということです。
声を出すタイミングはいつなのか
「絶対」という決まりはないのですが、だいたい次のようなときがかけやすいそうです。
①見得のとき、ツケ打ちに合わせる。
②花道から出てきたとき。(ただし、絶対にかけてはいけない演目も2つある)
③幕切れの柝(き)の音がするとき。
など。他にも細かくはいろいろあるそうです。
会場からもたくさんの質問が飛び交いました
●「大向こう」に資格はいるのか?
●どうやったら「大向こう」になれるのか?
●素人は掛け声をかけてはいけないのか?
●「大向こう」としてやってはいけないことは?
などなど・・・
とにかく、みなさん「大向こう」への疑問がいっぱい
そのひとつひとつに波多野さんは丁寧に答えていらっしゃいました。
さまざまな質問を受ける中、やはり「大向こう」とは実践してこそ解るもの。
ということで、波多野さんから参加者の皆さんに「やってみましょう!!」との誘い。
会場内はどよめきましたが、半信半疑でみなさん波多野さんの勢いにおされていた様子・・・
配布されたプリントは、白波五人男の台本の一頁です
5人の盗賊がそれぞれ自分の素性を語りつつ名前を名乗る場面ですが、
この台詞を参加者のみなさん自身に置き換えて、前に出て披露するというもの。
役者の役をやらない人たちが、「大向こう」の掛け声をかけます
役者に扮する人は、掛けてもらいたい屋号も考えます
最初の役者はこちらの男性。
日本駄衛門の台詞で自己紹介。屋号は「最上屋」です。
波多野さんが参加者のみなさんへ「大向こう」のタイミングを伝授。
男性が右手に持つ扇子は傘の代わりです。
まずは傘を上げて、みなさんの前に止まった瞬間に「待ってました!」の掛け声
役者は最後に自分の名前を名乗るときに一呼吸起きます。
その間で屋号を掛けます。ここでは「最上屋!」でしたね。
こちらの女性(実は当館のアートサポーターさんです!)は、台詞の言い回しも波多野さんから伝授され、
緊張しつつも、堂々とした役者ぶり。
旦那様のご職業にちなんで、なんと屋号は「鉄筋屋」
大向こうさんが掛ける掛け声の中には屋号のほかにも、
その役者さんが住んでいる町名を掛けることもあったり、
場面の雰囲気に合わせて「色男!」とか「いってらっしゃい!」など、
まるで同じ舞台で演じている役者のような掛け声を掛けることもあるほど柔軟で面白いのです
大学生のお姉さんや、小学生の女の子も挑戦してくれました
とってもかわいらしい役者姿は、おもわずたくさん声をかけたくなってしまいました。
こちらの女性は、なんと日本舞踊の西川流・西川菊織(にしかわきくおり)さん。
普段も男性役を演じることが多いそうで、さすが日本駄衛門の台詞調での自己紹介は
かっこよかったですね
他にもいろいろな方が役者に挑戦してくださり、みなさんの大向こうの掛け声も慣れてきたのか、
後半はタイミングもばっちり!大きな声でまるで芝居小屋にいるような雰囲気でした
役者をやってくださった方々の中から5名のみ、
大歌舞伎の役者さんたちから波多野さんが貰ったという手ぬぐいがプレゼントされました
「大向こう」は、とにかくやってみなければわからない!
でも、やみくもにやっては役者さんの邪魔になる。
あくまでも大向こうは芝居の脇役。役者さんより目立ってはいけません。
それでいて、役者さんを引き立てる重要な役割も担っています
芝居を愛し、芝居を心から楽しむことができる人であれば、
誰にでも「大向こう」はできます。
そんな風に波多野さんはおっしゃっていました。
今日、イベントに参加されたみなさん。是非、次は本物のお芝居で実践しましょう
波多野さん、実践に基づいた素晴らしいレクチャーをありがとうございました
【開催中の展覧会】
企画展 「歌舞伎 | 変身」
会期:2013年10月8日(火)~12月1日(日)
開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)