「美術に対する知識がないから、何をどう見たらいいのかわからない。」
お客様からよく言われる言葉の一つです。
学芸員としては「これはですね・・・」とすべてに対して明確にお答えしたいのはやまやまですが、実際のところ私たちにもよくわからないものもたくさんあります。
もちろん、知識があるに越したことはありません。しかし「わからない」から「見ない」のは早計です。
開催中の収蔵作品展「連想ゲーム」は、絵画鑑賞のひとつの楽しみ方を提案する企画です。
タイトルの通り、ゲームのように鑑賞のルール(手順)を設けています。
キャプションにあるキーワードから、連想して作品をつなげていくようなイメージで展示室を進んでいきます。
例えばこちらのキャプション。キーワードが2つありますがサンプルとして「幻想的な赤色」を選んでみましょう。
作品①と②はどちらも同じキーワードが当てはまりますが、①の「幻想的な赤色」と②の「幻想的な赤色」は全く同じではないはずです。
同じ赤色でも、温かさのある夕焼け空のような赤色、鮮烈な血液のような赤色、神秘的な夜の空気をまとう赤ワインのような赤色と、表現はさまざま。
見る人によっても解釈が異なるでしょう。
キーワードを足掛かりにして、共通するところ、違うところを比較しながら鑑賞してみるだけでも、作品を見る行為を主体的に楽しめるのではないかと思います。
ちなみにキーワードの内容は描かれたモチーフや制作技法、作者の心情、作品の雰囲気などさまざまな観点から設定しています。後半になるにつれて難易度が上がります(個人差あり)。
(先日アートサポーターの皆さんにも実践してもらいました。キーワードを選びながら思い思いにうろうろ。)
人は一般的に、「理解できること」「知っていること」「見たことがあるもの」に対して安心感を持ち、「理解できないこと」「知らないこと」「見たことがないもの」を拒絶します。
わからないからこそ、見て、感じて、考える(考えてもやっぱりわからなければそれはそれで良いのです)という、ある意味「手間」とも言える作業を惜しまずに、生きていきたいものです。
収蔵作品展「連想ゲーム」
会期:2018年11月3日(土)~11月28日(水)
開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)
観覧料:一般200円 中学生以下無料
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