2015年2月21日(土)
第29回目の館長アートトークのテーマは、
「だまし絵」、そしてマニエリスムを代表する画家「アルチンボルド」です
マニエリスムって・・・?
いまひとつピンと来ない方も、「だまし絵」、そしてトリックアートといえば馴染みがあるのではないでしょうか。
2009年に名古屋市美術館で開催された「視覚の魔術―だまし絵」展は、
異例の22万人の入場者数を記録するなど、大盛況
ふだん美術館はあまり訪れないけれど、
この展覧会には足を運んだという人も多かったのではないでしょうか。
現在、好評だったこの展覧会の第二弾として、
「だまし絵II」展が3月22日まで同館で開催中です。
さて、現代でも多くのファンを持つだまし絵というジャンルですが、
その元祖ともいうべき作家が、ジュゼッペ・アルチンボルドです。
16世紀、美術史上ではマニエリスムと呼ばれる、ある特徴・傾向をもった様式が登場していました。
この時期は、1月のアートラボでもとりあげたボッティチェッリに代表される、
調和のとれた普遍的な美を特徴とするルネサンスの後の時代。
ルネサンス期に完成された人体美を模倣し、これでもかと強調してみせる作品が見られました。
たとえば、パルミジャニーノ《長い首の聖母》という作品。
ちょっと見づらいですが、タイトル通り、
聖母の首や体が蛇のように長くねじれていますね。
誇張され、デフォルメされた人体表現もマニエリスムの特徴の一つ。
こうしたマニエリスムの代表的作家といわれる、アルチンボルド。
どんな作品を残しているのかというと、、、
いかがでしょう。見たことがある方も多いのではないでしょうか?
目を凝らして見ると、眉がインゲン豆だったり、唇が果物だったり、
農作物や花、草木で人間の顔をかたどっています。
同じマニエリスムを代表する作家とはいえ、先ほどのパルミジャニーノの作品と比べて、
アルチンボルドの作品はあまりにも特異。
人の目をだますようなしかけ、奇想、トリックを絵の中に忍び込ませています
たとえば、下の作品を見てみましょう。
人の手がお盆のふたをとると、中には美味しそうな食べ物が盛られています。
しかし、この絵をぐるりと180度回転してみると・・・
大きな鼻をした男の顔が現れました。
こうした、人をあっと驚かせるような仕掛、アイディアこそ、
アルチンボルドの作品の魅力の一つではないでしょうか。
草木などのモチーフを巧みに組み合わせ、人物を作るというアルチンボルドの手法、
実は日本の浮世絵版画にも見ることができるんです。
歌川国芳によるこちらの浮世絵。
人の体が重なったり、組み合わさったりして、顔を作り上げていますね。
パズルを組み合わせるように、物と物を組み合わせて別のモチーフを作ったり、
人の目を驚かす仕掛を絵の中にしのばせるしゃれっ気は万国共通なのかもしれません。
次回の館長アートトークは3月14日(土)16時~、
テーマは 「飛べなくなった人、石田徹也の苦悩の絵。」です。
31歳という若さで亡くなるまで、ひたすら制作に没頭した画家の生涯を辿ります。
電話申込:052-401-3881
※前日までにお申込みください。