2014年7月16日(水)
今日の清須アートラボは、日本美術の魅力をお伝えする講座を行いました。
テーマに選んだのは、江戸時代中期に京都で活躍した画家、伊藤若冲(じゃくちゅう)です。
若冲は、2000年に京都国立博物館で没後200年を記念する展覧会が開かれたのを機に、
広く知られるところとなり、一大ブームを巻き起こしました。
そのずば抜けた個性と筆力に大勢の人が目をみはり、
評判が評判を呼んで、主催者の予想をはるかに超える入館者数を記録。
以来、日本のみならず、海外でも非常に人気の高い画家です。
今日はその若冲の画業をたどり、江戸絵画の面白さに触れていただこうと2時間お話しました。
まずは、修行時代の紹介から。絵描きの修行は、過去の名作を模写するのが基本です。
写真の右は中国明代の画家が描いた鶴。それを手本として若冲が模写したのが左です。
ただ、模写と言っても全くそっくりに写しているわけではありません。
じっくり見比べて、違いを受講生の方々に言ってもらいました。
崖の線や波の形が違いますね。
ではそれらが違うことによって、印象がどう変わるのでしょうか?そんなことも一緒に考えます。
それからこちらは虎の図。
右の明代の画家の作品を手本として、左を若冲が描きました。
「私は虎の実物を見た事がないので、中国の作品を模写するしかないのだ」と
若冲本人が言い訳のように、作品の右上に書いています。
若冲は修行を経て、過去の名作を自分のものにしてしまうと、
模写に飽き足らず、実物をつぶさに観察して描くようになりました。
そして生まれたのが、彼の代表作、30幅からなる「動植綵絵」です。
鶏をはじめとする様々な鳥、梅や松やひまわりなどの植物、虫、魚、貝といった
生物が、鮮やかな色彩で描かれています。
今回は1点ずつプロジェクターで投影して、全30幅の魅惑の世界をご堪能いただきました。
ちょっとした鑑賞会です。
皆さん、若冲独特の色彩、画面を埋め尽くすモチーフ、鶏の精悍な様子に
食い入るように見入っていました。
若冲は「動植綵絵」のほかにも、寺院の障壁画や、ユーモラスな水墨画も多く残しています。
真正面から見た、とぼけた鶏の顔など、おかしくて噴き出しそうになりますよ。
最晩年には、お釈迦さまの涅槃図(ねはんず)ならぬ、野菜涅槃図なるものも描いています。
なんと二股大根をお釈迦さまに見立て、様々な野菜たちがその脇で死を嘆き悲しんでいるというもの。
当時の人たちも、これにはクスっと笑ったのではないでしょうか。
若冲の作品には人をあっと驚かせる独創性があり、ずっと見ていたいと思わせる妙技があります。
今日は、そうした一人の絵師の魅力と、江戸絵画の奥深さに触れていただけたことと思います。
これを機に、実際の作品を鑑賞しに展覧会に出かけたり、
京都に行った際には、若冲のことを思い出していただけたら嬉しいです。
【開催中の展覧会】
会 期:2014年7月5日(土)~9月28日(日)
開館時間:10:00~19:00(最終日18:30まで)
休 館 日:月曜日(月曜日が休日の場合は次の平日が休館)