2016年11月3日(木)
開催中の企画展 「榊原澄人 永遠の変身譚(メタモルフォーシス)」。
展覧会チラシのメインビジュアルに惹かれてきてみたら、絵ではなく映像の展覧会だった、
そういうお客様もちらほらいらっしゃるようです。
榊原澄人さんは映像作家であり、アニメーションを多く制作しています。
不親切かもしれないけれど、あえて「アニメーションの展覧会」とは銘打ちませんでした。
それは彼が、一般的なアニメーションの「枠」を飛び越える作品を数多く生み出しているからです。
たとえば、出世作 《浮楼》(2005年)。
設定は、教会のある牧歌的な町。この背景は固定のままずっと動きません。つまり、カット割りはないのです。
そこに登場する8人の女性たちがそれぞれに一定の動きを繰り返しながら、変身していきます。
赤ちゃんが少女になり、娘に成長し、恋をして、結婚し、出産し、老いていく。。。
私たちは、小さな町を去来する8人の小さな物語を追いながら、
次第にそれが女性の一生という一つの大きな物語として編み上げられていることに気づくのです。
このかつてない手法に気づいたとき、複雑な構想を可能にした精緻な計算に驚くとともに、
命の営みに向けられた作家の巨視的な 眼差しに、感動さえ覚えます。
反復(ループ)と変身(メタモルフォーゼ)を巧みに組み合わせて、ミクロの世界にマクロの世界が体現されています。
人物が変身を繰り返すうちに桜が散って、町は新緑の季節に。
どうしても人物の動きに気を取られがちですが、
季節の移ろいまでこまやかに表現されていますのでチェックしてみてくださいね。
【開催中の展覧会】
会期:2016年10月4日(火)~12月11日(日)
開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般500円 中学生以下無料